4-4 kidnapping Diable, ouverture.
4-4 ki21
朝起きて着替えて朝ごはんを食べ始めた。
「……ナサール遅いね〜。」
「珍しくお寝坊さんなんですかね?」
「かもね〜?」
「アリシアみたいに?」
「ちょっと〜。」
「僕起こしに行こうか?」
「いや。もしかしたら着替えてるだけかもしれないんで私が起こしますよ。」ソリスはそういうとナサールの部屋に行った。
「……居ません。」
「へ?」
「居ないってどういうこと?」
「……これを見てください。」ソリスが息を飲んだようにそう言ったので朝飯を中断してナサールの部屋を覗いた。中にはベットと椅子と机、それと衣装タンスというとても子供部屋とは思えない質素な部屋だったが問題はその机の上。机の上には一枚の紙が置いてあった。
「ナサールは私が預かりました。返す気はないですが、最後にナサールに襲われて死にたいなら、我が城、シャイターン城にお越しください。一瞬の死をお届けいたします。」……
「これって……」
「多分、いや、確実に誘拐です。」
「あぁ。」
「でもなんで?」
「またノピリ教?」
「いや、違うと思います。一瞬の死、そしてナサールに襲われてという文章、恐らくですが悪魔の能力を悪用しようとしているものかと、あいにく……誰かは分かりませんが。」
「……分かるぞ。」
「え?」
「だれ?」ということで僕はこの前襲われた時の真相を話した。あの時は襲われたとしか言ってなかったからな。あの時にちゃんと全てを話していたらどうにかなったのであろうか。
「なるほど……」
「分かりました。とりあえず馬車でこのシャイターン城に向かいましょう。できる限り早馬がいいと思います。朝飯を食べてる時間は無いです。恐らく結構な長旅になりますので。申し訳ありませんがパンに目玉焼きとかのおかずを入れ込んで食べながらいきましょう。」僕らはそれに頷き、即座に挟んで早馬を探した。しかし、早馬は見つけたものの、行きたい場所を言うとみんな拒否してしまった。どうしてだ……。
「あれ?アリシアたちじゃん。ナサール居ないけどどうかした?」早馬を探しているとおそらく仕事に入る前のヨーレが話しかけてきたので僕たちはなんでこんなことになってるのかを話した。
「……そりゃ馬車も拒否するわけだよ。」
「一刻のピンチと伝えてもですか?」
「うん。だってシャイターン城のある場所知ってる?」
「知らない。」
「隣国。ダーヴェラゴザンヂにあるんだよ。そこは原則人間が入ると命の保証は無いから入らない方がいいし、シャイターン城って王がすまう城ではないとしてもかなり上の人が住んでるからね〜。そりゃあ行きたくない訳だもん。」ヨーレはそう言った。どうすればいいんだよ……指くわえてあっちから来るの待ってるんじゃ遅いんだよ。
「じゃあ……」
「今回は緊急事態だし。ギルドの早馬貸してあげるからちょっと着いてきて。」ヨーレがそう言ったのでついて行ってみるとギルドマークが描かれた馬車小屋があった。
「入るね。」
「お。その声はヨーレさんじゃないすか。用事はなかったと思いますが誰かまた行方不明になったんすか?」
「チームメイトの誘拐だね〜。シャイターン城なんだけど。」
「……え。行くんですか?」
「まぁ、その分報酬は弾むからさ〜。」
「仕方ないか。乗れ。」馬車の男は少し悩むとそう言った。良かった……。
「はーい。」そう言うと僕らは馬車に乗った。
「それじゃ行くぞ。2日近くかかるから覚悟しとけ。」
「分かった。」
「うん。」
「分かりました。」
「早く行こうぜ。取り戻すのが一番大事だ。」
「うん!いこいこ!」僕らがそう言うと馬車が走り出した。お願いだから取り戻さしてくれよ。
22 Nassar ver.
ん……んあ?ここ……どこ?
