6-2 Debate on the Equality of Demonic Beings: First Half 「star-guarding dog」
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翌日、馬車に乗り1日近くかけてディベートの傍聴の為、王都にいった。相変わらず遠いなとは思いながらつくとこの前とはガラリとイメージが変わっていた。どこか、街の空気がピリピリしており、魔属の方に目がいくのが多かった。あと、騒がしい……。
「魔属は穢れた種族である。みんなも見たであろう。戦争で暴れ回る魔属の姿を、あれを見てまだ、味方だ!仲間だ!と言えるのか?」
「私には夢があります。それは、私の子供が角やしっぽの有無ではなく、人格の中身によって評価される国で暮らすという夢が。それを願うのすら抑圧されなきゃいけないのでしょうか。我が子が笑顔でいられるように願う。その事すら悪なのでしょうか。」前の方からそういう声が聞こえてきた。なんだかなぁ。
「最近はこんな感じなんですか?」
「あぁ。ディベートが開始されると言われてからいつもこんな感じだ。ディベートが開始されると言われる前からあったが、ここ最近はさらに激化している。お前さん、」
「私?」ナサールはそう言うと自分に指を刺した。
「あぁ。悪いがこの状況だ。ノピリ教がディベートを破壊するために魔属を殴り、殺したという事件すら起きてる。力が強いからその力に自惚れ外している人こそ多いが、不意をついて殺される可能性も無いわけではないからな。身を守るためなら、その角を隠しておいた方がいいぜ。」
「……ん。ソリスお願いできる?」
「分かりました。ダディワス。」ソリスはそう言うといつもの赤いローブを取り出しナサールはそれをかけた。
「他になにか注意点は。」
「分からん。お前らギルドだろ?」
「うん。」
「ならギルド達にそれを聞いた方が早い。」
「分かった。」その後僕らはお金を払って王都のギルド前に降りた。人の空気も……どこかピリピリしている。外してる魔属もいるけどそいつに向けられる目線がすごい。
「なぁ。魔属がもしもあらわれたらどうすんだ?」
「俺はただの店主だ。どっちでもねぇ。客さんだったら接するし、そうじゃなかったらほっとく。強盗だったら抵抗するし、媚びを売るつもりなんざさらさらねぇ。人より金だ。」色んなところで魔属の話が飛び交っていた。やっぱり近くにこういうのがいるとさすがに話題になりやすいのかな。
「どうする?」
「とりあえずギルド行きましょう。まだ朝なので宿に泊まるのはまだ先のはずです。」
「そだね〜。」そのあと僕らはギルド所に向かっていった。本部とは別なんだよな。多分発展しすぎたから別所に移されたんだろう。そう思いながら中に入った。中はウトナの3倍以上の広さがあり、依頼の掲示板も広々としていた。所々の装飾に金が使われてるし。
「へ〜。こんな感じなんだな。」
「結構豪華ですね。」
「そだね〜。ウトナよりすこし金っぽいよ。でも似合ってるし。いいか。」アリシアはそう言いながら掲示板を見た。掲示板にはいつもの通りの任務が書かれていた。なんかここは安心するな。
「こんな感じなんだな。」
「そだね〜。あまり変わらない気がする。」
「まぁ、ギルドならどこも変わりにくいから。」
「まぁ、今日はギルドに一旦ここでうけるよっていうだけですからね。」
「なら早く伝えようか。」
「そだね。」そのあと僕らは依頼長の所のドアを開けた。
「あら、あなたは……?」
「あ、ダディワス。こういうものです。」ソリスはそう言うとギルドカードを見せた。
「なるほど、ウトナでギルド登録したあと、一時的にここで依頼受けるんですね。了解しました。今日から可能なのでいいですよ。」
「あ、今日は登録しただけなので。」
「そうですか。」そのあと僕たちはギルド所から出ていき、早めに宿に入って色々過ごして寝た。明日からディベートが始まるもんな。ちょっどどうなるかは分からないけど聞いていくか。
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朝起きて宿からでてる朝ごはんをたべてディベート会場である、クルカン大講堂に向かった。まだディベートまではかなり時間があったが、既に見物客はかなり来ていた。そしてその後一時間近く本を読みながら待っているとドアが開いて「2列でご入場お願いします。」という声とともに入場が始まった。中は結構広めで1万人くらいは入りそうで真ん中には大きな水色の六芒星の旗と黄色い十字架の旗が掲げられていた。縦型の旗だから風がなくても見えやすいな。そう思いながらできるだけ前の方の椅子に座った。マレはアリシアの肩に乗った。
「ルーナカミ。ナサール。見えてる?」
「うん。」
「なんとか〜。」
「まぁ、今回はどっちかと言うと話の方が大事ですからね。少々ルーナカミには難しい話しちゃうかもね。」
「まぁ、そこら辺は寝ないようにして聞いとくよ。」そのあと僕らは始まるまで待った。30分くらいが経つと演壇に数人の男女が現れた。ノピリ教は全てを制するような真っ白な、キラ教は全てを包み込むような真っ黒な色の聖職者用の服を来ていた。その後その合間に魔人族の人1人が入り、最後に司会者が入り各々準備を進めた。
「そろそろかな。」
「多分な。結構用意するものはありそうだけど。」
「そうですね。」そのあと5分くらい経ったあと司会者が準備を終わらせたのか壇上に立った。
「皆々。準備はよろしいか。」
「構わぬ。」ノピリ教の方からの老人の重い声が聞こえた。
「えぇ。こちらも出来ました。」キラ教の方から透き通るような声が聞こえた。
「はい。完了いたしました。」
「よろしい。それでは、第1回、ディベートを開始する。司会者は王家直属の学者、フランシスコ・デ・ロドリゲスが務める。」司会者はそういうと頭を下げ演壇の人たちもそれに従った。
「まず、第1回目となる今回ではそれぞれの方針、それと魔属の説明を行う。よろしいか?」そういうと司会者はあたりをゆっくりと見回した。特に異論も無さそうなのか何も聞こえなかった。そのあと魔人族の女の子は中央の、今まで司会者の席の方に向かった。
「まずは皆さん。このような状況を作って下さり、ありがとうございます。
私たちは、魔属は悪という宗教上の思想のせいでとして数百年、数千年、様々な責め苦を受けてきました。それは、精神的にも、身体的にもです。道を歩くだけで罪人だと言われ、なにかものを買うだけで盗賊と間違わられ、働くことすらままならない人生でした。身体的には、私は幸いなことに精手の爪を剥がされるくらいで済みましたが、中には目を生きたままぬかれ、指を1本1本切り刻まれた人もいます。
宗教ですから、魔属は悪であるという思想、それは止めません。様々な思いがあってきっとその宗教の創始者もそう決めたのでしょう。魔属を加虐すると、先祖七代、子供三代救われる。まだいいです。思うだけなら自由です。ただ、どうして、それをさも当然のように、まるで魔属が悪逆非道のように魔属に全ての悪を押し付け、それについて知らぬところまで責めたて、全ての事を加虐の対象にまでされないといけないのでしょう。確かに、私たちの中には罪を犯したもの。人間に害を及ぼしたものもいるでしょう。その者らにおける罰をなくせなどは言いません。聖書の中で人間の元となった種族に堕落の果実をあたえたものも、同じように罰を受けるべきだと、私もそう思います。
ですが、人間だって同じではありませんか。人を殺した人もいる。子供を犯した人もいる。醜い一面があります。それでも人間全体が罪を犯しているという意見を聞いたことがありません。なんで魔属のみが、永遠に罪を償わくてはならないのでしょうか。
ノピリ教の成立から4000年以上の歳月が流れています。ましては堕落の果実を食した日なんて、何万年も昔のことです。4000年、人にとっては途方もない長さです。それは魔属にとっても同じです。人間と同じように寿命を計算してみると130年です。考えてみてください。あなたのおじいさんや、ひいおじいさんが罪を犯したのでそこの家族は永遠に罪を贖わければならぬと言われたら、4000年ですらこうなのです。何万年と言われたら、さすがの魔属ですら数世代を経だててしまいます。
先の戦争で、私たちは人と共に戦いました。剣を取り、血を流し、共に勝利を得ました。それは、目で見たでしょう。その全てを。人間と何ら変わらない生活を営んでいる姿を。それでもなお、私たちは『原罪』と呼ばれるのでしょうか。
私たちは特権階級を得たいのではありません。ただ、人間たちとおなじ、時に笑い、時に泣き、時に怒り、時に喜ぶ。当たり前のことを、当たり前にやりたいだけなのです!
