表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その願いを〜雨の庭の建国記〜  作者: 鹿音二号
31/81

死せる者の棲む地(3)

カーネリア。名前だけはグランヴィーオも聞いていた。


村をまとめるのは村長のエンツィオだが、実の首長はカーネリアという女だという。おそらく、フラウリア教の司祭かなにかなのだろう。


村の中心を通って、奥に建ったひときわ大きい家に案内される。


途中、広場のようなところに、人の背丈ほどのモニュメントがあった。木で彫られたそれは、半円の三日月にいくつもの針のようなものが刺さった形で、フラウリア教のシンボルだった。


「中へどうぞ」


家にたどり着き、扉を開けてテヌは片手で中を指し示した。


グランヴィーオたちが入ると、そこはいくつかのテーブルがある広めの部屋、そして、その奥に藁で編んだカーテンのようなものが下がっていた。


「こちらだ」


藁のカーテンが持ち上がり、エンツィオが顔を出した。

言われるままに入ろうとして、ふと、グランヴィーオはグリウとゼルを指差した。


「そこで待ってろ」

「あー俺らは待機。りょーかい」


グリウがあっさりと理解し、まだオハイニについていきそうなゼルを腕を掴んで引き止めた。


「ちょ、納得いかねえ……」


藁のカーテン向こう側、窓のない部屋に女がひとり椅子に座っていた。


「ようこそ。私が総代のカーネリアです」


テヌよりも少し年上の、シワが目立ち始めた女だった。生成りのローブに、赤くて金の刺繍が施された細い布を幾重にも肩に巻きつけて、大ぶりの宝石があしらわれたブローチで留めている。色褪せた金髪をゆるく結い上げ、おっとりとした青い目がグランヴィーオとその一行をひとりひとり見ていく。


「こたびは我々のお願いによく答えてくださいました」

「早速だが、消えた村人と、その消えたときの状況と場所を教えてくれるか、軽くでいい」

「お前……御前だぞ」


呻いたエンツィオ。


「いや、アタシらは関係ないし」


オハイニがひらひらと手を振ると、顔を赤くしたエンツィオが何か言う前に、カーネリアはすっと細い手を軽く上げた。


「良いのです、あの方の言う通り。そんなことより、早く村人の安否を調べなければ」

「……承知しました」


肩を落としたエンツィオは丁寧にカーネリアにお辞儀をしてから、こちらに向き直る。


「詳細は向こうで話す」




事件を解決したいのは本当らしく、エンツィオは淡々と情報を教えてくれた。


最初に消えた男は、村の裏手の雑木林で消息を絶った。


「雑木林?」

「そ。枯れかけてるけど、細い木が頑張って根を張ってる」


そういえば、村に入るときに見たかもしれない。

鉱山周辺では枯れた茂みと細い木が数本まばらに生えているだけだから、環境が違うということか。


その雑木林周辺でさらにふたり消えている。血縁関係はないし、村人同士の仲は普通だった。どちらも男。


「本当に村の目と鼻の先で消えてる子供もいるんだね……」


親が目を離したすきに出ていってしまったようだった。


「残る3人も、特に共通点はない。女性が薪がどうしても足りなくて、最初の人と同じように消えて……ただし、もう一人一緒にいた家族は無事。もうふたりは……崖なんてあるんだね」


雑木林の向こう、崖というよりは大きな段差だということだが、その周辺まで行ったのではないかということだ。


「狩りか……深追いしたかね」

「獣が出てるんじゃ、それが犯人ってことじゃねーのか?」


ゼルがヒゲがまばらに生えた口元に手を当てて、思案げに言う。


「雑木林だと視界も悪いし、素早いやつだったり」

「いや、それならひとりやふたりの……痕跡も残るはずだ。全く消えちまうなんてことは獣の仕業だとは考えられん」


エンツィオは歯切れ悪く、しかし否定する。


「……現場に行くしかないな」


グランヴィーオはそう言った。



もはや誰も村の外に出る気がないらしく、再度注意も必要がないらしい。

案内もいらないほど単純な地形の村の周囲には、西の村の連中で行くことになった。


「レイスの可能性がある」


全員で固まって移動する。雑木林を突き進み、まずは一番遠い現場である崖まで行くつもりだ。


「レイス?」


トールたちは首を傾げた。何故か抱き上げたラクエもこてんと小さな頭を傾けている。


「上位の死霊さ。……え、レイス!?」


遅れてぎょっとしたのはオハイニ。


「ああ、そして、レイスが生まれているなら死霊も複数いるはずだ……強い同属性に惹かれるからな」

「いやーそんな段階までいく?」

「どういうことだ、また魔術師だけで話するな」


トールが口を挟む。


「ああ、えーっとレイスってのはさっきいったように死霊よりも上位……力を持ったアンデッドさ。ただ、今まで荒れ地でもそんな強いやつは出たことなかっただろう?」

「そう……だな。みんな似たりよったりだ」

「レイスくらいになると、知能を生前に近いくらいは取り戻しちゃうんだ。喋るとかもできるはず……それが、突然生まれたことになる」


「バ・ラクエの影響は否めない」

「わたし?」

「ああ」


ラクエはグランヴィーオの腕の中で瞬きをする。


「うーん信じたくないっつーか」

「そうだな、統制が取れた死霊の集団なんか、人間にはひとたまりもねえ」

「げえ」


グリウが嫌そうな声を出す。


「仮説がある。レイスだとして、突然現れたわけじゃなく、今まで隠れて出てこなかっただけじゃねえか?」

筆者ホラー全然ダメ人間なのでお察しです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