5-1Comment enfermer le diable
1
「またいない!」
朝、アリシアの大声で目が覚めた。なんだ?
「なんですか?」
「ん?」
「なに?」
「どうしたの?」僕らはそう言いながらナサールの部屋の前に来た。みんなまだ寝巻きだな。
「いや、今回私1番手に起きたから起こそうと思ってさ、ナサールの部屋行ったんだよ。そしたら、またこの手紙残してどっか行っちゃってるの。」アリシアはそう言うとナサールの机の上にある羊皮紙で書かれた手紙を取った。
「……なるほどですか。羽根ペンとインク貸してくれない?って言われた時には分かりませんでしたけど、こういうことだったんですね。」
「羊皮紙も途中で買ってたしね〜。」
「どうする?」
「う〜ん。」
「そもそも宛はあるのか?」
「宛はあるけど行けるツテがないからね〜。リルルに聞けば何とか場所もわかるとは思うけど。」
「となると……リルルが話してくれるのかはまた別の問題ですし。」
「まぁ、聞かなきゃ始まんないし聞いてみるか。」
「だね〜!」そのあと僕らは外に出た。そもそも昨日朝飯買うの忘れてたしな〜。途中でサンドイッチ買うか。
「あら、アリシアさん。お久しぶりです……?あれ?ナーちゃんは?」
「これです。」ソリスはそう言うとナサールが書いた手紙を見せて軽い説明をした。
「……なるほどですか。」
「どう?」
「できることならこのまま一緒に冒険したいけどナサールの家が分からない。だから助けて欲しいですか。」
「うん。」
「まぁ、無理だとしても別れの言葉くらいは言いたいしさ。」
「おねが〜い。」
「……わかりました。ただ。少なくともその格好じゃダメですね。長袖に着替えれる準備をしてください。」
「なんで? 」
「事情は後で伝えます。とりあえず長袖でお願いします。」
「了解。まだ長袖おっぱいのサイズ合ってくれるかな。」
「また買い直せばいいのでは?」
「いや〜。背も高いしおっぱいもおおきいから王都にでも行ってもオーダーメイドにするしかないかな。」
「まぁ、サイズはこっちに黄緑色の紐があるので無理やりサイズ合わせますよ。」そのあと僕らは服屋さんに行って服を色々買った。今は暑いから半袖でもいいのになんでだろう。
「準備出来ました!」
「よろしい。私も店閉めて来ましたので向かいますか。長旅ですよ。」そう言いながらリルル達と馬車に乗った。
「何日の旅程なんだ?」
「半日から15時間は南下してヴァルデルヒ王国に向かいます。その後、ヴァルデルヒ王国から更に7時間は南下してセルカディア砂漠に入ります。セルカディア砂漠からは馬ではなく、ラクダに乗ります。ラクダに乗って5時間、ここでやっとナサールの故郷の魔界の入口、イラガンテ・ルーイバ境に着きますね。そこからは魔馬車で2時間です。」遠いな……。まぁ、頑張るか。
2 Nassar's letter
「まずは心からお詫び申し上げます。この手紙を読んでいる頃には、私はもうここにいないでしょう。色々と言いたいことはあるかもしれませんが、私はアリシアたちと別れることに決めました。
その理由は――私が暴走してしまったからです。アリシアたちは『それでもいい』と言ってくれました。その言葉には本当に救われましたし、私がいなくなった後にまた誰か、それこそ別の魔人を雇うときにも、ぜひその言葉を残しておいてほしいと思います。でも、私には無理でした。今回は幸い死人は出ませんでしたが、次に暴走したとき、死人を出さない保証はどこにもありません。おそらく今回も、誰かが死ぬ一歩手前まで行っていたはずです。だから私は、これ以上アリシアたちと一緒に生きていけないと判断しました。もし一緒にいれば、次はアリシアたちの命を奪ってしまうかもしれないのです。