知ってます。ここではない別の都市ではそれが当たり前のように行われているから、もしもその暮らしを行いたいのであればそこの都市にいけと、もしくは魔界に帰れと、しかし、それでいいのでしょうか。当たり前のことを、一部の都市でしか出来ないことを私たちは飲まないといけないのですか?いや、そうであってはなりません。
この運動に対してこう尋ねる人たちがいます。「いつになればあなたたちはこのデモをやめるのか」と。
私たちは決してやめません。魔属が、言葉に言い表せないような教主や信者の恐ろしい虐待行為の犠牲者である限りは。
私たちは決してやめません。旅に疲れて重くなった体を休めるため、この国の街のどこでも好きな宿に宿泊することができない限りは。
私たちはやめません。魔属の基本的な行動範囲が、小さく、貧しい居住区域から大きな居住区域まで広がらない限りは。
私たちは決してやめません。私たちの子どもたちが、「魔属は悪」という表示によって、自我を奪われ、尊厳が損なわれる限りは。
私たちは決してやめません。
私には夢があります。いつの日か、私の2人の幼い子どもたちが、角や尻尾の有無ではなく、人格の中身によって評価される国で暮らすという夢が。
これが私たちの希望です。何も特権が欲しいという訳ではないのです。隣人とともに暮らし、笑ったり泣いたり、そういういつも通りの毎日を暮らしたいだけなのですそれすら、それすら傲慢というのでしょうか!
……すいません。少し情に乗ってしまい話を長く取りすぎました。これで私の話を終わります。」少し、息を荒らげながら少女は演説を終えた。多少の罵倒と、多少の拍手が後ろの方から聞こえた。
「……それでは、次にどちらかの演説を始めます。順番はこちらのコイントスで決めさしていただきます。構いませんね?」司会者はそう言いながらポケットから表裏に低木が彫られたコインを出した。2人は司会者の近くに近づきコイントスの結果がよく見えるようにした。なんだあれ。
「あのコインはなんだ?」
「コイントス専用の金貨ですね。表にはオリーブが、裏には月桂樹が彫られています。」
「ほえー。ありがとう。」
「……それでは、」司会者は頷く2人を見るとコイントスを行った。
「どちらにします?」
「では、我は裏に。」ノピリ教の人が厳粛な声で言った。
「私は表に。」キラ教の人が全てを包み込むような声で言った。
「それでは……裏である!」司会者はコイントスを行うと高らかに叫んだ。2人はそれぞれ様々な怨恨を抱えた顔で睨み合った。
「それでは……ノピリ教側からどうぞ。」司会者はそういい、ノピリ教の演説開始を促した。
「承知した。」ノピリ教はそういうと演壇の上に立ち、演説を始めた。
「諸君。今、穢らわしき、忌々しき魔属からの言葉を聞いたであろう。言葉は蜜のように甘かった。だがその言葉には乗ってはならぬ。あれは真実を覆い隠した虚構である。甘味のために死へ向かう毒を食べるものはおらぬ。
彼女は言った、「人間も罪を犯すではないか」。確かに人間の中にも殺人者はいる。だが人間は人間であり、神の子である。神に背いた堕落の果実を渡したのは誰であったか。魔属である。彼女らの血脈そのものが罪なのである。上に罪を塗ったものとは違い、中から罪に染まっているのである。罪で腐っているのである。それを人間と同列に論ずるのは、信仰を愚弄する行為である。
彼女はまた言った、「数千年前の罪をなぜ今も背負わねばならぬのか」と。諸君、ここに大いなる詭弁がある。罪とは時間で薄れるものではない。大罪は血であり、魂に刻まれ、子に伝わる。もし祖父が盗賊であれば、その孫も盗賊の子であると呼ばれるのが世の常ではないか。まして神を欺き、人を堕落させた罪が、わずか数千年で消えるなどと誰が信じようか。彼女らは「忘れろ」と叫ぶ。しかしそれは「罪を見逃せ」と同義である。忘却は赦しではない。赦しは悔悛の果てにのみ訪れる。だが魔属が真に悔いたことがあったか。ない。
彼女は涙ながらに「戦争で共に戦った」とも語った。諸君、その戦争の時に何があったかを忘れてはならぬ。勝利の影で、魔属は略奪し、女を奪ったではないか。剣を取ったことだけを切り取って「同じだ」と叫ぶのは、盗人が「同じパンを食べている」と言うに等しい。見よ、この欺瞞を。
そもそも「平等」とは何であるか。神の定めを無視し、獣と同列に並ぶことを意味するのか。我ら人間は、神の愛に選ばれた種である。魔属は試練として与えられた存在である。試練を友としようというのか。火の試練に抱きつき、氷の試練に口づけしようというのか。あまりに滑稽である。
彼女は「夢がある」と言った。諸君、私は笑いを禁じ得ない。夢想は自由である。ならば私にも夢がある。いつの日か、魔属がその牙を抜かれ、角を折られ、ひれ伏して神に赦しを請う夢を! そしてその日こそが真の救済の日である。
魔属解放とは美辞麗句をまとった毒である。耳ざわりは甘いが、飲めば人の心を蝕む。解放の先にあるのは何だ。奴らは言葉を得れば権利を求め、権利を得れば土地を求め、土地を得れば人を支配する。歴史が証明しているではないか。彼女らが解き放たれた都市は荒れ、人は逃げ、神の旗は踏みにじられた。自由は無秩序を意味し、平等は人の尊厳を奪う。
彼女は「信仰は止めない」と言った。ああ、なんと寛大な言葉であろうか。まるで我らが信仰を裁き、許すか否かを決める権利が魔属にあるかのように語る。ここに皮肉な逆転がある。迫害を受けてきたと言いながら、実際には我らの信仰そのものを迫害しているのだ。
そして彼女らは必ず「人間の中にも罪人はいる」と持ち出す。だが忘れるな。我らの罪人は例外である。魔属の罪は存在そのもの。違いが見えぬのか。目が曇っているのは、彼女らの涙ではなく、彼女らの血に染まった虚偽なのである。
迷える子羊よ、耳を傾けよ。君たちはまだ揺れているかもしれぬ。だが考えてみよ。もし今日、魔属を人間と同列に置くならば、明日には君たちの子が魔属と机を並べ、明後日には魔属の教師に教えを受けるであろう。その教師が教えるのは何だ? 神なき思想、血に刻まれた堕落の正当化である。君たちは本当にそれを望むか。
信者諸君よ、恐れることはない。我らには神がいる。ノピリの父が天より我らを見守っている。魔属解放の叫びなど、神の御声の前にはかすかな風にすぎぬ。彼女らが「夢」を語るならば、我らは「真実」を語る。夢は夜明けとともに消える。しかし真実は永遠である。
私は断言する。魔属に平等はない。魔属に解放はない。あるのは悔悛と服従のみである。これを厳しすぎると言う者がいるだろう。しかし神の御前に甘えは許されぬ。罪を赦すのは神であり、人ではない。人が勝手に赦せば、それは信仰の放棄に他ならぬ。
だからこそ、我らは立ち上がるべきである。迷える者も、今こそ神の旗のもとに集え。共に声を上げよ。「魔属に平等なし! 人にこそ救いあり!」と。我らは一つとなり、信仰の剣をもって彼女らの甘言を打ち砕かねばならぬ。
諸君、ここに誓おう。我らはけっして騙されぬ。けっして惑わされぬ。魔属がいかに美しい言葉を並べようとも、その奥に潜む牙を見抜く。我らは叫ぼう。「神の民は揺るがぬ!」と。
これが我らノピリ教の使命である。これが人間の誇りである。そしてこれが、我らの未来である!これにより私は声明する。ノピリ教、教主、ヨゼフ・ゲオルク・ノピアルーフ・アルツハイゼン。」ノピリ教の偉い人は重厚な声、重苦しく、引き込まれそうな声で言った。自分は信念もってるからいいけどそうじゃない人はぎゅーって引き込まれそうな感じしてるな。周りからもやんややんやと声がうるさいし。
「静かに!静粛に!……さて、キラ教の方々。どうぞ。」
「皆さま、本日は耳を傾けてくださり、ありがとうございます。
この場に集った方々は、それぞれに思いを抱いておられることでしょう。恐れ、怒り、迷い、そして希望。どの感情も決して間違いではありません。人は、そして魔属もまた、感情を抱いて生きる存在でございます。
先ほど、ある方が魔属の苦しみを語りました。その声を、私は真摯に受けとめます。確かに長い歴史の中で、魔属は人間から激しい迫害を受けました。それは忘れてはならない過去です。しかし同時に、人間が魔属から苦しめられた歴史もございます。互いに傷をつけ、互いに泣き、互いに恨みを積み重ねてきたのです。私は、その事実から目を背けてはならないと思います。
けれども、皆さま。歴史がそうであったからといって、未来までもそうでなければならない理由はどこにもありません。私たちには、同じ過ちを繰り返さぬ選択肢があるはずです。
確かに毒となる草もございます。しかし、薬は毒となる草から作られるものもあります。人を苦しめる存在の中にこそ、人を癒やす力が宿ることもあるのです。魔属の力は恐れられてきました。けれど、その力が人を助けるために使われるとき、恐れは希望に変わります。
ここで誤解していただきたくないのは、私は決して「罪を赦せ」と一方的に申し上げているわけではないということです。罪は罪として正されねばなりません。それは人間でも魔属でも変わりません。ただ、罪を犯した個人を正すことと、血をもって永遠に責め続けることは、決して同じではないのです。