「あら、起こされたのですね?」コントラ?……お城?
「ここは?どこ……。」
「ふむ……ちゃんと捕まえてくることが出来たのか。」その声は……バス。
「バス様。えぇ。」……みんなは?
「どこなの?みんなは?」
「ふむ。よかろう。ここはシャイターン城という。お前は今から我の配下になるのだ。喜ばしいことだろう?」
「……いや。全然」誘拐か……。まぁ、火炙りよりはマシかな。
「仲間は?」
「安心してください。今回はみんな、ぐっすり眠ってましたので、何もしていませんよ。」
「なら、よかった。」
「なんだ。殺さなかったのか。」
「えぇ。さすがに殺したらあっちの騎士団とかがうるさいですからね。」
「まぁ、どうせ来ると思うよ。」
「何言ってるのかしら。」
「まさかね〜。」
「もしかしてあっち達のこと、命知らずのバカだと思ってるのかな?」テル、ミン……ドアは開いてるのね。
「……正直いうと、そうだね。アリシア達こういうことにしては命知らずの大バカ野郎だよ。」
「あらあら。なら、あなたの手によって、精々あの世に送って差し上げましょう。」
「え……どういうこと?」
「アリシア……といったな。アイツらがもし来たら、強制的に悪魔を限界まで引き上げる。それで正気を失ったお前は目の前の獲物に襲いかかる。」
「それでアイツらはおっだぶつおっだぶつ!」
「殺したあなたはこっちの仲間になるしかないって訳!」えぇ……やだよ。
「やだ……やりたくない。」
「やりたくないと言われても、これは強制だ。お前の腕に付けられた器具が強制的に解放させる。諦めなさい。」
「いいじゃないですか。あなたもあっちで散々虐められたでしょ?人間に復讐するいいチャンスですよ。」
「違う……私、復讐したくない。え……」嫌だ……。助けに来て……いや、やっぱり来ないで……。
「ブツブツうるさいですね。まぁ、殺しはしないですし、ちゃんとご飯も与えますのでそこでじっとしておいて下さい。」
23Yuuta.ver
早馬でシャイターン城に向かって2日、やっと眼前に見えてきた。ここまで長かった……。ギルド直接の早馬だから馬車の主人の乗り換えは比較的スムーズに終わらせることが出来たものの、問題は道中だ。馬車の上で寝ることや食べることはナサールに比べたら大丈夫だったがダーヴェラゴザンヂとクリス王国では個室内で裸になってまでの厳しい検査が行われた。渡航目的を聞かれ一瞬焦ったがソリスが「ただの観光です。身分を証明できるものもあります。」といってくれたので助かった。ありがとう。聞いた限りではダーヴェラゴザンヂは一応ナシーダとタシーダの双子が女王を務める王国ではあるものの事実的な傀儡国家であり、ミュジケールのバスが事実的な国王であるらしい。あいつらが事実的な国王かよ……逆らってもいいのか?まぁ、やるしかないか。
「ここがシャイターン城だ……。法律的に馬車はここまでしか行けない。どうする。」
「すぐ救ってきますからここで待っておいて。」
「あぁ。分かった。」そう言うと僕らは馬車から降りた。大体シャイターン城から200m程だろうか。まぁ、ここからなら走っても1分ほどしかかからないと思うから走るか。そう思いながら武器や精霊を用意した。
「ふ〜。……精霊2人目ですか。」
「アリシアの精霊。アルダンテだ。アルダンテ。こっちは俺の刀の精霊、緋刀美だ。」
「よろしくね。」
「それで、どうやって取り戻すんだ?」
「もし来ることを想定してるならここの近くにいるはずです。」
「それであとは何とかする。」
「死をお届けするとか言ってるから回復は多分必須だよね〜。」
「だからマレもそうだけどルーナカミも回復や防御魔法とかお願いね。」
