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その願いを〜雨の庭の建国記〜  作者: 鹿音二号
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大きな商いと小さな無駄(8)

「最近世界中でよく使われるようになった自由参加型の取引です。ひとつの品に対して、希望者は誰でも自由に値付けします。その中で、一番良い値段をつけた方が買い上げる――という方法です。実際は色々制限があったりしますが、ざっとこんな形です」

「そうか、それに魔鉱石を出すと、もしかしたらとんでもない値段がつくかも……!?」

「ええ。話題性も出ます。魔鉱石の鉱脈発見、とね」


ジョシュアはメガネの縁を指で押さえながら、


「我が商会のオークションで、魔鉱石ひとつだけを出品し、最低金額と入札……ええと、買いたいと申し出ることですね、希望者の人数を条件にします。最低3団体が入札希望あればオークションが開催されるということにすれば……」

「なるほど、それなら最低金額は保証され、取引が流れるということもないんですね?」


「ええ、そして、開催が決まると同時にその魔鉱石が担保になります」

「では、借金もその時点で相殺される!?」

「ええ、そういうことになります」

「すごいです!ぜひお願いします!」


興奮したタツィオに、ちっちっ、と指を振るジョシュア。


「条件がありますねえ、これが大事です」

「は、はい」

「問題は、今現在在庫が空っぽということです。出品可能な現物を見届けてから、動くことになりますが……」

「……ふっ、それは悪かったねえ!」


ケラケラとオハイニが笑う。


「明日にでも掘ってくるよ。なんならイルゲを連れて2,3個取って来るかい」

「ぜひに。いやーこれで私もザリハ様に胸を張ってお会いできます!」


そのザリハと、同行していたロドリゴたちは、5日後に帰ってきた。


「何か変わったことは?」

「予想通り、知識の峰がやってきましたよ」


タツィオの報告に、ロドリゴは頷く。


「実は知識の峰の使者と名乗る男が、評議会に乱入しようとしてのう」

「……『知識の峰』自体が魔鉱石のことを知る時期ではないので、この村に来たうちのひとりでしょうか?」

「でしょうな。だがまあ、丁重にお帰りいただいたとのこと」

「村長はお会いしてないんですね?それは良かった」


「それで、他の魔術師の方々は?」

「領主承認のもと、自警団数名を連れてダンジョンに向かわれました」

「ふむ。意外と真面目だのう」

「っすよねー、ゼルなんかオハイニがひどい目にあったって噂聞いたんで、速攻帰ってくるかと思ったんすけど」


グリウが肩をすくめた。


「ダンジョン攻略自体は願ったりかなったりだ。危険性が分かる」


グランヴィーオもできれば攻略をしたい。


「それで、商談の方は?」


ロドリゴが目を輝かせて聞いてくるので、タツィオは満面の笑みでゆっくりと頷く。


「よかったのう……では、こちらの成果もお話しよう」




「川!?本当かそれは!」


ダンが驚いて立ち上がったために、椅子が倒れた。

結構な物音がしたが、集まっていた誰も気を払わない。


領主やオハイニは、ロドリゴたちの帰還を見て、今日の予定だった鉱山の採掘に向かっていった。

まだ試行錯誤の段階らしく、ああでもないこうでもないと相談しながら坑道を広げている。それでも毎回ひとつやふたつ、魔鉱石が大なり小なり出るので、鉱物が専門のイルゲなどは楽しくなってしまっているらしい。


それはともかく。


川が、できるそうだ。


この荒れ地に。


「嘘だろう……」


ダンはいっそ感情がなくなったかのように声も表情もぼうっとしている。


「ここに、ほれ、通達書と承認書だ」


ロドリゴは浮かれているようで、所作が軽い。


「レイモアの、一番荒れ地に近い水源がメイラ商会所有となったことで、そこから水を引くことが許されたのだ。工事は全額負担になりそうだがのう」

「荒れ地に、川……」

「予想としては、まず南の村の近くに大きな川を作り、こう、蛇行させるような形でレイモアの川へ返す」


タツィオが一巻きの紙を持ってきた。それを簡易テーブルに開くと、荒れ地の大判の地図だった。

そこには予定の川の絵がすでに描き入れてある。


「その後、東西のあたりに支流を作り、さらに北へと延ばす。地形は私らも細かくは分かっておらぬから、専門家の意見が必要だが……」

「水量はどれほどですか?」

「多くもなく少なくもなく。運河は諦めてもらいたいがのう」

「いきなりそんな良くなっても逆に困りますね」


タツィオは、楽しげに笑う。ダンはまだ感動していて、ロドリゴの話に聞き入っている。


「これで、安定した生活が送れるようになる。あとは村の周囲を開拓するだけだ」

「夢みたいだな」

「そうだのう」


村長ふたりがしみじみと浸る。


「さて、これからもっと忙しくなる。みな、良き生活のために力を合わせていきましょうな」


にこやかに見守っていたザリハが口を開く。


「レイモアで用意していた水と食料を少し持ってきました。お買い上げくださイ」

「はい、先ほど確認させていただきました!ありがとうございます!」


タツィオが天幕の外に向かって誰かを呼んで、話し合う。

ザリハがソワソワと立ち上がった。


「では、話も終わりましたし、今作業されている鉱山へ向かうとしマスか」


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