どうか思い出してください。皆さまも、ある日大切な人を怒らせた経験があるでしょう。過ちを犯した時に、赦されず未来永劫その罪を背負わされたら、人はどう生きるでしょうか。愛を学ぶことはできるでしょうか。希望を持つことはできるでしょうか。魔属への扱いとは、まさにそのようなものなのです。
ノピリ教の方々は言うでしょう。「彼らの罪は血に刻まれている」と。しかし私はこう考えます。血は受け継がれるものでありますが、心は育まれるものです。血を変えることはできなくとも、心を変えることはできます。黒い盃を考えてください。そこに飲み物を注いでも、それは黒く染まりません。それと同じように、憎しみを受け継いだ子に、愛を注ぐことができるなら、その子は新たな道を歩むでしょう。
私は知っています。魔属の中にも人を傷つける者がいます。人間の中にも同じように人を傷つける者がいます。大切なのは、その者をどう裁くかではなく、その背後にいる罪なき子や家族にまで「罪を背負え」と告げることが正義なのか、という問いでございます。
私の夢は大きくありません。壮大な国の改革を成し遂げることでもなく、宗教の根本を変えることでもありません。ただ、目の前で泣いている者がいれば、その涙を拭う世界を築きたいのです。飢えた者がいれば、パンを分け合える関係を広げたいのです。
魔属解放の声に耳を塞ぐのは簡単です。「危険だから」「罪深いから」と言えば済みます。しかし耳を塞いだその先に何があるかを考えてください。恐れから生まれる政策は、さらなる恐れしか生みません。怒りから生まれる裁きは、さらなる怒りしか生みません。
私は信じています。恐れや怒りに支配されぬ道があると。互いに見つめ合い、語り合い、赦し合う道が。人と魔属が共に同じ机を囲み、子どもたちが一緒に遊ぶ。そんな光景は、決して夢物語ではありません。
「理想論だ」と笑う方もいるでしょう。しかし、理想がなければ人は前に進めません。理想があったからこそ、飢えの時代を越え、戦乱を越え、人はここまで歩んできたのです。理想は私たちの灯火なのです。
ですから、私はここで訴えます。どうか、魔属に心を閉ざさないでください。彼らの全てを肯定せよとは申しません。けれど、彼らの中にいる罪なき子どもを、未来を夢見る若者を、どうか見捨てないでください。
毒草の中に薬があるように、恐れられる存在の中にこそ救いの可能性があります。もしその芽を摘んでしまえば、我々自身が未来を奪うのです。
どうか、皆さま。愛と赦しの道を共に歩んでまいりましょう。それが人であることの尊さであり、神の御心にかなうことだと、私は信じております。以上。キラ教教主である私の名前はミシェル・キラアムール・リュミエールです。」キラ教は全てを包み込むような、優しい声で話した。男なのに結構高い声だから優しく聞こえるな。相変わらず魔属平等化のほうは結構な罵声が響いてるけど。
「三方の説明はそれでよろしいか。」
「はい。」
「あぁ。」
「えぇ。」
「なら、今回はこれで終了とする。次回は、賛成派であるキラ教及びその仲間たちと、反対派であるノピリ教及びその仲間たちで様々な話を行ってもらう。内容は後日、王の口から直接公布される。心して聞くと良い。」司会側はそういい頭を下げて退席した。結構さっくりと終わったな。
「帰るよ。」
「ん。」
「わかった!」そう言いながら僕らは講堂から出ていった。外はインタビュアーが何人か待機しており、色んな人が色んな話をしていた。
「インタビュー出来ます?星文新聞なんですけど。」
「星文ってなんだ?」
「キラ教側の新聞ですね。」
「だったら良いよ〜!」その後僕らは星文新聞と中道派であるカナリア新聞のインタビューを色々受けた。
「インタビューありがとうございました。」
「いいよ〜。」
「気にしないでください。」そのあと僕らはそのインタビューの塊から抜け出た。そして、この後どうしようか〜。って話をしてると左からリンネルに連れられているプオラートとその親と兄弟姉妹と思わしき男女がいた。
「あ!プオラートじゃん!」
「あ、アリシア達。」
「友達か?」
「ん。」
「そっちは?」
「えっと。お母さんとお父さん。それと長男と長女。それと妹。」プオラートはそう言うと紹介をした。ということはこの女の人がダークエルフと普通のエルフのハーフか。確かに肌がかなり日焼けしている黒さしてるな。
「よろしく〜!」その後僕らは挨拶をした。
「それでどうしてここにいるの?」
「昨日、一昨日と進級式と履修登録とか説明で家族総出で行かなきゃ行けない用事がありまして、今日はついでに街観光もしていきますかという話になりましてそれでみんなが了承してくれたのでしてるところです。」
「説明?なんでするの?」
「2年生は1年生よりかなり命に関わる授業を行うらしいので家族への説明が必要なんですよね。」リンネルは少し恥ずかしそうにいった。
「どんなことやるの?」
「薬学の方だと耳栓つけてマンドラゴラ育てたりするらしいです。さすがに王都の学校ですからできるだけ害が少なめのものを交配させてるんですけどそれでも声が大きければ大きいほどいい薬になるという都合上、なかなか声を弱くさせることができないんですよ。やり方間違えると泡吹いて倒れたり過去には耳栓付けなかった子が大量のマンドラゴラの声聞いて死んでしまったってこともあるので。」
「確かにそりゃ家族総出の説明あるわけだ。」
「他にもベラドンナとか色々育てますから。」そう言うとリンネルはドヤ顔をした。なんか可愛いな。
「そういえば銃はどうするんだ?」
「まあ、それは普通に武道の範囲内なのでどうにかします。」そのあと僕らは何度か話してプオラートたちと別れた。そのあと僕らは話しながら昼飯を食べたりして過ごして寝た。
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翌日、起きて朝ごはんを食べていた。王都は6層の輪っか状に家や宿や生活圏が別れており魔属が住めたりする居住区域は結構外側に位置していた。理論上は魔属も他の人たちも一緒に住んでいいらしいけど、内縁部にすむとノピリ教の迫害がすごいらしいので外縁部に住むのが多いらしい。ちょっと治安悪いような気はしないけど……この問題は結構難しいし、もうしょうがないし、多分平等化が決まっても暫くはあまり変わらないだろう。そう思いながらご飯を食べギルド所にいった。
「うーん。」
「どうしましょうか。」
「今日は比較的平和な依頼がいいな。この前のはゴブリン討伐してたし、それを踏まえて普通の任務にしたい。」
「へ〜!いいねぇ!」
「ん。じゃあそういう落ち着いたのにしようか。」そのあと少し話しながら任務を決め、王都近くの農家さんの収穫を手伝うという任務になった。そうして任務を決めて受けて、馬車に乗って数十分。今日の任務場所の大きな農場に着いた。
「おはようございます。」
「あぁ。おはようさん。今日はありがとうね。急に働いてる人が病気で休むと言われてねぇ。仕方がないからギルド所に頼んだんだよ。」恐らくの農場主であろう、おばあさんが頭を下げながら話した。
「よろしくお願いします。」
「よろしく!」
「あら。その子は妖精さん?」
「はい。」
「それじゃああなたには別の用事を上げましょうかね。着いていきんしゃい。」
「はーい。」
「あなた達は後ろの畑にあるじゃがいもを収穫しんさい。」
『了解!』僕らはそのあと1面のじゃがいも畑からじゃがいもを収穫した。昼飯にホクホクのじゃがバターを提供してもらったり、マレが行ってる薬作りを少し観察しながら日が暮れるまで行った。そういえばククカクロスのみんなどうしてるかな。国も変わったし、色々変わったし元気にしてるといいけど。
「お疲れさん。長く働いてくれてありがとね。これ、少ないけどお礼だよ。」
「いいの?お金もいっぱい貰ったのに。」
「んだ。子供はな、いっぱい食べて大きくなるのが1番じゃ。いっぱい食べなさい。」おばあちゃんはニコニコ笑いながら言った。少なくとも僕は子供と言えるのか……。まぁ、ルーナカミのことを指して言ってるんであろうけど。
「は〜い!」そのあと僕らは馬車に乗ってギルドに戻り、依頼金を受け取ると宿に帰ってもらったじゃがいもをじゃがバターなどにして消費しお風呂に入って寝た。
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「起きろ!外でろ!体を低くして口を手か布で覆え!」宿屋の主人の大声で目が覚めた。目が覚めるとそこには煙が充満していた。火事か?そう思い僕はとりあえず這いつくばりながら手で口を覆い階段を降りて外に出た。うわ……なにこれ。外は空が夜なのに地上の大火で真っ赤に染まる程の大火事になっており、外にはもう既にマレがおり、少し経つとアリシアとソリス、ルーナカミがドタバタしながら出てきた。となると……あとはナサールか?
