17. すすり泣くのは誰の声
激しい砂嵐が大地を覆った。砂が人々の視界を塞ぎ、敵も味方も判断がつかない状況でその場にいる者たちは動きを止め、嵐がやむのを待つ。しかし、嵐はやむどころか次第に激しさを増し、人々の行く手を阻んだ。
「何が起こっているの!?」
「子供たちが狩りを止めているんだよ。大丈夫、誰も怪我しないよ」
「ティア様の能力ですか?」
「子ども達が手伝ってくれているの。私はあそこには行けないし行かないよ。でも、これ以上誰かが狩られるのも嫌だから」
嵐が徐々に収まり、視界が開けてきた。しかし、そこにいた人々は敵も味方も誰一人として動くことができなかった。いや、正確には動けなかったのだ。嵐に巻き込まれた者たちは身体が石化し、生きた銅像となってそこかしこに立ち並んでいたのだ。
「味方まで巻き込んで…… 皆生きているのですか?」
「生きてるよ。狩ろうとする人たちを固めただけだと思う。狩りを止めてほしいってお願いしたから」
「すぐに、味方の騎士たちを動けるようにしてください! このままではに皆、すぐに敵に討たれてしまいます!」
リオに怒られ、すぐさま味方の騎士たちの身体を自由にする。身体の自由を取り戻した騎士たちは、石化した敵を次々に捕らえていった。これで私たちを攻撃する人はいなくなった。
少し離れた高台から爆発音が相次いで聞こえ、転移装置が破壊されているのが見えた。そこではひどい狩りが行われていた。
「みんなー、狩りを止めて!」
私は子どもたちに指示を出した。
「味方の動きまで止めないでください!!!」
「!!? 騎士の人たちの動きは止めないで! でも狩りは止めて!!」
「ティア様!!」
高台を砂嵐が覆いつくす。上空からはなにが起こっているのか見えない。この状況では中にいる人たちも動けずにいるはずだ。
それは嵐。砂煙が上空まで舞い上がり、風が竜巻となって吹き荒れる。その時間はそうは長くない。その風は徐々に勢いを失い、やがて視界が少しずつ晴れていく。高台にいた敵は余すことなく全員石化されていた。味方の騎士達は嵐が去ると早急に敵に切りかかろうとする。しかし、その切っ先はもはや剣ではなく、敵同様、石化した石のこん棒となり果てていた。
―――
マノバからあふれ出した瘴気は、次第に周りを侵食しはじめた。このままいけば、この辺り一帯が強い瘴気に飲まれるだろう。すでに瘴気に飲まれたマノバは、それでも嬉しそうに薄ら笑いを浮かべながら「死ね、皆滅びろ!」とつぶやき続けている。もう正気の沙汰ではない。
「殺りますか?」
部下に聞かれたーサーは思案した。人間の幹部からは、いろいろと情報を聞き出す必要がある。できる事なら生きたまま捕虜として連行したかったが、これ以上瘴気を広げられれば自分たちでは対処できなくなる。
アーサーが剣を構えたその時、次第にマノバの瘴気が沈静し始めていることに気づいた。
「浄化か……」
ティアの浄化が広がり、要塞まで届いていた。瘴気はどんどん浄化され、そこにいるのはただの無力な人間一人となった。
マノバは何も言わなかった。それ以上悪態もつかなかった。ただ茫然と自身の身体を抱き締めながら、嗚咽を漏らしすすり泣いていた。
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