5-3 War To the Castle
18
そこから3週間が経過した。山脈は抜け、その後人が集まるまで待った。35万人の人が集まるのにはかなりな日数がかかり、そこまで待った。その間に敵軍も気づいてじーっと睨み合う感じになった。ただあまりに睨み合ってもしょうがないので、キラ教が来てから話し合い、捕虜交換を実施することになった。ちょうど中間点だったのか、結構早めに物事が決まり、キラ教が取り仕切り、名前を1人ずつまとめ。1人ずつ交換をして行った。敵国側は民間人をウルフェンで勝手に返して行ったらしく、そのせいで人数は少なくなっていたもののちゃんと帰ってくることが出来たらしい。その後敵は立ち去りまた作戦を考えることが出来た。地図には3つの街があり、そのうちの南の街、ガルベンガルビンを攻めることが決まったらしい。大きな街で城壁は硬いが、その代わり攻めればかなりの優位性が取れるらしい。そのため途中からは歩き、2日弱で着くことが出来た。目の前にはレンガの城壁と多数の兵が街を守っていた。
「どうするんだ?」
「さぁな。まだ作戦会議の最中でどうなるかは分かってない。」
「そうか。できる限り早めに決められるといいんだけどな。」
「まぁな。あっちが先に攻めてこないか不安だし……」そう話しながら夕方がすぎ、気づけばよるになっていた。
不安だけが掻き立てられる中、甲高いラッパの音がひびいた。
「今から演説だ。この音色……作戦発表か。心して聞くように。」
「分かった。」
「なに?」ルーナカミが軽く欠伸をしながら聞いてきた。もう寝てるんだな……。まぁ、子供が起きるのにはキツイ時間か。
「今から作戦発表だってさ。」
「ふわぁ……」ルーナカミはそう言うとアリシアの膝にすわった。
「それじゃあ聞きますか。」
「ん。」そう言うとみんな黙り、発表を夏の夜の中、静かに待った
「静かに聞いてくれ。
今宵、我らが攻めるのは――ガルベンガルビン。
街の規模は大きくはないが、敵は魔属二万、決して油断できぬ。だが、我らの兵はその十数倍。しかもこの中には、かつて魔属の脅威に晒された者もいれば、魔属として共に戦う者もいる。
だからこそ、この戦はただの勝ち負けではない。
これは――混乱の時代を終わらせる、端緒となるべき一戦だ。
我らがとる作戦の名は「月牙烈陣」。
刃のごとく鋭い魔属の突撃で敵を断ち、月のように広がる矢の雨で逃げ場を消す。
まず、夜明け前。
精鋭の魔属部隊と近衛軍が西から突入する。奴らの力は確かだ。そして、この戦ではその力を存分に使ってもらう。敵の混乱を誘い、防衛を崩す。そこへ近衛軍が突き進み、街の中心を突く。早ければ昼には敵の中核は崩れるはずだ。
だが、それだけでは終わらぬ。
北と南東、そして西。そこにはギルドの弓兵が陣を張り、街に向けて矢を放つ。連続した矢の雨は、剣で受けることも、盾で防ぐこともできぬ。やがて敵は身を伏せ、戦意を失うだろう。
一方、残りし我らは南と東の街道を制圧する。逃げる道を絶つのだ。
我らは包囲はせぬ。だが、包囲よりも速く、深く、確実に敵を捕らえる。
市民は害さぬ。
この戦の終わりに残すべきは焼け野原ではなく、新たに立つ旗と、人々の平穏だ。
そのためにキラ教軍が入り、保護と秩序の確保にあたる。必要があれば、ギルドが後を引き継ぐ。
敵の魔属は決して侮れぬ。だが、恐れる必要はない。
この中には、味方の魔属もいる。共に戦う者の姿を見れば、敵も分かる。――我らが、何のために剣を取っているのかを。
兵たちよ。
これはただの戦ではない。
敵を斬るための戦ではない。
生きるべき者を生かし、戦うべき者を討ち、守るべき者を守る。
それが「月牙烈陣」の本義だ。
準備はよいか。
声を上げずともよい。
静かに、しかし胸に誓ってくれ。
明けゆく空の下、我らは静かに進み――雷のごとく斬り裂き、月のごとく包み込む。
それが我らの戦いだ。」僕らはそのあと拍手を行った。夜遅いものの、叫び声の代わりに拍手を行った。
「ふーん。」
「じゃあ。夜中まで寝るか。少し睡眠時間短くなるかもだけどいいよな。」
「まぁ、しょうがないよね〜。」
「攻城戦、早く終わるといいですね。」
「ん!」そのあと僕らは準備を行った。どうなるんだろう。
19
深夜、ほとんどの人が寝ずに戦闘の準備を行った。アリシアはどこかに行き、ナサールは前衛に向かい、ソリスなどの僕らは再度丸まってる寝てるルーナカミを起こさないようにしながら道の反対方向へ向かい準備を整えた。
「さて、そろそろだな。」
「ふわぁ……徹夜するとは思ってなかったから思ったより眠いですね。」
「そだね〜。」
「そういえば今回はマレまばらに居なくて大丈夫なんだな。」
「うん。まぁ、始まったらウロウロすることになるからほとんど変わらないんだけどね。」
「そうなのか。」
「さて、そろそろ日も登りますし……ルーナカミ起こしますか。」
「そうだな。起きろ。」
「……ふわぁ。もう朝?」
「いや……まだ早朝だな。ただこれから戦だから起こしたんだよ。」
「そっか……ふぁ〜。」
「ほら、そろそろせめるぞ。」
「もう……?」
「そうだ。今日はなんか早朝に始めるらしいからな。」
「ふーん。」そのあと僕らはラッパが鳴るまで待った。結構すぐにラッパがなり、一部の魔属精鋭と近衛軍が進み始めたらしい。僕らも先頭の準備を整え街道付近に待った。するとたしかに、最初こそは何も無かったものの途中からは戦線が後ろの方に伸びていくため、かなりこっち側にも戦う要素がでてきた。そしてやっぱり力は魔属有利なものの、数で圧倒的有利が取れるためだんだん押しやっていくことが出来た。
「緋刀美。いけるか。」
「ん!」僕と緋刀美はそう言うと進んで魔属と争った。
「ほう……2人か。」
「私たちと同じだね!」ふと後ろを振り向くとやけに高貴そうな服を着た女の子が現れた。
「お前らは……?」
「だれ?」
「おや、我の名前を知らぬものが来るとはなぁ。」
「まぁ、他国の王の顔なんてなかなか見ないから、仕方ないんじゃない?私たちだってミラル王女と相見えるまで顔知らなかったし。」他国の……王?
「そうじゃな。なら、教えてやろう。我はダーヴェラゴザンチ王国の女王。同時に魔王候補のアモーディス。」
「同じく、女王と同時に魔王候補のモルディーナ。」150cmくらいの貧乳。朝日に照らされて鈍く光る銀髪の長いポニーテールの髪と片方の目に魔法陣のような模様が書かれている緋色の目と黒く光っている地味に赤が混じっている少し短めのしっぽ。黒い綺羅のキュッとした感じで所々に金糸が入っている長袖シャツとズボンを履いて黒い革靴を履いた13歳くらいの2人の少女は言った。魔王候補……?