「ナサールは?」
「ナサールってあの白髪の子供か?それならまだ逃げてない人を起こしてる最中だ。」
「水魔法放てる人はみんな水をぶっかけろ!それと。声が大きいものは走って大声で火事だと伝えろ!騎士団には連絡済みだ!」
「分かりました。」
『オーディメンス・ウォメンタイル!』
『精霊よ!水を放て!』逃げたものから順々に水を放ち、せめてもの抵抗をしていた。僕も水を放っていた。
「なんで火事が……」
「少し前、白いマスクとローブに身を包んだ男数人が火魔法を使って火事を起こしたのを見た。消化しようとしたら強い衝撃を食らって、目が覚めたらそこはもう火の海だった。」
「またHSSの仕業か。」宿屋の主人はそういって舌打ちした。HSSってなんだ?
「なぁ。HSSってなんだ?」
「ノピリ教の過激派だ。|Heilige Säuberungs Sturm《聖なる粛清の嵐》の略。魔属の生存や魔属のことを支持する人の生存すら、邪悪だと思ってる人でその人たちの断絶を目指している人たちが所属している団体だ。あまりに過激派すぎてノピリ教ですらある程度手を焼いている程……。」
「ダークジェノサイド。」魔人の男が説明していると後ろから黒いナイフ状のものがその男や数人の人達を刺し殺した。大混乱だけどまさか……
「ふははは!」燃えてない家から、ゆっくりと何人かの白いローブを着た男たちが現れた。お前らが……
「脆い!力のみ強し愚者どもよ!それに身を売る哀れな者よ!ひれ伏せ!これは火での贖い!お前らの穢れた心を清めるためである!」ローブの人達は大声で叫んだ。即座にアリシアが走って殴りかかろうとしたが「吹きとばせ!」という声と共に遠くへ飛ばされた。壁の方には飛んでなかったので火が燃え移ることは無さそうだけど大丈夫か?
「お前らが燃やしたのか?」
「そうだ!」火が、いっそう激しく燃え上がった。
「何故だ!」
「お前らは思い上がりすぎている!」
「思い上がり?」
「そうだ。」
「どういうことだ!」
「神は魔属を罪への贖いとして育てられた。生きて、加虐され、死して、そして煉獄の炎に焼かれることで、真の贖いを得るのだ。それなのに、赦すだの。私たちは差別されていますだの。どういうつもりだ!お前らは加虐されて当然の存在。それ以外にお前らの存在価値などない!人も魔属も平等!?巫山戯るな!」
「ふざけてなんかねぇよ!見てみろ!魔属だって、焼ければ死ぬ!顔が爛れたらその顔はもう戻ってこないんだ。それなのに、神が施す罰だと?お前こそ何を言ってるんだ!子供や、大人、老人を焼き殺すのが正しい神の道だと言うのか!?」
「その通りだ!愚か者よ!できる限り苦しませて死なすことが、罪への贖いに繋がる!幸いにも希望はこちらが用意せずとも既にある!あとはそれを絶望の2文字で塗り替えるのみ!さすれば我々の魂は更に高尚に上り詰めることが出来るのである!」
「高尚……高尚……うるさいんだよ!その1つの魂のために幾つもの魂が犠牲になってるんだ!!そこまでして高尚に上り詰めたいのか?そこまで、お前の神様は魔属の血を求めるのか?」
「黙れ!炎に焼かれて死ぬことが神の意志なのだ!苦しみながら死ぬことで魔属も死後煉獄に焼かれて贖いを得ることができるのだ!神の意志を無視し、思い上がろうとするなど笑止千万!」
「神の意志?子供を焼き、親を失い、泣き叫ぶもの達がでてくる。悲しみ、怪我を負い、それでも、許されることなく、一生死ぬまで差別されていくのが神の意志だともでも言うんですか?」
「そうだ!そして差別などではない。区別である。生まれながらにして罪をおってるものに、慈悲など不要。全てを滅することこそ神が望んでいることである。」
「そんなことを神が望むなら私たちは喜んで地獄に落ちる!」
「あぁ!」
「誰であろうと助けるのです。それが同じ種族なら尚更、助けます。それがギルドの掟です。」
「ギルドの掟ねぇ。それってどんなものでも助けるだっけか?そんなもんはただの偽善でしかない。特に悪を助けて何になる?」
「偽善か?確かにそうかもしれない。だがな。宗教やなんかで殺すよりは、偽善とはいえ助ける方がよっぽどマシだ。お前らはなんだ?火をやってそれがお前らの家族のためになるだと?それのために。何千人、何万人のものが犠牲になったらいい?」
「犠牲ではない。煉獄へ誘うためのものだ。赦されることなどない。神は我々に権利を与えた。生きながら燃やし。灰にするのだ。」
「許すわけないだろ。例えそれをしたのが神であるなら、俺らは神にでも逆らう。」
「お前の子供に不幸が訪れるぞ!先祖も地獄で泣いてるぞ!」
「構わん。先祖もそれを望んだはずだ。」
「まだ、まだお母さんが火の中に……。」
「分かった。どこの家……」
「溶けて爆ぜろ。ライトネスバースト。」
「護れ。ガーディアンス。」
「ほんと、油断も隙もないわね。どこなの。教えて。行くから。」
「うん。こっち。」そう言うと魔属の少女たちふたりは歩いていった。
「なぜ。魔を救うのだ?」
「泣く姿よりは、笑う姿を見ていたい。ただそれだけの事だ。」
「なら、諦めろ。今ならまだ間に合う。」
「諦めろ?お前それでも心を持っているのか!?目の前で泣き叫ぶ者がいる。昨日まで平穏に暮らしてた日々が、幻想と言われて頽れるものもいる。それを、ただ眺めていろというのか?もうそれは宗教ではない。鏖殺と、虐殺だ。人を殺す口実に宗教を使うな!」
「お前らに何がわかる。後ろを見ろ。お前らが見てないうちに牙をといでいる。それがいつ、クリス王国にむくか。悪の芽はつまなきゃならぬ。」
「……確かに悪の芽は摘むべきだ。ただ、お前らのやり方は、マッチポンプだ。自分で魔属を虐殺して、なんでもやりたい放題して、それでやっと解放されると思ったら、悪の芽は摘まなきゃならぬと言われまた絶望に押しつぶし、それで起こる涙を嗤う。それが許されると思ってるのか?僕らは違う。」
「そうだ。俺は違う国からきた。そこでは、色んな国から来た人が暮らしてる。もちろん、異国だから慣れなきゃいけないこともあるが、大抵の人はその国になれ、ルールを守っている。それと同じだ。悪になるのは土壌が悪い場合も多いんだ。それをお前らは罪だ罰だ贖罪だ?勝手なこと言うな。もちろん、悪いものだって居る。どんなにいい所にいても、犯罪をしてしまう魔属は一定数いる。でもそれは人間だって同じだ。お前らが神を信じるように、俺らは望みを信じる。希望論、馬鹿げている。なんと言われても勝手だ。それでも俺らは信じる。」僕はHSSの目を言い静かに言った。HSSは
「そうか。なら、我らはいくらでもその芽を摘もう。この世から悪という悪が消えうせるまで。」HSSの集団はそう言うと消えようとした。
「まて!お前らがやった事は放火だ。それは変わらん。罪に問われ、懲役を受けるであろう。」
「ふ。浄化のためにやったことが罪に当たるだと?」
「その通りだ!」そう言いながらさらに後ろの方から騎士団の人数人が現れた。その騎士達はHSSの方を魔法の縄で捕まえ押さえつけていた。
「放火で逮捕する。」
「我らがやったのは浄化である!」
「浄化?そんなもん関係ない。俺らはただ放火したやつを逮捕するだけだ。ついてこい。街を燃やした罪は重いぞ。」騎士団はそう言いながら無理やりにHSSを連れていった。
「……お前ら。確か白髪のチビがいたよな。」
「うん。」
「ナサールのこと?」
「あぁ。そうだ。あっちにある救護室にいけ。多分あのチビがそこで待ってるはずだ。ここは俺らに任せろ。」
「いいの?」
「あぁ。もしものためだ。それに……お前ら2人回復魔法使えるだろ?」
「……うん。」
「なら救護室でけが人を回復させた方がいいはずだ。回復魔法は貴重だからな。」
「分かりました。行きましょう。」僕らは男に従い、燃える家と消火する人々の隙間をぬって救護室にたどり着いた。そこには赤い布の上にたくさんの人が身を悶えながら転がっており、そこを回復魔法などをかけたりしている人が走り回っていた。
「……水……水を」
「ママは……」
「痛い……」
「回復魔法使えるやつは軽傷者含めて全員で回復魔法を使え!」
「おい。お前らも手伝え。」僕らはそう言われたので回復魔法が使える人と使えない人二つに分かれていった。
「妻は……妻はどうなんた!」
「これが天罰か……」
「私の家が……」
「火の中に妹がいたの……」様々な声を聞きながら僕らは氷嚢を火傷が酷いところに当てたりした。中にはもう助からないものや死んでしまったものもおり、自然と涙が出てきた。自由を願っただけでこの仕打ちかよ。