何も言わずに去る形になってしまったこと、心からごめんなさい。でも、もし私が別れを切り出したとしても、アリシアはきっと引き止めてくれるでしょうし、それを振り切るほどの強さは私にはありませんでした。どうかこの別れを許してください。
最後に、あの村から私を救い出してくれてありがとうございました。もしあのままだったら、私は一生贖罪に苦しみ続けるか、あるいは『贖罪』の名のもとに命を奪われていたでしょう。あれからの短い期間でしたが、本当に幸せでした。
それでは、お元気で。たまに思い出して、後にチームに加わる魔人たちに、『かつて馬鹿な魔人と一緒にギルドを組んでいた』と伝えてください。どうかお幸せに。
3
その道筋通りに魔界の入口に向かっていった。アリシアが重すぎてラクダが少々遅くなったり相変わらずの魔界の重力に苦労したとかあるけど……寒いな。
「寒いね〜。長袖確かに着てよかったよ。」
「まぁ、この季節ここら辺は秋から冬になり始めてますし、魔界はそもそも、人間界より大分寒いんです。」
「そして、これが魔馬か……かなりデカイな。馬の倍近くあるじゃん。筋骨隆々だし。」
「そうですね。この重力に耐えるためにこんな姿になったんだと思います。私も昔見た事はあるんですけど気性が荒くて中々扱うのも難しいんですよね。」
「そうですね。」そのあとリルルは馬車の主人と少し話し、馬車に乗った。
「みんなもどうぞ。」そう言ったので僕らも馬車に乗った。内部は……クッションがきいてるな。重力が強いからそこら辺大事なんだろう。
「行きますよ!」その瞬間馬車が出発した。速い速い!今までの馬車も現実の馬車と比べて異次元のような速さだったが、こいつはそれを更に上回る速さだ。めちゃくちゃ揺れるな。乗り物酔いしなくて良かった。
「速いな。」
「そうだね〜。」
「まぁ、魔馬はそもそもこっちの馬何体分も力ありますからね。一体でこちらの早馬以上の速さが出ますよ。」となると大変だなこりゃ。多分木の車輪ここまで早く走る想定してるか?まぁ、成り立ってるということは想定してんだろうな。そう思いながら馬車に乗って2時間、村から少しだけ離れた、2件の家がポツンと崖際にたっている家の前に着いた。
「ここが、ナサールの家です。隣が、私達の家です。」そう言うとリルルは主人と話した。
「ルナシェスでもいいらしいですよ。5000ルナシェスらしいです。」
「あ、はい。」そう言うとソリスはお金を渡し、降りた。僕らもゆっくりと降り、黒い屋根のナサールの家の前まで来た。さて、出てくれるのか……。
「私は先に実家戻ってます。終わったら入って構いませんよ。ちょうど今部屋も空いてますし。」リルルはそう言うと隣の赤い屋根の家に入った。
「それじゃあノックするね。」アリシアはそう言うと3回ノックした。少し待つとドアが開き、1人の龍人族の老人がでてきた。
「?ウバカラーヤ?」
「えーと、アイ、ソリス。ナサールプロニクス。ナサールタイマール?」ソリスがそう言うと老人は頷き「ナサール!」と呼んだ。
「……ん? なんでここにいるの?」ナサールはパジャマのような服を着ながら階段をおりてきた。良かった。ちゃんと居た。
「そりゃ、何も言わずに手紙だけ置いていったら、来るでしょ。」
「……はぁ。手紙を見たなら事情はわかるはず。私は殺したくなんかないんだよ。」
「私はナサールになら、殺されても構わないよ!」
「そういうことじゃなくて!」
「なら、殺さずに済む方法を探せばいいんじゃねーか?」
「殺さずに済む方法もあるけど。今回のことで、もう罪悪感が押し寄せてきて……」
「それは仕方ないよ。寝ている間に誘拐されて、無理やり機械で解放されるなんて、誰も予想できないんだから。」
「一度来たとはいえね〜。」
「そうそう! だからお願い、戻ってきて――」
「怖いの!」
「何が?」