「魔王……魔王って複数いるのか?」
「あぁ。」
「魔王という大事なものが一度死んだだけで全て断絶する訳には行かぬからな。魔王の魔法陣を受け継がしたもの数人が、待機しているんだよ。魔王が死んだら、力比べになり、1番最後まで立ってたものが魔王になるのだよ。」なるほど、よく考えているな。まぁ、家族ではないだけ、ちょっと変な感じはするが。というか……魔王候補ってことは……。
「お前ら……めっちゃ強いのか。」
「決まっておろう。」
「強いに決まっているよ。」
「まずいな……」所詮はただの人と精霊。魔王候補にもなってるほどの力持ってる人と争って勝てるわけもないんだよな。
「いいか。」
「ん。」
「逃げるぞ。」
「……わかった。強いの……わかるもんね。」そのあと僕らは逃げようとしたが力が強いということは足も早いので叶わなかった。
「逃げる?」
「まぁ、戦うよりは自分の実力がわかっているだけマシか。」そう言うと2人はそれぞれの手を取った。まずい……やられる……そう思った瞬間誰かが矢を放ったのかアモーディスの肩に矢が突き刺さった。
「……ほう?」
「あいつね……あんたらは後でいいわ。」
「幸運だったな。」そのふたりはそう言うと木の方を見てどっかに行った。助かった……。そのあと僕らは戦いをし、何とか退却させる数を少なめにすることが出来た。退却せよ!という声は上がったものの、街道に人が多すぎて厳しいらしい。そのあと、何とかある程度まで退却でしたようで居なくなったり捕虜になったりした。残ったのは、城壁内のカルベンカルビンとその住人たち、一部の捕まった捕虜と沢山の相互の死体。そして味方兵のみだった。さて、どうするのだろう。5万の魔属はいくら35万でも抑えきれるわけないしな。
20 Military General Temporary Meeting Room
軍隊総合臨時会議室にて、カルベンカルビンをどう扱うかを巡って、各国の指導者たちが長机を囲んでいた。街は無事陥落した。問題はその後だ。最初に言葉を切ったのは、落ち着いた声のアルバートだった。
「我々の目的は軍事的制圧であって、殲滅ではない。街のインフラも生きており、再利用の価値があると見ます。放棄は賢明ではない。」
頷く者も多い中、ゼクスシアは一呼吸置きながらも口を開く。
「街を維持すること自体には異論はありません。ただし……そこに残された『魔属』を人間社会のように扱うつもりなら、神の意思に反します。罪は、建物ではなく、その血にある。」
「では、神の名において彼らを焼き尽くせと?」と静かに返したのはロクアルだった。だが、その言葉には怒気はない。あくまで問いかけとして。
ゼクスシアは頷きかけたが、エリアーヌが間に入り、緩やかに言葉を紡いだ。
「私たちキラ教としては、街に残された命を必要以上に奪う意図はありません。ですが、放置することで再び敵の拠点となる懸念があるなら、統治案が必要です。」
アンドロニクが短く付け加える。
「我が国としては前線拠点として利用したい。だが、あくまで“脅威でない者”を対象にする。排除ではなく、管理だ。」
ジャバリはゆっくりと頷いた後、慎重に言葉を選んだ。
「まずは街に住んでいた者の調査から始めましょう。ほとんどの人は平民だ。なので一時的な保護民とする道もあります。」
ルバートがそれに応じる。
「雑多軍の中にも魔属の民間出身者はいます。管理さえできれば、反乱は起きません。過度な干渉は避けるべきかと。」
再び視線がゼクスシアへ向いた。
彼は少し沈黙し、逡巡しながら低くしかしはっきりと言った。
「……ならば、その罪を忘れるな。血に穢れがあることは変わらぬ。その者たちを“人”のように扱うのは、私の信仰では容認できん。しかし……流石に今ここで争う気はない。」
ロクアルが目を細めた。
「それで十分です。認めろとは言いません。ただ、巻き添えは避けたい。それだけです。」ゼクスシアも頷いた。それは本心のようだった。
議論の末、結論はこうなった。
・カルベンカルビンは暫定的にギルド軍とキラ教軍の共同管理下に置く。
・住民は身元確認と武装検査の後、非戦闘員と認められた者は保護民とし、今まで通りの生活を送ってもらう。
・ノピリ教軍は内部管理に関与せず、外縁警備や戦後整理を担う。
・市政再建は行わず、前線補給地とする。
静かながら、納得の得られる決定だった。各陣営が一歩ずつ譲り、戦争の果てにある形がここで一つ、形になった。
議題が変わる。「捕虜の扱い」についてだ。
もっとも、全員が最初から理解していた。ノピリ教軍が戦った地域では“捕虜”という存在はまず残っていないことを。処刑か、味方軍の場合返却しかないことを。
それでも、ギルド軍やキラ教軍によって拘束された一部の戦闘員、あるいは市民として逃げようとした者たちが存在していた。
まず言葉を発したのはロクアルだった。
「我々の部隊で拘束したのは三百数十名。全員が武器を捨てて投降した者たちです。即座に処刑する理由はありません。」
ゼクスシアが視線を投げた。静かな、それでいて有無を言わせぬ圧力を持ったまなざし。
「それらが魔属であるなら……我らには“裁き”の義務がある。だが、貴殿らの軍が捕らえた者なら、その責任も貴殿らにある。私が手を出すつもりはない。」
ロクアルは淡々と頷いた。
「了解しました。我々で扱います。」
そこでエリアーヌが口を挟む。
「彼らの中には、戦う意志が少なく、無理やり戦いに出された者も含まれます。また、戦いを不安に思い、ここのカルベンカルビンから逃げ出し、とらえられたものもいる。裁くより、“理解”に近い形での尋問を行いましょう。無抵抗であった者には、一定の人道をもって接すべきです。」
アンドロニクは短く言う。
「情報価値があるなら生かし、なければ拘留。長期保護には反対だが、拷問や即処刑は支持しない。」
ジャバリがやや意外そうにエリアーヌを見る。
「貴殿でも『尋問』という手段を選ぶのですね。」
「ええ。尋問と拷問は異なります。真実を知るために問い、答えを待つ。それがキラ教の考える“知の試練”です。」
ルバートが淡く笑って言った。
「雑多軍の方では、捕虜らしき者は確認できませんでした。何しろ、民間人の整理が精一杯で……。ただ、必要なら護送役くらいは担えます。」
一通りの意見が出たところで、アルバートがまとめに入る。