「おい。そこのお前。ナサールとやらの仲間か?」30分程救助してたころ、別の救助人が話しかけてきた。
「あ、はい。」
「ちょっとこい。」そのあと僕らはその人についていった。するとそこにはアリシアたちがおり、ナサールも放心したような顔で座っていた。背中には包帯が巻かれていた。
「……あ、ごめん。」
「ううん。どうしたの?」
「助けるために救護人を探してたらその途中で母親がいて、まだ赤ちゃんが火の中にいるから助けてと言われたから、助けてその子をを抱っこしながら歩いてたら、後ろからなんかにうたれて……そこから記憶がなくなって気づいたら今なの。赤ちゃんは無事?」
「あぁ。抱っこしてたからお前が壁になって助かった。」
「なら、よかった。」
「それと、今回背中に当たった魔法と呪いで魔力がぐっちゃぐちゃになってる。しばらく魔法は使えないと思ってくれた方がいい。」
「分かった。」
そのあと僕らが日が昇るまで救護人を助けたりした。さすがにさまざまな人たちが消火を手伝ってくれたおかげで火は消えることが出来たが大災害ではあり、発火元となった第6層南は全焼。第6層北もほぼ全焼、その他半焼が第5層南、第5層北、第4層南、一部焼失が第4層北、第3層南という王都の街の3分の1はなんかしら燃えるほどの大火災になっていたらしい。けが人や死人も多数あり修復には最短でも2ヶ月、長ければ半年以上かかるという試算が出た。はぁ、頑張るか……。
9
大火災からひと月半が経過した。ある程度の大工さんの多さとさすがの手伝う人の多さで半焼程の家はかなり立ち直ってきた。
さすがに全焼の家は直るのにもう数ヶ月はかかる予定らしいがそれでも、徐々に治っていった。
相変わらず魔属批判は直っておらず「なぜ、こんなことをされて魔界に戻らないのか。」という批判も色々来たが大抵は「私は、母親や父親を殺された。戻りたくても、戻る家も、家族もいない。」や「魔界生まれじゃないんだ。元々。こっちで生まれて、こっちで育った。戻るもなんも、魔界は俺にとっても異世界だよ。」等の返しで終わった。そうなんだよな。魔属にとっても、この世界は故郷だ。帰れるわけがない。
また、流石にここまで来ると同情の方が勝るのか平等や「流石にこうさせるのはダメなのではないか。」という意見も増えていった。
そう思いながら家を治すのを自分らも手伝い、たまにギルド任務に向かっていった。ギルド任務はいつも通り変わらなかったが、帰る宿もほとんどが燃えた影響で宿もないか、帰ってくる頃には満杯になっており、数日間は燃えなかったギルド所が管理している避難所(男女のみで別れてて風呂なし簡易的なトイレあり。)で過ごした。
また、この間にこの前あったナサール殺人未遂の裁判もあった。結果は、実行役のカラマーが懲役12年+むち打ち50回。
火災のせいで延期されてたディベート第2回も当日になり第1回より更に賑わいがましていた。椅子の上には十数枚の紙が資料として置かれていた。
「第2回ディベートを始めます。まずは、このディベートにご集まりいただきありがとうございました。今回のディベートは、現実な点での魔属との共生は可能なのか、宗教的、現実的なデメリットやメリットなどを現実の事例や、宗教的観点からも考えていきたいと思います。私は司会者のタルアムと申します。よろしくお願いします。」そう言いながら司会者は頭を下げた。
「それでは、ご挨拶といきましょう。まずは、ノピリ教側からお願いします。」
「うむ。我々も、どうして、様々な観点から魔属を悪と言ってるのか、それが正しいことを証明しようと思う。」男性の聖職者から聞こえる重厚な声。
「それでは次にキラ教。」女性の優しい声。
「私達も、様々な観点から事実を語っていこうと思います。」
「そして今回のゲストの1人目、ギルドの長、アルバートさんです。」
「今回は、私も話に入らせてもらう。魔属のことを近くで見てきたため、多少現実の話も詳しいだろう。正直な所、キラ教は少し、宗教によっているところがあるため、希望論になってしまうだろう。それを現実的なところに落とし込む意味でも、役に立つと思う。よろしく頼む。」
「そして、最後になりますが、魔法使い兼、今回の統計についての解説を行う、エドワード博士です。」
「よろしくお願いします。嘘つきは数字を使うとはよく言いますが、少なくとも数字は嘘をつきません。私は、ただただ事実のみを伝えようと思います。」
「それでは、早速始めようと思う。皆皆方。紳士的な話を。」その挨拶とともに僕ら全員で礼をした。
「それでは、早速ですが統計と照らし合わせようかとおもいます。皆さん。手元にくばられている資料をご覧下さい。今回使ったのは国が出してるここ200年の犯罪が全て記録されている犯罪全書です。その中の数十年間を抜粋しています。
それでは次のページをご覧下さい。こちらは、過去50年の犯罪者割合の平均を人属、魔属のふたつにまとめたものです。赤い側が人属。青い側が魔属となっております。このように、基本的な犯罪者数については、人属が1000人辺り5-6人、魔属が1000人辺り7人ほどと、たしかに、直接な犯罪数だけで見たら上回っています。」ノピリ達の頷く声。しかし、それを無視し、学士は更に畳み掛ける。
「しかし、次のページをご覧下さい。こちらは、先程のグラフを、比較的平等なウトナ、人口が多い王都、ノピリ教が多く支配するナカラの3つに細分化したグラフです。」
「見てわかる通り、ナカラでは、大幅に魔属の犯罪率は増加。年によっては1.5倍から2倍もの大差をつけています。」
「当然だ。」
「しかし、王都では少し変わり、ほぼ同等、たまにではありますが人間の方が犯罪率が多い年もあります。」
「更に、ウトナでは完全に逆転。魔属の方が犯罪を犯しておりません。」起こる騒めき。
「誤差のようなもんじゃろ。」
「いえ、確かに、王都の方はほぼプラマイ差がなく誤差かもしれません。しかし、ウトナの方は平均して魔属の方が15パーセントほど低いのです。これは、誤差ではありません。真実です。」
「次に犯罪内容の比較です。」
「こちらをご覧下さい。これは、過去50年間の犯罪記録の中からいくつかの罪をリストアップし、その値を平均し、人属と魔属で比較したものとなっております。」
「魔属で特に多い、つまり優位性が見られたのは、強盗、窃盗の2つです。こちらは人属側と比べても的確に優位性が見られました。」
「そして、特に優位性も劣位性も見られなかったのは、殺人、強姦、放火などの重犯罪。」
「逆に、人属側で多い、つまり劣位性が見られたのは暴行、組織犯罪です。」
「このことからギルド以外にまともな仕事が与えられないのが、犯罪を引き起こしていると考えられます。」
「そして、次のページをご覧下さい。これは、ほぼ同じ内容を犯した人属と、魔属の懲役の比較です。1千ルナシェス以下の窃盗、暴行、1万ルナシェス以上の強盗など、様々な犯罪で比較しております。これを見てわかるとは思いますが、全てにおいて魔属の方が懲役は重くなっています。」
「当然のことだ。」
「知っての通り、ある程度同じような罪と被害額とかなら懲役は大体同じに落ち着きます。しかし、魔属の方が、懲役が平均して1.2倍は長いのです。」
「さらに、それだけではありません。こちらをご覧下さい。」
「人間が魔属に対して犯した犯罪と、魔属が人間に対して犯した犯罪を比較しました。」
「殺人、強盗、窃盗、どれも人間が魔属に対して行った罪の方が大体4割ほど懲役が短くなっています。」
「命の価値が違うというのか?」
「ええ。申し訳ないですが。有名なのでいえばクエルタ事件でしょうか。この事件は5年前、とある成人男性一人が、魔属を4人、殺害し、数人の魔属を監禁、魔法による徹底的な暴行を続けました。そのあまりに残虐な行為により、死刑は免れないであろうと思いましたが、加害者がノピリ教信者であることを自白。その結果、死刑から、腐敗臭による迷惑行為により懲役4年に減刑された事件です。」
「もちろんご存知だ。」
「あぁ。あの事件は俺自ら事件現場を見たからな。血溜まりの部屋、骨だけになったなにか。助け出された魔属の中には、舌や手がない者もいた。」
「それがどうした?ノピリ教徒としては当然のことだろう。むしろ誇らしい。」
「お前なぁ。人間が同じことやられても同じこと言えるのか?」
「落ち着いてください。」