「力が…今回のことで分かったんだ。私には、人を殺せる力があるって。暴走しなくても、ふとした拍子に誰かを殺してしまうかもしれない。そう思ったら急に怖くなって……。だから、もう家に引きこもるしかない。これはアリシアたちが殺されてもいいとかいう話じゃない。ごめん、ここまで来て悪いけど、戻れないよ。だから、さよなら。」ナサールはそう言うと階段を駆け上がった。これは……長くかかりそうだな。そう思いながらリルルの家に入った。中には母親と思わしき人と父親と思わしき人、リルルとそれに似た人がいた。
「どうでした?」
「ん〜。難しいね〜。あ、初めまして。リルルのお友達のアリシアです。よろしくお願いしま〜す。」アリシアはそう言いながら椅子にどかって座った。アリシアの体重に、魔界の重力が乗っかって偉いことになってそう……。
「はぁ……。」
「よろしく……」
「お願いします。」そのあとソリスが謝ったりして一旦ラルルという姉妹が生活してた部屋(今ラルル達は親元を離れて働いてるらしい)に泊まらせてもらえることになった。と言っても空いてる部屋は3部屋だから女性組は2人で1部屋になったけど。それにしても……ただ立ってるだけで相当疲れるな……。魔界の重力慣れないや。
「さて、これからどうしようかな……。」正直いって分かるんだよな。力で人殺しちゃうっての。分かったら急に怖くなるもんなんだよな。
「入っていい?」
「いいぞ〜。」アリシアの声が聞こえたので答えるとアリシアが入ってきた。
「ふ〜。」
「おつかれ。」
「ん〜。疲れた。」
「だよな。この世界、重いもん。」
「ん!ただでさえおっぱいかなり重いのにさ〜、さらに重くなって大変だよ。いくら怪力だと言ってもおっとっとってなっちゃうよ。こりゃあまり長居は出来ないかな。」
「でもここで筋トレやれば力はつくんじゃないか?」
「かもね。って、こんなこと話してる場合じゃなかったね。」
「あぁ……」
「さて、どうしよっか。」
「ナサール、強情だもんな。」
「ん。怖いって気持ち、私はよく分からないんだけどさ、湧太は分かった?」
「まぁな。虫飼う時に虫かご入れるよな。」
「うん。少なくとも放し飼いはしないね。」
「それだよ。なんで放し飼いをしないのかってことは、踏んだりしたら死んでしまうってことがわかってるんだよ。だからそうしないように放し飼いをしないわけ。踏んだら死ぬのわかってるからな。でも人間はそういうことが出来ない、だから離れるしかないんだよ。しかも怖いまでついてきちゃあな。」
「ん〜。まぁ、わかったよ。ソリスにもどうしたらいいのか聞いてみるね。あ、そうそう。最後にひとつ聞いてもいい?」
「ん?なんだ?」
「ナサールと、一緒にいたい?」
「まぁ、な。僕はそう思う。」
「ありがとう。それじゃあーね。」アリシアはそう言うとよろけるように立ち上がり帰って行った。やっぱり色々大変なんだな。その後はご飯を食べた。魔界文化のご飯食べたことないから一体どんなご飯が出てくるか分からなかったがグラタンがでてきた。食事器具が包丁というよりは斧みたいな感じだったからどうなるか不安だったが、美味しいな。
「美味しい!おかわりもらえます?」
「えぇ。まぁ、分かりました。」
「すいませんね。夕飯までご馳走してもらって。」
「人間のお友達連れてくることなんてないですからね。張り切っちゃいました。」
その後も談笑しながら楽しみ、お風呂に入った。どうやら魔界にもシャワーがない、というか、文明レベル的にシャワーがないので、おけでシャワー代わりにした。そのあと寝た。
4Nassar ver.
……はぁ。なんであそこまでして取り戻したいんだろう。そりゃ、私だって本当は離れたくなかったよ。それでも、離れなきゃいけない。人を傷つけ、殺さないためには……。
「……い!おーい!」なに?……え?
「あ!ナサール!気づいた!こっちこっち!」え〜。屋根昇ってる……どこから?私が言うのもなんだけど魔人ならともかく、人間が登るのは相当難しいんじゃ?