「よろしい。確認として、今回は以下のように定めましょう。」
・捕虜の扱いは各捕縛部隊の責任とし、他軍の介入は原則行わない
・ギルド軍・キラ教軍は自軍で捕縛した者について、尋問と保護を併用する
・ノピリ教軍は自身で捕縛した者は味方軍を除き即座に処分済であり、これ以上の要求はしない
・捕虜が民間人である可能性がある場合、キラ教軍が人道的審査を行う。
そして、まだ、戦は終わってない。カルベンカルビンを落とした今、彼らは敵地の「中心」に立っている。進まねば、逆に包囲される恐れがある。
ゼクスシア・イワンヌが卓に両手をつき、重々しい声で発言を始めた。
「今の我らの位置は、南北を敵に挟まれた“中間地”に過ぎぬ。このまま動かねば、王都ナクペシアとジオナルの両方から攻囲を受けることとなろう。我は提案する。全軍から精鋭を抽出し、三方へ分進。偵察を行い、適切な攻略対象を選ぶ。これが最も理に適う。」
会議の面々にざわめきはない。ただ、静かに頷く者が多かった。
「驚いたな。貴様のことだから、3方向に同時に攻めるとでも言うのかと思った。」
「我もそこまで頭が回らんわけではない。3方向に同時に攻めたら戦力が足りないことは分かっておる。」
「三方面への展開、賛成だ。」アルバート・アームストロングが冷静な口調で続けた。
「近衛軍はその性質上、正面突破・殲滅戦に長けております。戦場の混乱にも動じぬよう訓練された兵たちです。我らは南部、アバジェートへ向かいましょう。距離も近いです。」
「それは理に適う選択ですね」と応じたのは、エリアーヌ・ナンツだった。
「ギルド軍とキラ教軍は連携に慣れております。実直な兵と多種族の冒険者が揃う構成は、変化に富む地形や不確かな民意の中でも強みとなる。私たちは西部、カナルビアを受け持ちましょう。」
隣にいたロクアル・アルシオスも頷いた。
「我々も攻撃より偵察と判断の共有を重視して進みます。都市規模も大きく、簡単には落ちない。だが、その分、情報が価値を持ちます。」
ゼクスシアは、彼らの返答に小さく目を細めた。もはや反対する者はいない。ならば、次は己の軍の行動を明示する番だった。
「ノピリ教軍は北部、ジニアを任せてもらおう。多少距離はあるが、いざとなれば殲滅戦も辞さぬ構えで臨むことができる。都市の防備が整っていても構わぬ。真に聖なる者は困難の中でこそ信仰を貫く。」
エリアーヌがやや視線を外す。が、発言はしなかった。ゼクスシアの強硬な信仰には反発もあるが、今回は冷静さを保ち、意見の対立を避けるべき局面だと心得ていた。
アンドロニクが低く言葉を継ぐ。
「イザベラとしても、この作戦に異論はない。我らの軍にも精鋭はいるが……異国の地で全面衝突の責任を負わせるのは過ぎる。我々は全方面への補給と後方支援に徹しよう。必要があればいつでも援軍を送れる体制は整えておく。」
続いてジャバリも、静かに席を正した。
「我がヴァンデルヒ軍も同様です。多国籍軍である以上、他国の主権を脅かすような深追いは慎むべき。ただし、各偵察隊への連絡将校は出します。現地民との軋轢があれば、和らげることはできるでしょう。」
最後にルバートが手を挙げて一言。
「雑多軍は精鋭と言える兵は少ないが、荷の運搬、通信の確保、簡易野営地の設営などには長けております。三隊すべての後方連絡と、緊急時の移動支援に当たります。」
全員が、それぞれの役割を宣言した。
派手さはないが、軍として機能するための整合が、今この場で整えられた。
ゼクスシアが静かにまとめに入った。
「では、三日以内に出立の準備を整え、三日目には各地へ偵察展開とする。報告を持ち寄るのは十日後、此処カルベンカルビン。そこで次なる戦略を決定する。」
一人ひとりが無言で頷いた。
この戦は、まだ遠い。だが、それゆえに、今この一歩が重要だった。
21 yuuta.ver
カルベンカルビンを攻めてから10日が経った。ある程度人口はおり、その街を支配したため混乱が起こることは平和ボケしてる僕でも容易に分かるし、実際何度かそういうことはあったが、小規模に抑えられ、街の人たちにはできる限り今までと変わらぬように暮らしてもらうことになってるらしい。一応僕も魔属と話が取れるソリスやナサールと一緒にカルベンカルビンの街中に武器を持ってない証明をして入ったがある程度奇怪な目で見られ、中にはナサールが子供ということもあり、ナサールのことを仲間ではなく、奴隷だと誤解する人も居て、誤解が解ける前に色々言われることもあったり、殴り掛かられかけた場合もあった。その場合はナサールが何とか抑えられた。街はほとんど変わりなかった。ほとんどの人が魔属だったのでやはりその場合の変化はあるものの、八百屋の配置や肉、魚などの値段などもほとんど変わりなかった。それを僕らは話しながら観察した。せいぜいの違いと言えば……屋根が黒いのが多かった位だもんな。
あと、途中から精鋭部隊が次、攻める都市を決めるために偵察部隊を派遣したらしい。まぁ、ちゃんと決まるといいな……あまり人を殺したくないし。
まぁ、僕らは特に何もしないのでどうでもいいと思いながらいつも通り捕虜をお世話し、死者を埋めた。魔属の死体の埋め方は分からないものが多かったが捕虜にできるならやって欲しいやり方を聞くと「別にそういうのないから自由に埋めてくれ。ただ、火とかで肉を取ったあとの場合ら墓の上に角を残してくれればいい。」と答えた為、土葬の場合に従い埋めた。
そのあとの捕虜のお世話は変わらなかったが、言語で言うと魔属語のみで喋り、こっちの言葉を使ってくる人がめっきり減ったということと人間というものに対して横暴になる人や逆に萎縮する人がいたことだ。やっぱりこっちの国に来る機会が無いもの達にとって、別の言語や人間はとてもじゃないが学ぶ対象ではないのだろう。そう思いながら食事などを提供した。こっちもある程度は分かった方がいいんだろうか……今後ソリスかナサールに簡単な魔属語でも教えてもらうか。その方が今後の捕虜のためにも役立つと思うし。
「ちょっと隣いいかの?」そう思いながら休憩所で水を飲んでいるとミラル王女が話しかけてきた。
「僕は構わないが……いいのか?」
「あぁ。捕虜部屋の観察を終えてきたところでな。そのついでじゃ。」
「そうか。」何個か聞きたかったことあるし……聞いてみるか?