「ちなみにですが、今回の資料集めのために、クエルタ事件の加害者が住んでた村のノピリ教の司祭に話を聞いたところ以下のような文言が記録されました。『わたしはこの村唯一の司祭になって40年以上経ちますがそんな人は初めて見ましたし、洗礼を受けたものは必ず名簿として書き残すようにしてるんですけど、その人の名前はございません。』」
「……つまり嘘をついて罪を軽くしたということかの?」
「えぇ。その人は捕まるまでそこで生計を立てていたので恐らくそういうことかと。このように、嘘をついてノピリ教信者といえば、罪を免れることができるという裏道まで存在します。最近は、対策をある程度施してるらしいですが、それでも焼け石に水程度。それを考慮に入れた上で今後のディベートに役立てて欲しいと、私は思います。以上で終わります。なにか、質問などありますか?」
「無いですか。よろしい。では、」まばらな拍手。
「……それでは次に実際の街や村などを用いて、事例を語ってもらう。数字とともに現実を知って欲しい。最初は、この前はノピリ教が先に表明したため、キラ教及びギルドが行う。よろしいか。」
「えぇ。」
「それでは、まずは、アルバートより。ウトナの解説を頼む。」
「あぁ。」1歩前に出る。静かな部屋の中で、呼吸音と、歩行音のみがこだまする。張り詰めた空気の中、口を開いた。
「今から話すのは、交易都市、ウトナの話である。ウトナの都市の始まりは、この国ができるまえ、2000年前に遡る。」
「ウトナの始まりって確か鉱山都市でしたよね。」
「あぁ。大昔のことだがな。人間が掘り、魔属が運び、双方が加工する。そこには、怯えも、加虐意識も、宗教も、ない。必要だからそうなったのだ。」
「でも確か……」
「あぁ。ウトナの鉱山都市の歴史は1500年前に終わった。理由は、単純だ。掘り尽くしたのだ。」
「これで終わるかと思った。」
「しかし、終わらなかった。」
「目的が終わったら滅びる。それが街の宿命のはずだった。しかし違った。鉱山都市は、貿易都市へと姿を変えた。」
「理由は簡単だ。海にも、都市にも、ある程度の近さがある。ウトナは当時、クリス王国ではなかったが、別の国の王都にも近かったからな。」
「そういえばカナシア地方は色々あってこの国への併合が遅かったな。」ノピリ教が思い出したかのように呟く。
「あぁ。他の地方は遅くても1000年くらい前にクリス王国に併合されたが、カナシア地方が併合されたのは、500年前だ。」
「その間にも、ウトナは発展して行った。独自の貿易を築き、様々な種族が、営みを続けていった。」
「人間、獣人、エルフ、そして魔属。」
「そこには命の分別はなく、優劣もなかった。」
「だからだろう。今もこの地方は他の地方とは違っている。」
「地方領主はキラ教か、無神教のどちらかであり、魔属は人と同様の権利を持つ。それがこの都市では当たり前になった。」
「300年前、この国でありえないことが起こった。」
「魔属狩りだ。生きている魔属を存在罪として捕らえ、拷問や、死刑を形式だけの裁判のみで行った。」
「正義の法律だ。」
「正義か、悪かは今話してない。事実のみを述べている。」「数万人の魔属が犠牲になった。この法律。それも、この地方には届かなかった。」
「何故か、理由は明らかだ。そんなものが届いても、我々は関係の方を優先した。そうでなければ都市が止まる。ウトナにとって、魔属はかけてはいけない歯車のようになっていたのだ。」
「その結果はどうだ?犯罪率は増えたか?いや、むしろ減っている。取引の内容を長期間覚えることができることを強みに商人をやっている魔属も多い。」
「理由は簡単だ。共に働き、共に学び、共に住み、共に守り、守られる。罪を追えば罰せられるが、その罪も正当な罪だ。」
「対等、平等。だから盗むまでしてなんとか生計を立てていく必要はないのだ。」すこしのどよめき。
「これは理想論ではない。2000年の積み重ねだ。」
「だが、あまりに特殊すぎるのではないか?」
「いや、可能だった例に過ぎない。」
「剣は人を傷つける、危険なものだ。しかし、剣を捨てる人はいないだろう。それと同じだ。」そう言うとアルバートは段上から降りていった。まばらな拍手はこの前の表明の拍手よりは数が多かった。
「それでは次に、イリジャーピラのお話をお願いします。」
「分かりました。」キラ教の方々はそう言いながら段上にあがった。
「イリジャーピラって確か。」
「えぇ。去年行きましたよね。」
「なつかし〜。」
「こほん。イリジャーピラはウトナより、特殊な土地です。イリジャーピラは小規模な街です。しかし、人間、龍、龍人族の3種が入り交じって生活しています。」
「新聞で見たことがある。」周囲からもザワザワとした声が聞こえてきた。
「ええ。去年、何かと話題に登りましたからね。」
「龍か。龍にも色々なタイプがいるという。人より小さいものから、街を破壊できるものまでいるとは聴いている。しかもそれが魔属と共に来ている。危険ではないのか。」
「えぇ。確かに事実です。龍人族が長を務めてるため、襲われる危険性はほぼ無いものの、そのままであったら危険でとてもではないですが、小規模の街はおろか、集落すら危ぶまれたでしょう。」
「しかし、そうはならなかったのです。」
「龍がいても、人はすみ、そして、街になりました。」
「危険なことには違いありませんが、イリジャーピラは龍を少しばかり利用することにしました。」
「その結果、街には城壁がほぼありません。」ざわめき。
「もちろん。龍以外にも城壁がない理由はあります。イリジャーピラは街のほとんどを龍の住処である森に囲まれているため、森が自然の城壁になってもいます。」
「しかし、城壁がない理由は、龍もその一員を背負っています。」
「龍はその街に住むものにとって、かけがえのないもの。生活の一部になってます。子供たちの中には、龍の背中に乗るものさえいるのです。」
「事故はないのか?」
「ほぼないです。数年に1度、あるにはあります。しかし、そのどれも、龍に余計なちょっかいをかけたりして、その報いを受けた結果、起こってしまったことです。」
「ふむ。」
「もちろん龍にも龍の生活があります。1000年に1度、恐らく子育てのためでしょう。50年間の間、魔界の方に帰ります。去年までがそうでした。」
「しかし、その間も街は存続しました。もちろん。龍
の住処は壊さずに、それほど信頼がある証拠です。」
「力が強い、それは確かに恐怖の対象になるかもしれません。しかし、それを差別や加虐に履き違えてはいけません。」
「私はこれで終わらせていただきます。」少し大きなどよめきや、叫び声などが聞こえた。
「静かに、」
「静粛に!……ゴホン。それでは残り二例の説明を、ノピリ教方、よろしくお願いします。」
「わかった。」
「今までは、偶然を言われてきたのだ。ここからが真実を教えよう。我々は、そのためにここに来たのだ。」
「ナイトラウ。この集落を知っているものはいるか。」ゆっくりと手が上がる。ノピリ教側と思わしき席列には沢山。その他の席には少数といったところか。
「ふむ。多少知っているというところか。まぁ、仕方ない。もう50年も前の話だからな。」
「ならば教えてやろう。」
「ナイトラウは中規模の村だった。人は少なかったが農業を中心に少なくとも人並みの生活ができる程度には栄えていた。」
「だが、ある時を境に一変する。」
「理由は勿論魔属だ。村長が魔属の受け入れを始めた。そこからは坂道を転がり落ちるように治安は悪化、人口は減少。更には神々の怒りまで引き起こした。今はどうか、街はゴーストタウン。人っ子一人残ってない。」
「まて、ナイトラウの滅亡には様々な要因が積み重なっている。ゴーストタウンになった年には豪雪による雪溶け水のせいで川が溢れた。その他にも貿易の減少などがあったはずだ。魔属も、その一因をになってるのは間違いないが、その全てを魔属に押し付けるのは少し横暴過ぎないか。」
「それでも、魔属が引き金であった可能性は否定できない。」
「魔属は長命で力がある。価値観が違う。人の社会に混ぜれば、軋轢が生まれる。それは自然のことだ。」
「それでは、最後にカイラッツァの説明をお願いします。」
「あぁ。カイラッツァは、この国にノピリ教を大いに広めた聖人。カイラッツァ様の生まれ故郷である。」
「そのため、この街では、魔属を全て、殺している。」どよめき。叫び。
「殺しているとは……どういうことだ。」
「言葉の通りだ。通りかかった魔属は、全て殺す。」
「それが罪だとわかってのことか!」荒げる声。
