03. 見えるは国境、飛べ高く!
追手は現れない。リョウにわざわざ瘴気の多い場所を選んで飛んでもらっていたことも、その理由の一つだろう。ティアは飛行中ほぼずっと歌い続けていた。ティアが通り過ぎた場所が浄化の軌跡となる。
彼女は「大地をきれいにしたい」と言い、その言葉通りに瘴気を浄化し、美しい新たな大地を創り出していた。
彼女の助けを借りて、途中で何度か休憩を挟みながらも、祖国バレイスを目指し約2日間、空の上での旅が続いた。その間、ティアはほぼ絶え間なく歌い続けている。
「もうすぐ国境だ!」
前方に、等間隔に並ぶ高い塔が見えた。あの塔を起点に国を守る結界が国中を囲むように張り巡らされている。
「国境? それなに?」
「あそこに塔が見えるだろ? あれが国中を囲っているんだ。つまりあの塔を超えればバレイス、僕の生まれた国に入れる」
「じゃあこのまま、まっすぐ飛べば良いんだね」
林檎にかぶりつきながら話すティアは、聖域の外の事情など何一つ知らなさそうだ。そのため、誰もが知っている当然のことでも、丁寧に説明しなければならない。
「いや、塔と塔を繋いで結界が張られているんだ。結界、分かるか?」
「知らない」
「見えないけど、簡単に言えば外敵を防ぐための壁だ。だから、このまま、まっすぐ飛べば、結界にぶつかる。高く飛んだ方がいい。あの塔よりもずっと高くだ。できるか?」
「うん!」
「そうか、良かった。だけどその前に、少し休んだ方が良いんじゃないか? 今日もさっきまでずっと歌い続けていたし。国に入ったら国内の状況がどうなっているのか、僕にもよくわからないんだ。体力はちゃんと温存しておいた方がいいと思うぞ」
「私、まだ歌えるよ! 林檎も食べたし。このまま行こう! 私も国の中がどうなっているのか見てみたい」
ティアの食べる林檎は、地面から突如として現れたものだ。地から芽を出した若い木が急速に成長し、木に実を結んだのだ。最初は驚いたが、「ルゥイがくれたんだよ」という一言で、ティアが本当に世界樹と繋がっているという確証を得られた。
そして、その実が聖果であるということもすぐに分かった。聖果とは、その名の通り、聖なる果実を意味する。その実には玲力を内包し、食した者の魔力を飛躍的に回復させる性質を持つ非常に貴重な果実だ。
「確かに世界樹の出す聖果は、普通のものよりすごい効能だと思うけど…… それでも、疲れたらすぐに言うんだぞ。ちゃんと安全な場所で休まないと!」
「分かってるよ! 行こう!」
あまり分かってなさそうなティアに不安を覚えつつも、リョウの背に乗り塔よりも遥か高く飛び立つ。
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