「……何個か質問してもいいか?」
「答えられる質問なら構わんぞ。」
「なら……イザベラ王国とヴァンデルヒ王国ってなんでクリス王国と仲いいんだ?」
「元々はわしの御先祖様の大臣だったんじゃよ。かなり前の戦争で活躍したから土地をその当時の王様が与え、国として扱うことを許されたんじゃよ。」
「そうなのか。」
「あぁ。他にあるか?」
「一つだけ、……ダーヴェラゴザンチ王国の女王に会った時どう思った。」
「会ったのか?」
「まぁ、どっかの誰かが弓矢で気を逸らしてくれたから助かったが、正直勝てる気がしなかった。」
「まぁ、わしも最初あった時はそう思ったな。気迫も周囲の魔属とは大違い。勝てるのか……と思ったほどじゃ。しかも魔王候補。もし、勝てたとて女王を処刑したりするには魔王にお伺いを立てる必要があって面倒じゃし。」
「あぁ。そうか。無闇矢鱈に処刑してしまうと魔王との関係悪化に繋がるのか。」
「そうじゃよ。ただ、魔王にお伺いを立てるとなると今度は逆にノピリ教から『そんなことする必要はない。魔王ごと倒せば良い。』と言われそうでな。」
「板挟みって辛いな。」
「そうなのじゃよ……。しかも、アモーディスとモルディーナ。あの二人どうやら、傀儡らしくての。」
「傀儡?」
「そうじゃ。ミュジケールって知っとるか?」
「あぁ、色々あってな。よく知ってる。」
「そいつのバス……とやらに擁立されたのがあの二人じゃからのう。恐らくだがまぁ、傀儡女王じゃろう。望んでやってるか、無理矢理かは知らんが。」
「そうなのか。」
「あぁ。向こうも女王参加で士気を高めてきたからなぁ。こっからは尚更難しい戦いとなるじゃろう。」
「軍の多さによる混乱や意識の差異なども生まれる可能性高そうだからな。」
「そうなのじゃよ。特にノピリ教軍の捕虜の扱いにはうんざりしとるのじゃ。」
「ノピリ教か。まさか皆殺しにしてるのか?」
「そのまさかじゃよ。味方として間違えて捕まえてしまったものを除き、皆殺しにしてるのじゃ。」
「うわぁ……酷いものだな。」
「そうじゃのう。わしもとめたのじゃが宗教の都合上王女の命令でも従えないらしくてのう。なら、せめてほかの軍には関わらないでくれと言ったら、まぁ、何とか従ってくれたわい。」
「そうか……まぁ、頑張れよ。」
「おう。そっちもな。」そういうとミラル王女は離れていった。僕も頑張るか。
22 At the campsite
ぱち、ぱち、と薪のはぜる音が、しんと静まり返った野営地に細く響いていた。キラ教軍、近衛軍、ギルド軍の三将は、火を囲むように腰掛けていた。既に昨日にはもう帰っており、あとは戻らないノピリ教を待つだけだった。
「……遅いな、ゼクスシア殿は。」
アルバート・アームストロングが、空を見上げながら呟く。星々はくっきりと瞬き、夜はすでに深い。だが、三手に分かれていた軍のうち、ノピリ教軍だけが戻っていなかった。
「何かあったんでしょうか。仮にもあのゼクスシアが戻ってこられないとは思いませんが……」
エリアーヌ・ナンツが静かに言った。厳格な顔に不安の色が差している。
「ゼクスシアは約束を律儀に守る人だったはずだからな。やつの道は離れていたとはいえ、そろそろ戻ってこないとおかしいはずだ。」
ロクアル・アルシオスが焚き火の棒を突いて火を起こす。彼の額には、微かに汗と不安が滲んでいた。
「しかし……道筋から外れているわけでもない。なにか、予定外の戦闘でもあったか?」
「魔獣の巣でも踏んだかもしれんな。あの辺は我々もまだ地図を描き切れてない。どこに何があるのか、分かってはいないところが多い。」
そのときだった。
草を踏みしめる音が近づき、暗がりの中から黒い鎧をまとった男が姿を現した。
「──戻ったぞ。遅くなったな。」
ノピリ教軍の大将、ゼクスシア・ヴォン・アルツハイゼンだった。
その顔に疲れの色はなく、むしろ晴れやかな微笑が浮かんでいる。
「……無事だったか!」
ロクアルが最初に立ち上がった。誰であれ、味方の一軍が戻らなければ不安になるものだ。
「心配をかけたようだな。だが、収穫はあった。」
ゼクスシアはそう言って、火のそばまで歩み寄る。よく見ると、彼のマントの端には、黒く乾いた血が染みていた。
「……偵察は?」
「それは、皆が揃ってから伝えるとしよう。些細な点を除けば、計画通りに動けた。偵察はすでに部隊ごと配置につかせてある」
「そうか。では、まずは安堵しよう。」
ロクアルが言い、三人は席に戻る。
「残りの精鋭軍はどうした。」
「戻った時間が夜遅かったのでな。先に持ち場の方に戻らせておいた。なに、1人も欠けることなく戻った故、安心してくれ。」
「ふむ。それは良かった。」アルバートは安心したかのように胸を撫で下ろした。
だが──次の瞬間、ロクアルが眉をひそめた。
「……血だな。随分な量じゃないか。魔獣にでも襲われたか?」
「これか?違うな。通り道に小さな魔属の集落があってな。通過の妨げになると思い、これを機に綺麗にしておいた。」
「綺麗……?」
エリアーヌが顔をしかめる。
「ああ、実に見事な鏖殺だった。子供も女も、赤子もだ。なかでも──ふふっ、赤子を抱いて逃げようとした魔属の顔! あれは忘れられん。絶望からの歪み切った、あの顔……まさに神の裁きの証だったな。」
「…………っ!」
ロクアルの表情が、瞬間で変わった。立ち上がると、ゼクスシアに詰め寄った。
「おい、それは……本当なのか? 通り道にあっただけの集落を、非戦闘員まで?」
「当然だ。奴らは魔属だ。存在それ自体が罪なのだ。我らノピリ教の教義を思い出せ、ロクアル。貴様らギルドのように、仲間気取りをするほど愚かではない。」
「──黙れ。」
ロクアルの声が低く響く。その声に、エリアーヌとアルバートも身を固くする。
「俺たちは確かに、単軍行動を認めた。だが、“無関係な場所には火を向けるな”と、俺たちは口を酸っぱくして言ってきたはずだ。それを──貴様は、あえて破ったというのか!」
「破った? 否、遂行したのだ。神の意思をな!」
ゼクスシアが鋭く、吐き捨てるように叫んだ。顔には狂信的な紅潮が浮かんでいた。
「何が救済だ、何が共生だ! 魔属は、我ら人の世に災いをもたらす穢れそのもの! それを庇い、仲間と呼ぶ貴様らこそ、神の目に映れば裏切り者だ!」
「……っざけんなッ!!」
ロクアルが激昂して拳を振り上げるが、すぐにアルバートが腕を伸ばし制止した。
「ロクアル、落ち着け。」
「落ち着いていられるかッ! それでも同じ戦線を組む仲間か!?」
エリアーヌが静かに言葉を挟む。
「ゼクスシア殿、その集落が実際に敵性行動を取ったわけではないのですね?」
「ほう? そもそも魔属に“無害”などあると思っているのか、エリアーヌ殿。あれらは、ただ存在するだけで“敵”なのだ。聖書にもある通り──“魔の子らは神の下僕を惑わす影なり。これを殺すは、神の名をもってなされる喜びなり”と。ただ、あえて聞くなら教えてやろう。敵性行動を取ったかなら『否』と。」
「……嘆かわしい。」
エリアーヌはそれ以上言葉を重ねなかった。
ゼクスシアは顔を歪めると、焚き火のそばから一歩、また一歩と離れていく。
「我は誇りをもって我が信仰を遂行した。それに口を出す貴様らこそ、信なき者よ。」
「待て。」アルバートは去りかけたゼクスシアを、呼び止めた。夏の夜なのに、冬のような冷たさが、そこにはあった。
「なんだ。アルバートよ。」