「もう!こないの?なら私が行くよ!」
「わかった……いくから。」ほ……っと。
「ありがとう。」
「どうやってきたの?」
「夜中に目覚めたらナサールが屋根昇ってるのみえたから精霊魔法で自分の体浮かせたの。」
「へぇ……。」
「それにしても、ここの夜って大分月が明るいね。3個もあるし。」
「ん。1番大きいのが、大月、次に大きいのがゆっくり回るから緩月、いちばん小さいのが緋月。この3つが、こっちの月なの。」
「色も真っ赤だったりで綺麗だし、こっちの月もいいね。」
「うん……。ところで、そんな世間話するためにここに昇ったわけじゃないんでしょ。」
「うん。……で……戻ってくる気……ある?」
「……はぁ。言ったでしょ。暴走して、人、傷つけるのが怖いって。だから私はあなたと一緒には、居られない。」
「うん。でも、少し考えたり、ソリスと話したりして。こっちもわかったよ。怖がる理由。危険だと思った理由も分かった。」
「なら――。」
「それでも、一緒にいたいの。暴走しない道も一緒に探す。それでも暴走しちゃったら何度だって殺す前に止める。」
「なんで……そこまで付き合うの。」
「当たり前でしょ。あの村で、ナサールは死んだような目をしてた。喜びがない、そんな毎日を過ごしてた。それを見て、私は、あなたと一緒に旅をしたいと思った。それは今も変わらない。何があろうと、私は、あなたと一緒に旅がしたい。」アリシアは澄んだ目で見てきた。……苦手。
「はぁ……。無理だよ。私は、あなたを傷つけた。それに、多分これからも、傷つける。茨の道を好んで進む馬鹿はいないよ。」
「分かってる。でも、あなたとなら茨の道でも地獄の道でも、私は構わない。馬鹿にだってなってやる」
「アリシアが良くても、ソリス達が。」
「そう言うと思って聞いてきた。みんな、いいってさ。特にソリスは、どんなことになろうとも、ナサールと一緒にいる。それがギルドです。と、言ってた。」
「なんで……そこまで。」
「当たり前でしょ!ギルドだよ!仲間だよ!仲間の不祥事はみんなで責任取る。仲間の嬉しいことはみんなで共有して喜ぶ。それがギルド、簡単なことだよ。」
「それでも……私は、許されない行為をした。仲間を傷つけた。」
「それは許すよ。許す許さないはされた人が決めるんだよ。私わが許すって言ったから許すんだよ。」あぁ……もう意味わからない。
「ギルドだからってどんなことも……許すの?私が、殺しかけたことも?」
「だからそうだよ。殺しかけても許すし、暴走しないように、どういうのがいいか、こっちだって本で調べるし、協力もする。なんだってするよ。茨の道も、馬鹿と言われても、構わない。」
「……分かった。ちょっと考えさして。明日、話す。」……ここまで言われちゃ……もうわかんないよ。
「分かった。それじゃあ。」アリシア……どうやって降りるの?と思ったら窓の位置把握して屋根掴んでパッと入っちゃった。窓全開にしてて良かったけど……かなり機敏だね。……さて、どうしよう……。
5 Yuuta.ver
朝か……、体が重い。結局熟睡は出来なかったな。重力差ってのもあって頭も貧血だ。……着替えるか。
「おはよ!」着替え終わるとアリシアがドアを開けた。相変わらず元気だな……。
「あぁ、おはよ。」
「昨日の深夜ちょっとナサールと話してきた。」
「おう。どうだった?」
「まだよく分からないから考えさしてだってさ。今日話してくれるらしいよ。」
「おぉ。まぁ、待つか。」そのあと僕らは朝ごはんを食べた。そのあと歯を磨いたりしてると、コンコンというノックの音が聞こえ、ドアを開けるとナサールがいた。
「お、ナサールか。どうかしたか?」
「……ん。ちょっと、みんな、来てもらってもいい?」ナサールがそう言ったので僕らはナサールの前に集まった。
「……。……。あ、あのさ、……昨日、はごめん。」
「大丈夫だよ。」
「……これからも、いっぱい迷惑かける。苦痛かもしれない。茨の道になるかもしれない。暴走して、怪我負わしたり、殺すかもしれない。正直、怖いのは変わらない。それでも、本当に一緒にいていいの?」
「もちろん。」
「えぇ。」
「ん!」
「そうじゃなかったらここまで来てないからな。」
