給付付き税額控除案を「愚策」と断言できる理由
筆者:
今回は立憲民主党代表選の中で物価高対策として持ち上がった「消費税の給付付き税額控除」がいかに愚策であるかについて見ていこうと思います。
質問者:
やはり物価高対策として何かしらの政策は必要ですよね……。
◇立憲民主党が行おうとしている給付付き税額控除とは?
筆者:
諸外国で導入されている「給付付き税額控除」と言うのは色々種類があるようなのです。
そこで、提案しようとしている立憲民主党が23年12月17日より公開している
『2024(令和6)年度税制改正についての提言』から引用させていただきますと、
『消費税の逆進性対策については、中低所得者が負担する消費税の半額相当分を所得税から税額控除し、控除しきれない分を給付する「給付付き税額控除」(消費税還付制度)の導入により行うこと。併せて、迅速・簡素な給付の方法を検討すること。』
とあります。
どれぐらいの所得の方が「中低所得者」なのかはよく分からないのですが、
参考までに年収200万円以下世帯の消費税の年間負担額は約11万円、
年収500万円以下世帯の消費税年間負担額は約21万円です。
これを税額控除するとそれぞれ5万円と10万円ちょっとが合計で控除+給付されることになります。
控除+給付というのは今年の6月以降に実施された「所得定額減税」に限りなく近いシステムであるといえます。
立憲民主党の案を簡単に申し上げるのでしたら「所得定額減税を所得帯に応じて毎年やりますよ」程度の認識だと思っていただければと思います。
(そもそも消費税は名前が消費者に加算されているように見えるだけで、税法上は”第二法人税”ではありますがね)
◇「給付コスト」が全く考慮されていない
質問者:
所得が少ない世帯に給付をするのであれば問題ないのではありませんか?
半分給付と言うのは何とも賛否が分かれそうですけど、半分還元されることのようですから“消費税5%減”に相当しますしね。
筆者:
確かにここだけを切り取って聞けばとてもいい内容のように思えます。
500万以下の人に対してまでの給付の制度にすれば、消費税の逆進性はほとんど解消されるといった試算もあります。
しかし、こういった給付方式の政策の時に必ず欠けている論点があります。
それは「給付コスト」です。
例えば2019年の10万円の特別定額給付金について全国で12兆6700億円を配布するのに1458億円のコストがかかりました。
所得がちゃんと給付の規定内かどうか? の審査が必要なので時間もこの時よりはかかるでしょうから手間賃が増えるので、書類などの郵送費用は減っても総額はほとんど変わらないと思います。
それに対して社会保険料の減額であればその表を変えるだけ、民間の会計ソフトの更新で済むわけです。(消費税減税は値札を変える手間がかかる)
余計にかかるお金や手間について議論されることが少ないというのは単に予算だけを見ている政治家にありがちなことであると思っています。
質問者:
確かに経済効果だのなんだのは言われますけど、事務手続きについて語られませんね……。
筆者:
事務手続きが煩雑になり地方自治体の職員の業務がむやみやたらに増えてしまう事は本当に問題です。
国の職員は国家の政策の考案のために働くべきです。
地方自治体の職員はそこに住んでいる人の生活の向上のために労力を割くべきであり、
国の税制の下請けとして働いているわけではないんです。
更にそれを民間(会社の会計も含む)に丸投げすることなどは“定額減税”で事務量が増えたことで国民の不満が爆発したことを鑑みますと、似たような給付付き税額控除というはもっての外であると言えます。
質問者:
減税や給付であそこまで不満が噴出した政策も珍しかったですよね……。
※所得税の定額減税は給与明細に必ず減税額を書き込まなくてはいけないことが国民が不満を持った要因の一つとしてありました。
要素としては近いものの必ずしも一緒ではありません。
筆者:
僕は農業や介護などを公務員化させ、全体では公務員の数を増やし、収入を安定化させることは重要だと思います。
ただ、「事務員としての公務員」は下請けを含め無くしていかなくてはいけないと思っています。
仕事量を減らすためには税金や給付はむしろ共に減らさなくてはいけないのです。
しかし現実では国民に対して“隠れ増税”を行うために税制の複雑化による事務の煩雑化が起きており「事務員としての公務員」を減らすことはできていないです。
減税と給付を政治家はよく同列で語りますが、同じような金額の政策であれば減税一択なのです。
将来はAIなどのシステムが一元的に処理してくれるのかもしれません。
しかし、現状では血の通った時間の限界がある人間が事務を行う事を考慮しなくてはいけないのです。
◇申告制度の問題点
質問者:
ただ、所得の補足や手間の問題で行政側が難しいのであれば国民一人一人の方から申告するという方式はどうなのでしょうか?
筆者:
自己申告制の問題は例え給付を受けられるとしても、国民一人一人がわざわざ税務署や役所にウェブ上かもしれませんが申請をしなければならないんです。
日本の生活保護捕捉率は2割台とも言われています。
生活保護になってもおかしくない収入の人が申請しないのと一緒のように、
自ら申告する制度だと「本来貰えるお金を貰うことが出来ない」と言った可能性もあるのです。
というのも、働くことに精一杯な人は申請にも行く余裕も無いためです。
長ったらしい名前で自分が適用内かどうか? 書類をちゃんと出せるかどうか?
などと考えることすらも億劫である方も多いのではないかと思います。
そんな不幸を回避する意味でも謎の給付金制度を行うぐらいなら、
低所得者層に対する社会保険料の減額が望ましいと思います。
「年収の壁」問題も低所得者に対する社会保険負担があまりにも大きすぎることが原因ですからね。
質問者:
なるほど、最初から税金や社会保障を取らないことが自ら手続きを行う必要が無くなったり、手間が減るわけですか……。
日本国民全体の生産性の向上のためには制度はむしろ減らす必要があるんですね。
筆者:
また、申請制度にすれば“嘘を吐く”可能性もあります。
行政側も審査をすると思うのですが、一つの給与所得のみかどうか? という審査に時間がかかれば給付にラグが生まれてしまいそれこそ低所得者への救済への時間が遅れます。
かと言って不正受給を容認するわけにもいきません。
そう言った複雑な要因を考慮するぐらいなら最初から一律に減税をしてしまった方が良いわけです。
質問者:
以前のお話では金融所得などは分離課税で個別に取られているから保険料などはかからないという話もありましたから。
“給料が低所得“でも総所得が高い可能性もありますからね……。
筆者:
そうなんですよ。
減税も給付もどの道広範囲にわたるのであれば、「給付コスト」が低い方が優先されるべきなのではないでしょうか?
消費税においても事務コストを下げるために完全廃止が望ましいですが、
一部廃止であれば10万円以下一律消費税なし、
食品、電気、ガス、水道、ガソリンは消費税ゼロなど国民生活を楽にするための様々な選択肢はあると思います。
予算の金額ベースだけでなく総合的な事務コストなどについても包括的に考えることが望まれると思います。
質問者:
具体的な手続きは人間が行うのですから、広い視野でもって政策を考えて欲しいですよね……。
筆者:
「聞き心地の良い政策」では無く、「国民生活が総合的に良くなる政策」を望みたいところですね。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は立憲民主党が案の一つとして挙げている控除+給付の給付付き税額控除は「所得定額減税」と同じぐらい酷い案であり、
そんなことをするなら社会保障負担削減、消費減税をするべきだという事をお伝えしました。
今後もこのような時事問題や政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説をしていきますのでどうぞご覧ください。