「去るのは構わないが、最後に一つだけ、よろしいか。」
「なんだ。夜も遅い。手短に頼むぞ。」
「……貴様は、単独行動を提案したな。それは、このためだったのか。」
「ふむ。……否だな。単独行動を提案したのは、偵察を分けた方が今後の戦闘を早く、敵に挟まれる前に行えると思ったからだ。」
「そうか。……分かった。」
「それでは。そなたらも早くねるが良い。明日もはやいからのう。」
そのままゼクスシアは、夜の闇へと背を向けて去っていった。背筋はまっすぐ、ひと欠片の罪悪も感じていないようだった。
しばらくの沈黙が続いた。
火の粉が一つ、空へと舞い上がる。
「……あの集落の者たちを、俺たちは救えなかった。」
ロクアルが、膝に拳を握りしめた。
「私が言えることでは無いと思うが、信仰は時に力となるが、時に盲目の刃ともなる。それが最も顕著に現れているのが、あの男だ。」
エリアールが厳しい口調で言った。だがその瞳は、揺らめく火よりも温かだった。
「恐らく、これに正確な答えはないだろう。宗教も、我らの人の心も、似たようなものだ。だが、それがこの非道なやり方を止めない理由は無い。」
アルバートがそっと声を掛けると、火がまた一つ、優しく燃え上がった。その音は、子供の泣き声のようだった。
23 Military General Temporary Meeting Room
翌日、軍隊総合臨時会議室で偵察の結果を報告するかいが行われた。
参加者は軍のそれぞれの隊長はもちろんであるが、1つ、見慣れない影が存在した。
「これから、偵察報告会を開始する。」アルバートの声に答えるように立ち上がり、礼をした。
「アルバートよ。報告の前にひとつ宜しいか。」ゼクスシアは畏まったように発言した。
「許可する。」
「では、ミラル王女よ。何故貴方は、今日、そこにいるのか。」そう。見慣れない影はミラル王女である。凛とした気配を漂わせながら、彼女はそこにいた。
「妾とてわからん。アルバートに大事な用事があると言われて、参加してくれないかと問われたので参加しとるのじゃ。なに、兵に口出す必要はないと思っとる。妾のことは、いないと思って話しておけば良い。」
「分かりました。」大人たちは軽く頭を下げる。ゼクスシアだけは笑みを浮かべたまま、何も言わない。
「では──まずは偵察報告から始めよう。」
「では、我から行かせてもらう。北方に位置するジニアは山の上に位置する町であり自然の斜面を利用した堅牢な構造を取っておる。数は4万。兵は1万ほど。東側は比較的傾斜が弱いものの比較的であり、どちらにしろ傾斜がきつく、騎馬での進軍は困難であり、歩兵でも厳しいと思われる。」
「壁はどうだ?」
「自然石でできてたが硬くはない。また、高さもそれほど高くは無い。魔法による補強はあるものも、我らノピリ教の聖魔法には容易いものよ。」
「ふむ。1度昇ってしまえば、こちらのものか。」アルバートが頷き、次の報告を促す。続いて口を開いたのはロクアルとエリアーヌであった。
「では、我々からはカナルビアの情報を。人口は凡そ6万、兵力は5千と数は控えめです。城壁は三重に囲まれており、厚さも十分にある。正直、城壁は崩壊させることを考える方が適さない。」
「代わりに、兵の数は圧倒的に少ないです。しかも練度も高くは無いと思われます。攻めいるならこちらの方が攻めやすいと思われる。」
「なら、攻めるなら奇襲がしやすいのか。」
「えぇ。私達もそう思っております。」
そして、最後に報告に立ったのはアンドロニクを中心とした近衛軍。
「我らが調査したのはアバジェート。三都市の中で最も南、そして最も人口が多く、軍備も整っている。」
「人口十万、兵力はおよそ三万。町としてはジオナルに近いため、攻めるのに成功したらしかも、街の構造が実に堅固だった。外壁は魔力耐性を持つ材で強化されており、そもそもの素材がかなりの硬い岩の壁でできている。しかも市街地は同心円状に複雑な通路で構築されておる。侵入しても迷路のような構造で、敵兵が散在している限り進軍は非常に困難である。しかも、軍の技術力にも秀でており実際、偵察中にみつかり戦闘になり、何人かが怪我をおった。潜入すら容易ではない。なので、要所なので攻めたい反面、攻めるのはおすすめしない。」
「アルバートですら攻めあぐねる可能性が高いのか?」
「あぁ。」
「なら攻めるべきではないな。」
「そうですな。」
「なら、攻めるのがどこが得策だろう。」
「西のカナルビアかな?壁は固いものの兵が少ない上、練度もない。それなら簡単に攻めることができるだろうし、もしもその後逆に攻められても一部が壁に入ることで守られる可能性も高い。」
「それが一番よろしいでしょうな。」全員頷き、偵察報告が終わったところで会議も終わろうとしていた。しかし、アルバートだけは紙を触り、まだ終わらす気持ちはないようであった。
「ゼクスシア……そなたはまだ、報告することがあるのではないのか?」
「おや、そなたから言うとは、珍しいこともあることかの。分かった。話してやろう。成果のことを。」
「我らが進軍の途中、小高い丘の陰に小さな魔属の集落を見つけた。人口は百ほど。ガキが多く、我はそれを危険因子と見て、先に贖わせておいた。」
「……贖わせておいた?」
「えぇ。死なせてあげたと言ってもいいですな。」
「……その集落の者は攻めてきたのか。敵意はなかったのか。」ミラル王女は震えるような小さな声でいった。そこにはまるで、微かな希望を見いだせるような声だった。
「いや、逃げ惑う、実に愚かなことしかしていなかった。だが、あれこそが真の浄化よ。赤子を抱えて逃げようとした女魔属の顔──実に、神が微笑まれるような苦悶の顔を浮かべていた。」ゼクスシアは恍惚の表情をしながら喋っていた。
「……申し訳ないのだが、ゼクスシア殿、妾、アルバート殿、この3名を除いて、席を外してくれないか。」声は氷のように静かだったが、その中には怒りが混じっており、威圧までも響いていた。ゼクスシアとアルバート以外の者たちは、互いに目を合わせつつも、無言で立ち上がり、天幕を後にした。
残されたのは、ミラル王女、アルバート、ゼクスシアの三名。静かだが、中はそれぞれの怒りが満ちていた。
24
ミラル王女が、沈黙を破る。
「……まずは、そなたに問おう。ゼクスシアよ。」
「なんなりと。」
「なぜ、その集落を見つけた?」
「……あの集落を見つけたのは、往路と復路で異なる道を選んだからだ。ジニアには、主にふたつの道がある。道幅は狭いものの、かなり短い恐らく主の道と、道幅は広いかわりに、遠回りをする副の道じゃな。。両方の道を調べるのは軍として当然のことじゃろう?。帰りは副の道を辿り、その道中、我が軍の先遣隊が、山の尾根から下界を俯瞰していたとき、小さな煙が上がっているのを発見した。それを辿った先に、あの“穢れの棲み家”があったのだ。」
「……つまり、最初から“通り道”などではなかったのじゃな?」
「結果的には通り道になっただけの話だ。問題があるとでも?」
「その副の道には鏖殺したあと戻ってきたのか?」
「もちろん。道を逸れたことには変わりないのでな。」
「そなたは贖いと言っておったな。述べてみよ。その贖いとは一体何をしたのかを、嘘は許さぬ。」
「ほう。なら述べてやろう。」ゼクスシアは傲慢とも取れる奇妙な笑みを浮かべた。まるで思い出しながら自慰をするようであった。