「……ん。分かった。ほんと、強情なんだね。」ナサールはそう言いながらアリシアに抱きついた。よく見えないけど……声的に多分泣いてるな。
「お〜よしよし。大丈夫。ナサールの味方だよ。」そのまま10分くらいたっただろうか。泣き終わったあと離れた。
「……ちょっとひぃおじいちゃんに聞いてみたの。」
「なにがです?」
「悪魔を暴走させない方法、普通は慣らしていくのが得策だけど、それだと、結構な時間と体力を使う、もっといいのがあるけど負ける可能性が高いのがあるらしい。」
「そうなんだね〜。」
「詳しくは、ひぃおじいちゃんから聞いて。家で待ってる。」
「分かった〜。」
「分かりました。聞いていきましょうか。」そのあと僕らはナサールの家に入った。
「こんにちは。」
「おう。そっちの言葉話せるから安心して話せ。」
「それで、暴走をさせない方法とはなんですか?」ソリスが率直に聞いた。
「そなたら、『ルーイ・ナイガ』って知ってるか?」
「いや?」
「特に知らないな。」
「ね〜。」
「聞いたこともないや。」
「私は少し……といっても名前だけでどんなものなのかは知りませんけど。」
「そうか。こちらの言葉でいうと、分離の滝という意味じゃ。」
「分離の滝?」
「あぁ。昔から色んな人が活用していてな。この滝を数分浴びると、人格が分裂するんじゃよ。主に悪魔と戦ってぶん殴ってどうにかこの後の解放を上手く扱えるようにする滝じゃな。無論、負けたら結構なリスクがある。実際、飲み込まれて血ふいて死んでしまったり、仲間ごと自分自身を殺されたりされたこともあると聞かされた。厳しい道であることには違いない。正直、時間を除いたら、徐々に慣れていったほうがいいと思うが、それでも良ければ、そこまで連れていくぞ。勿論、近くの街から馬車を走らすだけだがな。お金くらいは、支払うぞ。」
「ほんと?」
「あぁ。ただ、正直、おすすめはしない。大抵の魔人は、分裂した悪魔の方が強いからのう。しかも、分裂している間は、一切悪魔が使えない。それでもいいかな?」
「まぁ、それでも。」
「いいですよ。」
「私たちはどうするの?」
「そこまでは知らないのう。わしも他人から聞かされてるものを、そのまま話してるだけだし、大抵こういうのは1人でやるのがほとんどだからのう。観客席みたいなものが置いてあるならともかく、そうじゃない限りはナサールを1人にするのが、1番いいじゃろう。」
「ん。分かった。」
「ゴーゴー!」
「それなら、できる所まで着いてくよ。」
「よし。了承も取れたことだし、そうと決まれば出発じゃのう。」ナサールのひぃおじいさんはそう言うと家を出て歩き出した。それについて行きながら10分ほど歩くと、魔界の村に到着した。
「なぁ。なんか見られてる気がするが気のせいか?」
「うんうん。気のせいじゃないよ。」
「そりゃ、この村に人間が来るなんて滅多にない事だからな。物珍しいんじゃよ。許してやってくれ。」
「まぁ、悪い気はしないね〜。」
「マレはそれで大丈夫なのか?」僕はマレに尋ねた。マレはアリシアの肩に座っていた。
「まぁ、ここ、あっちと違って重いから空飛べないしね。大人しく誰かの肩に乗っかるのがいいんだよ。出る時は掴んでもらってさ。」
「そうなのか。」そのあと僕らは馬車をみつけ、ひぃおじいさんに見送られながら行ってきた。寸前にナサールとひぃおじいさん場所を聞いてたのかちょっと話してたな。
6
馬車に乗って20分経っただろうか。滝が見えるところに止まった。ナサールは魔界語を話しながらお金を支払った。滝の左右には大きな扉と穴があり、扉の方には幾重にも鎖で厳重な鍵がされていた。
「おぉ!滝だ!」
「それじゃあ、その、着替えるから。」
「あぁ。分かった。」僕はそう言うと後ろの崖を向き目をつぶった。その間に着替えてくれるだろう。
「ん。いいよ。」ナサールがそう言ったので僕は前を向いた。といってもナサールの水着、ほとんど通常の服と変わりないんだよな。
「それじゃあ、お願いね。」
「ん。」ナサールはそう言うと滝に入っていった。数分間滝を浴びただろうか。中から2人のナサールがでてきた。良かった。ちゃんと服は着てる。
「よう。……なるほど分裂したのか。」
「ん。ちょっと、色々あって、暴走するのやめたくて。」
「ほう。そういう事か。」