「アルバートくん。ここがどこかわかるかね。言いたいことは分かるが、ここは議論する場所だ。冷静になれ。」
「……失礼しました。」
「では、続きを。」
「分かりました。先程も言った通りその街では、魔属は徹底的に排除している。一応のために、この先、魔属の命の補償なしという看板は掲げているが、それらを無視して入った場合、入った異教徒は改宗か、追放。そして魔属は、みな殺す。それが街を守る行為だ。」
「その割には有罪になってる人が、少ないような気もしますが。」
「当然だ。街を守るためにやっているのだ。誰もが賛成している。寧ろそれをしなかった場合、街が終わるのだ。当然のことだろう。」
「裁きは何も、法で決まるのではない。その時、その街で決まる。そなたらの街が魔属とともに生きるように、わしらの街は魔属を徹底的に殺すだけよ。」重く響く声。
「我々は明確に言う。魔属は人ではない。人より劣った存在であり、堕落の象徴。加虐行為は正義だ。」
「……以上が、各都市の実例です。次は質疑応答に入ります。」
「まずはノピリ教からお願いします。」
「了解した。ギルド方に質問だ。」
「お答えしよう。」
「なぜ、そなたらは魔属をそこまで信頼できるのか?」
「信頼か。正直なこと言うと、魔属そのものを信じている訳じゃない。魔属、という種族より、その人柄をみて決めている。」
「俺は子供の頃からギルド団員である父親と母親、それと数人の仲間たちとともに育っていった。その中には魔属だっていっぱいいた。俺はその中で育ってきた。酒だって飲んだし酔いつぶれた時は家まで届けてくれた。背中だって数え切れないほど預けたし、お前たちの仲間が蔑んで来てるのを庇ったことだってあった。」
「情に流されているという点もあるだろう。ただ、それだけじゃあ30年も40年も一緒にはやれない。」
「魔属は長命だ。力もある。それだけで見たら確かに、怖い存在であろう。だが、空腹も感じるし、恐怖も感じる。仲間が死ねば泣くし、一緒に喜ぶこともできる。裏切る者もいれば、命を賭ける者もいる。もしも。長命と力の差、その2点だけで人とは違うと言えるなら、長命で知られるエルフや力が強い獣人族も同様にさげずまれなければならぬだろう。」
「確かにそうかもしれぬ。だがしかし!彼らと魔属では確実に違うのだ。魂が穢れている。魂が穢れているから、祖先に堕落の果実を食べさせたのだ。」
「その魂とやらは、人には見えないし、そんなもん、戦場では役に立たない。ただ、現実を見てる。」
「それにお前らも見ただろう?」
「何をだ?」
「去年の大戦をだ。人間も、魔属も、ノピリ教徒も、キラ教徒も、同じ陣で戦った。それを見ても、まだ、穢れたものと言えるのか?」
「……」
「俺は魔属を信用しているんじゃない。人間と同じ重さで疑い、人間と同じ重さで任せているんだ。」
「……」
「次は俺の番だ。構わんか?」
「えぇ。」
「一つ聞く。あんたは、魔属を“殺すべき穢れ”だと言ったな。」
「あぁ。言った。」
「去年の大戦で、あんたの弟の命を庇って殺された魔属がいただろう。」
「あぁ。弟が話してたのを聞いた。」
「あれも、穢れか。」一瞬、間が空く。
「……あれは、偽善だ。」
「!」キラ教の驚く声。
「偽善か。」
「俺は宗教を持たない。だが一つだけ分かることがある。」
「差別し、加虐し、それでも尚、命を賭して守ってくれるものをお前は軽視する。」
「それで守れる秩序は、長くは続かない。いつかは、爆弾のように破裂する。」
「……。」
「私もキラ教として質問しても構いませんでしょうか。」
「いいぞ。」
「魔属を悪だと断じることであなた方は本当に人間を守れているの思うのでしょうか。」
「愚問だな。カイラッツァを見ろ。犯罪率は特に低くなっている。」
「そのカイラッツァの犯罪率は、魔属を人とみなさず、犯罪として通報しないために低くなっております。実際には、魔属への暴行や殺害などは禁止されているというのに。多くの罪が、隠されているのです。」
「それでも秩序は保たれた。秩序というのは完全な善じゃなく、崩れない悪だ。」
「人は弱い。恐れと欲望を制御できない。だからこそ、外に“穢れ”を置く。そこに憎しみを集め、内側を保つ。それに、穢れも適切な理由がある。」
「それは、罪の転嫁です。」
「いや。穢れを罰するのは、当然の権利だ。」
「その罰を与える原因となった証拠は、どこにありますか?」
「ここに記されておる。」ノピリ教の人は聖書と思わしき本を持って言った。
「それだけで証明になりうる。それに、彼らが生きる限りそこから堕落が流れる。それだけで充分だろう。」
「穢れを抱えた平等はいつかそこから崩れる。それなら、歪でも成り立つ秩序を選ぶのだ。」
「逆にあなたに問おう。」
「あなたらは常に平等を語る。それは素晴らしいことだろう。だが理想論で国は守れるのか。魔属の力が暴走した時、誰が止めるのだ?」
「法が止めます。人間と同じです。」
「ふん。理想論だ。」
「違います。理想論ではありません。人間と同じです。私たちの宗教では罰を負うのは、種族ではなくその人格とされています。人間たちだって刃を持ってつき刺せば人はもちろん、魔属ですら殺してしまうことが可能です。」
「でも、刃や人を規制はしませんでした。法で縛り、守ってきたのです。」
「そして、彼ら魔属もまた知性があり、法を守ることができます。そうでなければウトナは今頃遺跡が見つかった観光地とされていたでしょう。」
「なるほど。確かにそうかもしれぬ。しかし、吸血族や人喰い鬼にも同じことが言えるか?吸血族は人の血を飲み、人喰い鬼は人を食う。彼らもまた、法を守れると思うか?また、そういう血にまみれた種族がいる時点で、魔属は堕落していると思わないのかね?」
「それは俺が答えてもいいか?」
「何故だ?」
「あなたも言うように、キラ教は少し理想論じみててね。現実論として、そういう問題に付き合ってきたものとして俺が話した方がいいだろう。」
「なら、言ってみるが良い。」
「わかった。」
「まず訂正しておこう。魔属を一括りにするのは、現場を知らぬ者の議論だ。」
「人喰い鬼は確かに討伐対象だ。理由は単純明快。被害が現実に出ており、かつ共存が成立しないからだ。 あれは種族というより人災に近い。」
「だが吸血族は違う。ややこしいが奴らは必ずしも血を必要としているわけじゃない。力を引き出すための手段に過ぎないのだ。実際、ギルドに登録し、契約のもとで家畜の血を買っている者もいるし、仲間の同意を得て分けてもらう者もいる。」
「つまり問題は魔属かどうかではない。
制御できるか、契約を守れるか、被害が出るか――それだけだ。」
「なぁ、ノピリ教主さんよぅ。人を殺す人間がいるからといって、人間そのものを堕落した種族と呼ぶのか?」
「呼ばんだろ?我々ギルドの基準は単純だ。救える者は救う。だが、止めねばならぬ者は止める。」
「種族で断ずるのは統治ではない。思考停止だ。」2人の鋭い睨みつけが巻き起こった。
「さて、質問は終わったか?」
「あの……少しよろしいでしょうか?」
「なんだ?」
「私は傍聴席をとった王都にすむ商人です。質問をさしてください。」
「もちろん。」
「大丈夫です。」
「問題ない。」
もし魔属と人が本当に平等になった未来は、どうなるんですか。壊れるんですか、それとも纏まるんですか。」
「纏まります。確かに時間はかかるでしょう。摩擦もある。ですが共に生きる経験は、恐怖より強い。私はそう信じています。」
「壊れるだろう。確実に。そして壊れる可能性を孕む未来を、我らは軽々しく選べぬ。」
「どっちになるかは言えないな。状況次第で如何様にも変わる。ウトナみたいに何事も無かったように過ごすかもしれないし、ナイトラウみたいに壊れるかもしれない。だがな、何もしなければそれより早く壊れる。俺は、制御された共存に賭ける方が現実的だと思う。」
「ありがとうございました。」
「以上で第2回ディベートを終了する。次回の日程および議題については追って通達する。」議題終了の合図の声が響いても、まだ立つ人は少なかった。ただゆっくり、ゆっくりと立つ人は増えた。
「なんかどっと疲れた〜。お昼ご飯にしよ。」僕らもアリシアのその声とともに外に出ることにした。街は賑わい、インタビュー記者が居たが、足を止めてインタビューに答える人は少なかった。
「どう思いました?」
「いや〜。難しい話いっぱいしてたね。」
「ほんとだな。」
「なんか、もう宗教ってよりかは、別のことで話してた。」