「……見つけたのは小さな魔属の集落だった。粗末な家々、赤子の泣き声、火を焚いて煮炊きしておる者もいたな。それを見た時、我は思い出した。神の御言葉を。『汝、邪なるものに慈悲を与うなかれ。炎と刃こそが正しき罰なり。』―─ゆえに、まずは包囲した。夜を待ち、集落全体に気づかれぬように兵を巡らせた。」
ミラルの手が拳を握る。小さく、だが震えるほど強く。
「そして……どうした。」
「まずは、逃げ場を断った。魔法で道を塞ぎ、燃える枝葉を四方に設けた。そして一斉に踏み込んだ。逃げ惑う声、せめてでも抵抗する愚かな者、怯えた目でこちらを見る雄子、どれもみんな美しかった。恐怖に歪む顔ほど美しい顔はない。特に老人の表情よ。足を切ってなお、怯えて逃げようとしてたので頭をかち割って殺したわい。」
「……そなたは、戦闘があったわけではないと言っておるのか?」
「我が軍からは負傷者一人も出なかったな。抵抗すらなかった。それにしても逃げ惑う顔、そなたにも見せたかったぞ。命乞いをするものもいたが、それは無意味なことだ。存在が罪なのだからな。」
その瞬間だった。
「──ふざけるなッ!!!」
ミラル王女が、椅子を蹴って立ち上がった。若い声が、天幕を裂くように響いた。
「そなたは今、罪なき者らを嬲り殺したことを誇っておるのか!? 泣き叫ぶ者を“美しい”とな……!? ただ逃げるだけの者を嬲り、赤子を斬り、呻く者の声を楽しみ、妊婦の命すらもてあそぶ……ッ!!そちの神とやらは、そんなにも血を好むというのか!」ミラルは怒りの涙を抱えながら叫んだ。それに対し、ゼクスシアは冷たい目で見返す。
「そなたこそ分からんものよ。我の神は血を好むのではない。贖罪を好むのじゃよ。血や命はそれの副産物に過ぎぬ。それに、そなたの祖父は、この事を良しとしておったぞ。やはり王によって狂わされたのではないか……?」
「妾の父上まで侮辱するか!?」
「そうだ!神の御言葉に我は従い、祖父もそれを支持しておった!魔属の存在を認めぬことこそ、この国の安寧の柱だったはずだ! それを……貴様の父と貴様とで、踏みにじって何が王家だ!」
「妾はそんな"伝統"に従うつもりは毛頭ない!時間とともに、国は変わる!人も変わる!昨日の間違いが、今日の正しいになる可能性もある。過去の王族が間違ったことをした、というつもりはない。当時はそれが正しかったのであろう。だが、今は違う!排除ではなく、共生が必要なのじゃ!過去の間違いを正すのが、真の王家の務めじゃ! 間違いに気付かず突き進むだけならば、もはや王でもなければ人でもない!」
「黙れ、小娘がッ!! 貴様が“共生”だの“正義”だのと口にするか?その舌が、いずれこの国を滅ぼす!魔属は数百年、数千年生きる!人とは違うのだぞ!」
「滅ぼすのは貴様じゃ! 魔属であれ人であれ、ただ“生きていただけ”の者を屠り、それを“神の御言葉”と笑って済ませる貴様の存在こそが、この国の毒じゃ!!」
「神の意志を“毒”と抜かすか──!」
ゼクスシアの手には剣が握られる。ミラルの手も、腰の短剣に添えられかけていた。
「──やめろッ!」
アルバートが割って入る。その声は、普段の沈着冷静なものとは異なる、明確な怒気を含んだ叫びだった。
「貴様ら、ここは戦場か? 王女と将軍が、天幕の中で血を流してどうする!」
二人の呼吸が乱れ、怒りの熱が空気を灼いていたが、アルバートの腕がゼクスシアの前に立ちふさがる形となり、ようやく、かろうじて武器にまでは至らずに済んだ。
「……ミラル王女、少し下がれ。」
「妾は……」
王女はまだ涙を浮かべていたが、その一歩を退く。ゼクスシアも呼吸に怒気を含んでいたが、アルバートに静止させられた。
「この件は、戦争終了後、父上に報告させていただく。」
「我は、我の正義を貫いたまでよ。おまえらの“偽善”とは違う、正しき道を。」
その言葉に、ゼクスシアは口の端を吊り上げたまま、踵を返す。
「貴様らのやり方で国が潰れぬことを祈っておこう。……まぁ、無駄なことだがな。」
そのまま、背を向けて天幕の外へと消えていった。
静けさが戻った天幕の中。
ミラルは椅子に崩れ落ちるように座り、額に汗をにじませていた。呼吸は乱れ、まだ怒気が滲んでいた。
「……すまぬの、アルバート。妾、つい感情が……」
「構わん。むしろ、よく耐えた。あの男と正面から言い合える者はそうおらぬ。」
アルバートも座りなおし、息をついた。
「……あんな者が……あんな者が、堂々と軍を率いておるなど……妾には耐え難いことじゃ……」
アルバートは、王女の前にひざをつき、真っ直ぐに見つめた。
「その怒りを、正義に変えてください。言葉にし、形にし、王の意志として届けるのです。でなければ、未来は変わらぬ。」
「……報告は、父上につたえる。妾が直接、伝える。」
「当然だ。だが、王がどう判断するにせよ、我らは策を練らねばならぬ。ゼクスシアの行動は、今後も続くかもしれん。今回だけでは終わらぬ。」
「……アルバート。妾は、信じたい。どんな者であれ、手を取り合える未来を。」
「……我も、そう信じておるよ。ミラル様。」
王女はうなずいた。
その瞳には、まだ怒りの残火が宿っていたが、それ以上に、未来を見据える強さがあった。
25Yuuta.ver
翌日、昼ごはんを食べていたがなんか、付近の様子がいつもとは違っていた。軍隊全部がピリリとしているような、そんな気がした。
「なにか、あったのか?」
「知らないんですか?」
「かなり話題になってたと思うけど……」
「だって午前中捕虜のお世話してたんだしなぁ。かなり奥の方いってたし。」
「ん。」
「捕虜の方でなんか話してたってのもなかったし。」
「私はソリスと同じとこいってたけど確かになんか話したりはしてたね〜。」
「まぁ、確かにそれなら気づきませんよね。」
「私は弓いじってたけど、かなり色んな人が話してたな〜。」
「で、何が起こったんだ?」
「まぁ、そのうち王女様が話すと思いますので。ただ、喜ばしいことではなく、むしろかなり重いです。」
「そうなのか。」その後待ってると演説が行われると言われたので待った。なんだろう……。
「 ――聞け、皆の者。
我が名はミラル。
クリス王国第一王女として、この戦の只中において皆に語りかける。
……妾は、悲しい。
深く、果てなき悲しみを覚えておる。
今日、ある報告を聞いた。
我らの軍の一翼が、道中にて出会った魔属の小さな集落を、何の前触れもなく、包囲し、焼き払い、老いた者も、幼き者も、容赦なくその命を絶ったと──
戦ではない。ただの鏖殺であったと。
逃げる者を追い、剣を突き立て、火を放ち、嘆きの声を、笑いながら聞いた者がいたと。
それを、誉れと信じる者がいたと。
妾は、それを正義とは思わぬ。
どれほど信仰の名を掲げようと、どれほど過去の因果を語ろうと、殺された者たちは、生きた命であり、何の武器も持たぬ市井の民であった。
戦においては、刃を交えることもあろう。命を落とすことも避けられぬ。
だが、戦の外にある命まで、潰してよい理由にはならぬ。
魔属であろうと、人であろうと、それは等しく生を受けた存在。
ギルド軍には、魔属の者もおる。
このカルベンカルビンの地もまた、魔属の者が暮らし、今も多くが生きておる。
彼らの多くは、妾が生まれる前よりこの地に根を下ろし、畑を耕し、家を建て、家族と笑い合って生きてきた。
それを……ただ“違う種”というだけで、滅ぼして良いと申すか?
“違う神を信じている”というだけで、斬り伏せて良いと申すのか?