「こう考えると不思議だな。いつもは暴走して来ないのにああいう時だけ暴走するなんて。」
「まぁ、仕方ないじゃろう。ワシにだって限界がある。それを、この戦いでどっちが主人か分からせるのじゃろう。ワシも本気でいかせてもらうぞ。」
「ん。」
「あれ?こっちは?」アリシアはそう言うと扉の方を指した。
「あ、あまりその扉触れない方がいい。」
「え?なんで?」
「そっち、魔王の部屋。初代のここの大陸の魔王のゴブレットが聖杯となってる場所。魔王継承の器があるのか確かめるために使われるけど、現魔王候補まだ生きてるし、そもそも人間が入ったりしたら、死ぬ。扉触っただけでも、危ない。だから早く、戻って。」
「うん!」アリシアはそう言うと川の中をドプドプすすんで戻った。そのあと僕らは穴の中に入っていった穴の中はちょっと狭めだったが200mほど進むと、分かれ道が存在しており、そこから更に100mは進むと内部に火のついた大きなコロシアムのようなものがあった。上には隔離された観客席のようなものもあり、恐らく、僕らはそこに行くんだろう。
「おお〜。」
「広いですね。」
「そだね〜。」
「ん。」
「まぁ、このくらい広くないと充分に戦えないからな。」
「僕らは……あそこに行ってみるよ。」
「ん。」
「さて、ソリスよ。そちらの準備が出来次第、合図が欲しい。頼めるか?」
「分かりました。」
「それと、今回は2人だけの戦い、手出しも回復もしないで。」
『うん!』そのあと僕らは観客席の所に行った。椅子は無いけど立ち見ならできるな。しかも広いし。上部には半球状のガラスが貼られていた。ソリスとルーナカミはそのガラスに這うようにシールド魔法を貼った。
「準備はいいですか〜!」
「うん!」
「おう!できておる!」
「それでは、開始!」ソリスがそう叫ぶと1瞬で2人は見えなくなった。かと思うと上空でかち合った。その後30分もしただろうか。両者共にかなり疲れがたまったのか、先程より遅くなってきた。そしてついに悪魔じゃない方のナサールが地面に倒れた。
「ほら、まだいけるじゃろ?」
「……ん。」だがその後もすぐ起き上がり激戦が続いた。最終的には両方ともボコボコになりながら戦い悪魔じゃない方のナサールが悪魔の方のナサールを吹き飛ばして両方とも共倒れになったところで終わった。……大丈夫か?
「おい!」
「大丈夫?」そのあと僕らは一旦分かれ道に戻り、もう1回コロシアムに入った。
「……どっちが勝った。」死にかけたような声であくまじゃないナサールは尋ねた。悪魔の方のナサールは立ち上がらなく、ずっと気絶をしていた。
「どうやら、かったらしいね。」
「そう。ペッ。」ナサールは少量の血を吐きながら言った。
「どうする?回復いる?」
「いや、あっちのナサールが目覚めるまでやめといて、合体する前に2人を回復すればいいと思うし、それと、起きるまではまだ勝ちか分からないし。」ナサールはゴロンと仰向けになった。こうして近くで見てみると、顔は腫れてるし、左腕は折れてるし体の至る所に痣や裂傷できてるな。……ほんとに大丈夫か?
「でも……いいの?傷だらけだよ。」
「うん……」そのまま少し経つと悪魔の方のナサールも目覚めた。こっちは裂傷は無いけど代わりに痣がいっぱいあるな。それとやっぱり右腕が折れてる。
「……いや〜。負けたわい。力はこっちの方が多いと思ったから行けると思っちゃったんだがのう。回復頼むわい。」
「OK!ヒーリラリー・ダブル!」
「いや、多分タッチの差で勝っただけ。手数も力も負けてた。偶然だよ。」
「まぁ、勝ちは勝ちじゃ。これで、暴走することはないじゃろう。」
「そ。なら良かった。」その後は土が血と混じってるところは水で洗い流しながら回復した。今更だけど分身にも回復魔法って効くんだな。
「そういえばどうやって戻るんだ?」
「確かに。ナサール知ってる?」
「ん。もう1回、滝に入ると、戻る。」
「それじゃ戻るとするかの。」
「ん。これからもよろしく。」ナサールはそう言うと悪魔の方のと手を繋ぎ立ち上がった。そのあと僕らはコロシアムから出て滝で2人のナサールが合体した。
「あぁ……戻ってきた。一応テストしていい?」
「うん!」
「いいよ!」
「OK!」
「分かりました。」
「いいよ〜。」