「まぁ、今回は代表として宗教が出ていますが、宗教というよりかは、魔属は本当に平等にしていいのかという争いしてますからね。特に街の話はみんな本当にあったことの話をしてますから、もうどれを本当の顔と見るかの戦いですよね。」
「そうだな。ウトナとかはまだ長いけどそれ以外は体験する間もないからどっちがいいのか分からないでいるのだろう。」
「どちらにかけるにしても、不安な要素が大きすぎるってのもあるし。ほんと、悩ましい問題だよ。」ナサールはそういうとため息をついた。
「まぁ、こうやって議論に上がってるだけで一歩前進じゃない?さっきのディベートの話聞く限り、私が産まれてからも結構過ごすことそのものが罪となる時代はあったらしいし。」
「そうだね。」
「うん。」
「じゃあ昼ごはんどこ行く?」
「うーん。そうだな。」僕らはそのあと昼飯を食べてそのあとゆっくりと宿に入って過ごした。第3回ディベートの内容はどうなるんだろうな……。まぁ、どうなるとしても、みんなが納得する形で作るのは不可能だし、祈るしかないか。
10 居酒屋店パルケアにて。店主。
夜の街は、いつも騒がしい。特に議論や祭りのあとは騒がしいものだ。今日の酒場も、やけに混んでいた。
俺はこの店を親父からついでもう20年になる。土地柄故、ここの酒屋には色んな客が来る。
カウンターで酒を飲んでいるのもそのうちの一人だ。短く湾曲した黒い角の魔人。親父の代からそいつはそこに座っていた。いつもの時間、いつものメニューだ。
こいつが店に来たのはまだ親父が店をやっていた30年くらい前のことだ。言葉こそ少ないが、勘定は必ず出すし、落ち着いていて酒に酔っても暴れない。常連なら、それで十分だ。
「親父、もう1杯。」
「あいよ。」
扉が強く開いた。黒いローブを着ており、六芒星の金のネックレスを下げている。宗教には疎いがそんな俺でもわかる。こいつはノピリ教信者だ。顔が真っ赤だ。恐らく今日の昼にあったディベートを見学しに行ったのだろう。
「1杯くれ。」よく通る大きな声だ。周囲も少し声が静まる。俺は黙ってお酒を出す。安いものだが、質は良い麦酒だ。
「ほう。穢れも酒を飲むのか。」煽るような声。しかし、あいつは気にしない。
「今日はいい話を聞いた。穢れはやっぱり穢れだ。ウトナという都市では犯罪率が低いと言うが、それはまやかしにすぎん。犯罪率が高いのが穢れの象徴だ。」
「秩序は、穢れありでは成り立たないものだ。お前みたいなものがいると、秩序が崩れる。」魔属はなんも言わない。空になったお酒のグラスをゆっくりみてるだけだ。
「おい。お前、穢れよ。聞いているのか?」
「聞こえている。」呆れるような、落ち着いた声。
「なぜ反論しないのか?あぁ、図星だからか。」
「酒を飲みに来ただけだ。論ずるために来たわけじゃない。」
「その通りだ。」魔属の方に新たな酒を1杯つぎながら、いった。
「店主よ。お前も穢れの味方をするのか?」
「俺は魔属の味方なんぞしない。お金をきちんと払うものの味方だ。こいつは30年は来てるが、暴れた事もお金をちょろまかしたこともない。1回感情を顕にしたことはあるが、それも親父の葬式に出た時に静かに泣いてたくらいだ。」
「それが穢れの味方をしているのだと言うのだ。ディベートを聞いたか?」
「聞いてない。今日は棚を作っていた。」
「同じく。店の準備に休みなんてねぇよ。」
「逃げたのか。」
「なら聞かせよう。解放なんて戯言。秩序を壊すだけに過ぎん。」
「少なくとも、ここではお前の方が秩序を壊してる。」
信者は俺を睨む。
「ここでの秩序は単純だ。騒ぐな。暴れるな。金を払え。この3つさえ守れれば俺は誰も追い出さないし、逆にこれを破れば誰だって追い出す。さて、お前はどうする?」
「チッ!」
「野放しにしていればいずれ、神から天罰が降り、お前らを灰にするであろう。その時になって後悔しても遅いぞ!」
「後悔は店にはつきものだ。」そう言うと信者は金を置いて帰ってった。
「悪かったな。俺の奢りだ。」俺はそういうと軟骨揚げを出した。
「慣れている。」
「慣れるもんか。」
「慣れなきゃこの商売やっていけん。この前も同じような人にお前が棚を作ると店全体が穢れるといって聖水を投げられた。量が少なかったから火傷ですんだが、今でも傷は残ってる。」確かに爛れたあとがあるな。俺は肩を竦めた。
「うちは、飲みたい奴が飲む店だ。角があろうがなかろうがな。」
魔属はわずかに笑った気がした。
外ではまだ、ディベートの余熱が街を巡ってるらしい。だがこの店の中では、酒の匂いと木のカウンターの傷が、種族より長く残る。
俺はまたグラスを拭き始めた。ここでは、声が大きい方じゃなく、最後まで座って飲んだ奴が客だ。
11
ふわあ。僕らは起きて朝飯を食べ、服を着替えてギルドに向かった。相変わらずウトナより任務の数もそれに群がる人達も多いなぁ。
「今日はどれにします?」
「王都なのもあって色々あるからなぁ。俺は任せるよ。」
「ん。」
「じゃーね……んーと。これとかどう?」アリシアはそういうと1枚の紙を指さした。そこには「ラプーザまでの配達警備と配達の手伝いをお願いしたい。」と書かれてあった。
「ラプーザって?」
「あまり聞いた事のない集落ですね。みんな知ってます?」そのあと僕ら全員は首を振った。ほんとに知らなそうだなこれ。
「まぁ、とりあえず行ってこよーよ。」
「じゃあこれにしますね。」そのあと僕らはギルドの人にお願いし、依頼料を払って、そのラプーザまでの配達警備を頼んだ馬車の人がいるらしい場所に歩いて行った。そこは馬と馬車が沢山ある、バスの営業所みたいな場所だった。
「こんにちは。」
「おう。悪いがここは関係者以外立ち入り禁止だ。どんな用があってここに入りたいんだ?」
「こういうものでして、ここには依頼を受けにやって来ました。ジェイソンさん居ますか?」そう言いながらソリスは少し前にダディワスから出したギルドカードを見せた。
「……あいよ。ついてこい。」警備員さんはそういうと僕たちを中に迎え入れた。
「ジェイソン。依頼人がやってきたぞ。」
「お。おまえらが依頼を引き受けてくれた人か。感謝する。」20代くらいの若い男性がそう言いながら出てきた。筋肉質で結構やり手な雰囲気あるな。
「うん。よろしく。」
「では、馬車のところに案内する。」その後僕らは案内されて歩き、馬車のところにたどり着いた。馬は2体おり重く、大きく、がっちりしていた。
「結構大きな荷馬車ですね。」
「そうだな。まぁ今回行く町はある程度大きいからな。」
「この馬あまり見た事ないんですけどどういう馬ですか?」
「特別な商人から貰った足も早ければ荷物も多く運べるハーフ馬だ。」
「ハーフですか。中途半端になりそうですけど上手くいくんですね。」
「俺もここまで上手くいくとは思ってなかったよ。さぁ、乗れ。今日は遠いところまで行くぞ!」
「分かった!」僕らはそういうと馬車に乗った。馬車は俺らが乗るとすぐに走り出した。確かに荷物も多いし加速度も凄いな。
13
馬車に乗って2時間弱。特になんもなく、盗賊に襲われることもなく進み、着くことができた。小規模とはいえ街には城壁もあるし簡単な検査も行われたし今までの荷馬車とは違ってかなり本格的な運び荷馬車だな。
「到着!」街に着くと早速わらわらと、子供たちが出てきた。僕らも降りてその子供達に挨拶した。
「おぉ〜。」
「今日はこの人が守りに来てくれたの?」
「そうだな。」
「魔属もいる!」
「めずらし〜!」子供たちはワチャワチャしながらナサールの近くに集まった。珍しいと言ってる感じ怖がったりいじめようとしている感じはなさそうだな。安心した。
「おいおい。近づくのはいいが俺の仕事を邪魔しないでくれよ嬢ちゃんたち。」その後ジェイソンは様々な家に向かい僕らも手伝いながら荷物を運んでいった。途中ノピリ教のところに行くためジェイソン一人で荷物を運んだり、逆にジェイソンはあまり出ず僕らが主に荷物を運ぶこともしたりして色々な人に荷物を運んだ。
「よいしょ。じゃあこれが最後だな。よろしく頼む。」そのあと僕らは最後の荷物を運び配達任務を終わらせた。2時間くらいはかかったかな……。疲れた。
「終わったな!」
「んん〜!疲れた。」
「みんなお疲れ。ほれ。そこで買ったジュースだ。妖精用もちゃんとあるぞ。」
「ありがとうございます。」
「ありがと〜!」僕らはそのあとそのジュースを飲みながら馬車に乗り王都に帰った。幸いにも帰りに盗賊とかの襲撃もなく、ギルドを頼んだ割に平和な任務で終わった。まぁ、たまにはこういう平和な手伝いもいいよな。