ノピリ教には、ノピリ教の正義があろう。
キラ教にも、またキラ教の教えがある。
妾はそれを否定せぬ。それぞれの信仰が、救いとなり、心の拠り所となることも、よく知っておる。
……だがな、信仰を口実に、暴虐を許してはならぬ。
信仰とは、他者を支配するための剣ではなく、己を律するための道であってほしいのじゃ。
妾は王族として、王女として、過去の罪を否定するのではない。
むしろ、理解しておる。
戦いがあり、痛みがあり、憎しみが積み重なった歴史もまた、我らの一部。
……されど、過去に縛られて、未来を焼き尽くしてはならぬ。
妾は、決してこの国を過ちに導かぬよう、歩んでまいりたい。
どの者であれ、守るべき者ならば、妾は守る。
救える者ならば、妾は救う。
それが、クリス王国の王家に生まれた者としての、妾の責務と信じておる。
願わくば──刃を向ける前に、見つめてほしいのじゃ。
その者が本当に敵かどうかを。
その者が本当に、殺すべき存在かどうかを。
敵を討つは易し。
赦すは難し。
けれど、赦すことを学ばぬ者に、真の勝利など訪れぬ。
妾は、血に染まらぬ未来を望む。
その未来を、皆と共に築けると信じておる。
王女として、軍の一員として、そして……ただ一人の者として──この戦に、心を失わぬよう、祈るばかりじゃ。
……聞いてくれて、礼を申す。」……ミラルがそう言うと、みんな哀悼の意を示した。……そんなことがあったのか。知らんかったな……。ご冥福をお祈り申し上げます。
「……」ナサールは一際黙って祈りを捧げていた。当事者にしか分からぬこともあるのだろう。
演説が終わり、昼飯を食べ終わり別の仕事、刀練習や捕虜のお世話に出かけたがザワザワとした声が響いた。やっぱりなぁ……色々センシティブな問題だし宗教なども絡まった七面倒臭い問題だし話題にはなりやすいのかな。
「なぁ、鏖殺のことどう思う?」
「許せないことしたと思うよー。」
「さすがにやっていい事と悪いことがあるよな。」
「もしかして私達も危なかったりする?」
「さぁな。」
「そこは大丈夫だろ。うちのギルドが守ってくれる。」
「そっか。」様々な鏖殺についての話がそこら中で聞こえていた。
「なんかいっぱい話してるなぁ。」独り言を呟いてると近くに水色の布をつけた人が来た。……ノピリ教か、まぁ、別にどうでもいいけど。
「……なぁ。」
「ん?なんだ。」
「……お前さ、ギルドなんだよな。」
「まぁ。そうだけど。」
「話聞いてくれるか?」
「分かった。」なんだ?
「……俺、ノピリ教なんだよ。戦争が始まるまでは、それが当たり前のように正しいことだと思っていた。魔属は悪で、それを加虐するのがいいと思っていた。」
「……でも、今回の戦争で分からなくなった。俺も何人か殺したが、同時に命の危機を味方の魔属によって助けられたこともある。そして今回の鏖殺だ。俺は……鏖殺はさすがにと、同情心が芽生えてしまった。ノピリ教の仲間には話せない……話したら多分変人だと思われる。なぁ、俺はどうしたらいいんだ?」……そう来たか。
「う〜ん。僕も言葉下手だからあまりいいことは言えないぞ。」
「それでもいい。」
「……変人なんかじゃないと思う。むしろ、戦争って命のやり取りだからなぁ。それらをやって見たら色々見えてくることもあるだろう。特にノピリ教ってことは魔属はほとんど目で見たこと無かったんだろ?」
「まぁ、そうだな。ここに参加するまで、魔属の人は見たこと無かった。」
「なら、見た事で変わったこととかあるんだろう。僕も、色々あって最近までは人間以外の種族は見たこと無かった。それでも、ギルドに来て、色んな人を見てきた。魔属はチームメイトにいるし、獣人族もエルフも、助け合って過ごしているのを見てきたし一緒にやってきた。中には魔属が店を開いてたり、一緒に働いてる人だっている。そりゃあ、今は混乱するだろう。信仰と現実の違いを見て板挟みになっちゃうこともあるだろうし。ただ、もっと見て、正確にどうなるか分かってから抜けるのもいいと思う。教えを捨てることは、正直辛いと思うし、今、教えを捨てなくてもいいとは思う。ただ、正直に考えて、自分の道を進めばいいと思う。」
「ノピリ教の人には伝えなくていいと思う。あいつらの道も間違ってるとは言わないけど、違うことを話すと色々混乱が広がるしな。それでも、もし話したいなら僕に話してくれ、話さなくて潰れるよりはマシだ。」
「そっか。……名前は?」
「湧太。東川湧太だ。」
「俺はカーベヴァル。よろしくな。」
「あぁ。」僕ら2人はその後握手をした。そのあとも刀の練習をしてたが、やっぱり簡単には収まらんようでそこら中で話してた。心配になるもの、ゼクスシアは正しいことをしたと盛り上がるもの。いつかは自分も同じ目に会うかもしれないと言って暴動を起こしかねないほど緊迫する街の人たちと、ギルドとキラ教がいる限りそんなことはさせないと言う者。その日はザワつくばかりだった。
25
2日3日経ってかなり落ち着いてきた頃、次に攻める街の情報が演説によって明かされた。
「――諸君。
我々は、いくつもの血と汗の戦場を越え、ここカルベンカルビンまで辿り着いた。
それぞれが異なる信念を持ち、異なる旗の下に生きてきたにもかかわらず、この地では共に剣を取り、盾を掲げてきた。
この戦は容易ではない。敵は数を擁し、地の利を持ち、信仰と憎しみにも似た忠誠心で武装している。
だが、我々はそれを乗り越え、都市を取り戻してきた。生き延び、守り、進んできた。
そして――次なる標的を伝える時が来た。
次に我々が攻めるのは、カナルビア。
豊かな森林に囲まれ、厚い石壁と魔法障壁で守られた要塞都市だ。軍勢は少なくとも五千、しかし緊張状態にある今、他の都市から練度の高い兵が流れ込んでくることは間違いない。
つまり、我々は“数では勝るかもしれないが、戦術と戦意では五分以上”の戦を仕掛けねばならぬということだ。
カナルビアの壁は固い。魔法障壁も完備され、正面からの攻撃ではまず崩せぬ。
だが、敵の要害を奪う方法は、力のみではない。我々には多様な仲間がいる。
森を使う者、影に生きる者、言葉を操る者、信仰をもって傷を癒やす者――それぞれの力が必要だ。
私は言う。
この戦いはただの「制圧」ではない。
人の心と、未来を奪うのか、それとも取り戻すのか。
それが問われている戦いだ。
カナルビアには、市民もいる。逃げ場のない人々が、ただ震えて我々の足音を待っている。
我々の進軍が、ただの虐殺となるのか。それとも未来のための希望となるのか。
――それを決めるのは我々一人一人の行動だ。
私は命じる。
力は使え。ただし、意味のない破壊には使うな。
敵は倒せ。ただし、民は守れ。
奪うな。壊すな。恐れさせるな。
勝利の先に、国があり、平和がある。
そのために、我々は刃を持っている。
これは力の誇示ではない、信念の証明だ。
森の中に沈むその都市――カナルビアを、
我らの信じる正義と誇りでもって、必ずや陥とそう。
――諸君の勇気に、感謝する。全軍、準備に入れ!」
そのあと僕らは別れて準備をし、翌日から準備をして進んで行った。森の中ということもあり、だいぶ長い行軍列だったので不安になったが、まぁ大丈夫そうだった。そうして深夜カナルビアに到着したが目の前には兵を表す火が沢山いた……。大丈夫か?