「悪魔・解放」ナサールはそう言うと変身した。暴走は……してないね。
「暴走してないね〜!」
「うん。良かった。」
「近くで見ると分かるけど、結構光沢あるね。」
「あぁ。竜みたいな鱗ついてるからな。」
「なんかかっこいい!」
「そ、そうかな?ん?……どうした?……ふむふむ。なんか、変な技習得してるらしい。」
「変な技?」
「うん。恐らく、あの機械で強制的に解放させられた結果だと思う。名前は子守唄らしい。どうなるかは……分からない。ただ、迂闊に味方に放ってはならないと思うのは確か。」ナサールは自分の体を見回しながら言った。
「それじゃあ、戻るか。」
「竜のしっぽは生えてこないんですね。」
「まぁ、悪魔のしっぽの時から邪魔だったし、さすがに生えてきたら、邪魔でしょ。」
「それもそうだな。」
「ちょっと触ってもいい?」
「ん。いいよ。」アリシアはそう言われると肌を触った。
「ん〜。金属みたいな光沢あるからさ、結構硬いかと思ったんだけど思ったよりは柔らかいね。」
「まぁ、一応肌は竜より人間に近いと思うし。」その後は何回触ったあと、「そろそろ戻るね。」と言って戻った。その後は近くを走ってる空の馬車を捕まえて村まで行き、サンドイッチのような携帯食を食べながらリルルたちの家に戻った。
「おう。」
「おかえりなさい。どうでした。」
「安定できた。」
「それじゃあ、帰るかの?」
「え、いいの?」
「あぁ。そもそもまさか会えるとは思ってなかったのでな。たまには帰ってきてくれ。それだけ守ってくれれば、わしは構わん。」
「うん。」
「じゃあ今日まではご一緒させていただきます。リルルのお母様もそれでよろしいですか?」
「ええ。構いませんよ。」そのあと僕らは家に戻り夕飯の準備を手伝ったりし、お風呂にも入った。
「コンコン」お風呂に入ったあとゆっくりしてると、ノック音が聞こえた。ドアを開けるとナサールがハサミを持って立っていた。
「入ってもいい?」
「いいけど……ハサミ?」
「ん。ソリス。呼んでもらえる?」
「はい?あ、ナサール。どうかしました?」
「うん。ちょっと、頼みたいことがあって、」ナサールはそう言うとソリスにハサミを渡した。
「これは……髪切りハサミですね。」
「うん。……切ってくれない?」
「分かりました。」そう言うとソリスはナサールを風呂場に連れてった。その後紙袋を持って再度入っていった。
「何しに来てたの?」アリシアが部屋からちょこっと顔だけ出して聞いてきた。
「髪ソリスに切って欲しかったんだってさ。」
「髪!?」
「うん。まぁ、あの長い髪切るのはかなり覚悟いるとは思うけどな。」
「決心したのかな?」
「さぁ。」その後かなり待つとナサールが出てきた。その間にマレも来た。ナサールは踝まで伸びる三つ編みツインテールから腰までのかなり上の方でとめているポニーテールになった。随分印象変わったな。
「……ん。ありがとう。」
「いえいえ。」
「お〜!大分変わったね〜。」
「スッキリしてる〜。」
「ん。結構楽になった。もう、あのローブも着ないや。」
「いいの?」
「ん。今までは……逃げてた。もう、変わる。」
「そう。やな事あったら相談してね。」
「分かってる。」その後僕らは寝た。
7
朝ごはんを食べてるともうナサールのひいおじいさんが馬車の用意をしてくれたらしい。早いな……そう思いながら朝ごはんを食べ馬車に乗った。そしてウトナに戻っていったんだがなんかウトナに入ってから露骨に街の空気が変わってたな……。まぁ、重力で楽になったのもあるけどそれはそれとして……何があったんだ?特にナサールやリルルの方見てるし。
「……何かあったのかな。」
「さぁ。」
「とりあえず私は帰りますね。」
「うん!」
『ありがとうございました。』
「いえいえ。」そう言いながらリルルを見送った。さて、本当に何があったんだろう。
「ちょっと新聞買いましょう……号外として売られてますね。すいません。1部ください。」
「あいよ!250ルナシェスだ!」
「わかりました。」その後ソリスは新聞を買った。
「え!?」
「は?」アリシアとソリスは驚いた顔で新聞を見た。なんだ?と思いながら新聞を見た。
「ダーヴェラゴザンヂ、クリス王国に宣戦布告!」……へ?