「兵が多いな……」
「まぁ。こちらも言われたことをやりましょう。そうすれば何とかなる可能性があります。」
「そうだな。」そういい僕らは進軍中に言われた事をやりだした。まず夜中なので移動が見にくいこともあり一旦森の中に戻り、軍隊事に四手に別れた。僕らギルド軍はこのまま東を、ノピリ教軍とヴァンデルヒ軍は南へ、キラ教軍と雑多軍は北に、近衛軍は西に行き包囲しながらジリジリ詰めていく、詰めていく時間は日の出とともにとなっていた。なのでそこまで待った。
「突撃!」日が登り、僕らは一斉に武器を持って走り出した。数こそこちらが有利なのは変わらないが一番の相手の数の多さは一番多いと思われ、しかも前は敵、後ろは森に囲まれているのもあってかなり狭くきつい場所で戦うことになった。これ、本当に勝てるのか?そう思いながら戦いを進めて行った。
「こんなところ攻めるなんてお前らも相当苦労しとるんだな。」
「まぁ、僕は知らないが、ここから先を攻めたくて必死なんだろうさ……!」
「そうかよ!」そのあと僕らは敵味方入り交じった戦闘を行った。何人も何人も味方と共に戦っては殺したり……捕虜にして衛生兵に渡したりしたけど……これ恐らく今までの戦争の中では最高人数じゃないか?後ろでは火や雷の矢が数多く放たれているけど、壁は魔障が貼られているのか全くと言っていいほど通してくれないし、人の方には多少効果はあるものの、どんどん人が来るのでそれに対応するのも難しくだんだん、ほんとにゆっくりとしか攻めることが出来なかった。というかこれ、攻められてるか?前に後ろに移動しまくって今どうなってるかも分からない……。日もいつの間にか沈み出してるし、勝つとしても長期戦は勘弁して欲しいんだが。死体も山ほどみたし
「なかなか諦めないな。」
「撤退と言われない限りはこっちも退却できないんだよな。それよりすごいな、数。」
「偵察が来たんでな。疎かにして相手をやすやすこの街に占領させる訳には行かないわ。何しろここは防御に適してるからな!」
「なら尚更攻めてどうにかゲットしたいな!」そのあとさらに戦ったが1日近く戦っても全く進展がなく、むしろ逆効果だったのだろう。「退却!退却せよ!」という声が聞こえたので僕らはさっと退却し始めた。
「さすがに無理があったのかな。」退却の途中で僕はソリスと合流することが出来た。
「まぁ、ざっと見た感じ3万から4万はいましたからね。力差であれば適うはずはないですよ。」
「そうか。ところでルーナカミはどこ行ったんだ?」
「さぁ、まぁ、恐らくどこかにいるんでしょう。」
「あ、いた!」ルーナカミはそういうとこっちの方に走ってきた。腕の方に擦り傷あるけどまぁ、どっかで転んでできたほどの擦り傷だしここじゃ後回しにされるな。
「お!いたな。マレもいるけど捕虜運ばせながら回復させてる最中か。話さないでおこう。」
「そだね。」僕らはそのあと3人で退却していった。アリシアも道中に見たが、退却してる中、追いつかれないように弓でそれらを妨害して、最終的に殿となって帰ると思われるため、そのままにしといた。ナサールは……まぁ、大丈夫だろう。あのナサールだ。僕らはそう思いながら立ち去っていった。
26
カナルビア戦に負けて3日、僕らはカルベンカルビンに戻っていた。ナサールは肩に矢が刺さった状態で帰っていたが体調や怪我の異常はなく、抜いて多少回復魔法をかけてもらいながら数日安静にしてたら治った。この戦での初めての敗戦ということによりみんな不安がり、更にカルベンカルビンもこの前のノピリ教の鏖殺がここの庶民に届いたこととカナルビア戦によるほとんどの主力が居なくなったことにより、解放運動が進み、それを殺さないように何とか残った一部の軍が抑えているという感じだった。そこでみんなは一旦戦争をやめて、できるだけ平和に、死傷者を抑えながらの解放運動を止めるためのことを行った。ミラル王女もカルベンカルビンの中心部にひとりで立ち、演説を行った。
「皆の者――このたびは妾の声を聞いてくれて、まことにありがとうなのじゃ。
まず最初に、妾は、妾たち王家がこの地を守ると誓った者として、そしてお主らと同じ「人として」生きる一人として、謝らねばならぬのじゃ。
……あの集落で起きたこと、ノピリ教の軍勢が、何の抵抗もせぬ者たちを……魔属の民を鏖にしたという報せは、すでに妾の耳にも届いておる。老いた者も、幼き者も、命の叫びも届かぬまま、土に伏したと聞いておる。なんと痛ましいことか……。
妾は、そのような暴虐を決して許さぬ。たとえ同じ軍にあろうと、いや、むしろ同じ陣営であればこそ、見過ごしてはならぬのじゃ。
じゃが、皆の者に知ってほしいことがあるのじゃ。
あれは――あれだけは、妾たち全軍の意志ではなかった。キラ教の軍も、ギルド軍も、近衛軍も、誰もあのような行為を望んではおらぬ。むしろ、共に怒り、共に悲しんでおる。キラ教は命の尊さを重んじる教えであり、ギルドは「救える者を誰でも救う」ことを信念としておる。そして、妾が率いる近衛軍もまた、人も魔属も等しく命を尊ぶのじゃ。
どうか、恐れないでほしいのじゃ。すべての軍が、すべての兵が、お主らを襲うわけではない。妾たちはこのカルベンカルビンの地に住まう者を敵とは思っておらぬ。むしろ、共に歩み、共に生きる仲間と思っておるのじゃ。
妾は、お主ら魔属を、決して「間違った存在」とは思っておらぬ。過去にそう教えられてきた者もおるじゃろうが――時代は変わるのじゃ。信じていたことが揺らぐことは、誰にとっても怖いことじゃ。じゃがな、勇気を持って見つめ直し、間違いを正すこと、それこそが「王家の務め」であり、「人としての誇り」なのじゃ。
妾は言うぞ。
過去の王が信じた道をすべて否定するつもりはない。当時は、それが最良と思われたのであろう。じゃが、今は違う。今を生きる我らには、今の「正しさ」がある。妾はそんな"伝統"に従うつもりは毛頭ない!
時間とともに、国は変わる!人も変わる!昨日の間違いが、今日の正しいになる可能性もある。
排除ではなく、共生が必要なのじゃ!
過去の間違いを正すのが、真の王家の務めじゃ!
間違いに気付かず突き進むだけならば、もはや王でもなければ人でもない!
妾は、この地に再び剣を向けぬと誓う。妾の軍は、決して民を踏みにじらぬ。武を向けるのは、妾たちの命を狙う者たち、無辜を踏みにじる者たちのみじゃ。
カルベンカルビンの皆――どうか、もう少しだけ信じてくれぬか。妾たちを、信じて、共に歩んでくれぬか。
それがかなわぬとしても、どうか、恐れぬでほしいのじゃ。妾たちの剣は、決してお主らに向けぬと、ここに誓う。
お主らの声は、届いておる。悲しみも、怒りも、ちゃんと届いておるのじゃ。ゆえに、妾はここに立っておる。
妾はこの地を守る。民を守る。人も魔属も、関わりなき者も、命ある者すべてを、妾は守る。
それが、王家の務め。妾の誇りなのじゃ!
……ありがとう。どうか皆、心を強く持ってくれ。妾は、お主らの味方じゃ。」
これらと共に暴動は多少なりとも収まった。魔属に頭を下げてお願いをするなど無意味、言語道断だという意見も見受けられたらしいのだが、逆の立場になって考えてみろ。魔属を抜いて人として考えてみろと言って何とか鉾をおさめたらしい。
一方、初の敗戦となった僕らの軍は、意外としょんぼりとかはしていなかった。歴史上勝っててもそのうちでは負けた試合なんぞいくらでもある。むしろ負けなかったら邁進して士気が低下する可能性の方が多いのだから負けた方が良かったかもしれぬ。と演説者はプラスに考えている感じだった。