「うん!」そうこう言ってると城の扉の前についた。城の扉は分厚い金属でできており、とてもじゃないが人間の力では開けることは出来なそうだな。
「私がやろうか?」
「いや、精霊力は魔法より魔属に効果あるのでできる限り残しておいてください離れてください!エクスプロージョン!」ソリスがそう言ったので離れると爆発が起き、ドアが城の中に向かってぶっ壊れた。
「今のうちに入っちゃいましょう。」
「うん。」そう言いながら僕らは城の中に入っていった。城は真っ赤な、血のように赤い絨毯が大きな通路一面に敷かれていた。一本道で1階には特に廊下と大広間以外の部屋がなさそうだな。
「あら、2日もたったから来ないかと思いましたわ。」大広間に行くとコントラが2階から伸びる階段の踊場から降りてきていった。
「悪ぃがお前らみたいに空早く飛べるって訳じゃねぇんでな。」
「そんなこと言うより早く返して!」
「あら?忘れたんですか?あなた方にお届けするのは、ナサールではなく、すぐに終わる死ですよ。リン!連れてきなさい。」
「はーい。」リンはそう言うと奥からベットに磔にされたナサールを連れてきた。ナサールの後ろにはバスやヴァイオ、テルにミン、テノールなどがおり、後ろにはやけにこの世界には外れてる機械があった。見た目的にはかなり原始的だけどなんの機械だ?
「ちょっと可愛いナサールに何するつもり?」
「……もしかして。」
「あら、気づいたんですか?」
「何をするの?」
「悪魔の強制解放ですよね。どこかで聞いたことあります。強制的に悪魔を解放させることが出来る機械が存在すると。」
「おや、この機械のこと、ご存知でしたか。」
「生憎本は沢山読んできた方ですので。」
「ヤバくない?伍であれだったんだよ。」
「やばいどころの話では無いですよ。では、」
「に……逃げて……私のことはどうでもいいから……」
「んなわけないじゃん!」アリシアはそう言うと走り出した。その瞬間、テルが機械のレバーを思いっきり下げ、紫色のドロドロしたオーラのようなものがナサールを覆い尽くした。アリシアはその中に手を入れていた。
「ナサール!」
「……どうしますか。バス様。他人の腕が入っても影響はないと思われますが。」
「放っておけ。」
「分かりました。」
「アリシア大丈夫ですか!」
「うん!腕がすごい暖かいしなんかドロドロする感じするけど毒性とかは無いと思う!」そのままどうとも出来ずにいると紫色のオーラがバァン!って感じで破けると同時にアリシアが10数メートル吹き飛ばされた。バス共の服もかなりバサバサしてるし風がものすごい。
「おっとっと……」
「大丈夫か?」
「うん。結構強く吹き飛ばされたけどまぁ、平気かな。それよりも……。」
「ナサール……。」ソリスがそう言ったのでナサールの方を見た。ナサールはなんか肌1面が鱗みたいなやつで覆われており、今までの悪魔とはかなり違う感じがした。
「……うぅぅ。」
「覚ましたか。さぁ……殺せ。」
「……来ますよ。シルディアス。」
「……シルディア・アチーバ。」そう言いながら身構えているとナサールが消えた……と思ったら目に見えない速度ですっ飛んでいった。暴走してる……。というかシールドは?
「もう割れちゃった……?」
「シールドは各個人の周辺に楕円形で貼ったから安心して……」ルーナカミがそう言った瞬間、ナサールに吹き飛ばされた。そのままミンと衝突し壁にシールドごとめり込んだ。ミンは弾き飛ばされ、ルーナカミもかなりの重症を負った……。
「ヒーリラリティア!」
「これ……シールド……ほとんど……意味無い。シールドかけても……力で割られる。」ルーナカミは口から血を吹き出しながら息も絶え絶えに呟いた。途中でぶつかっただけのミンですらえずいてる程だし、まぁ、そういうことなんだろうな。
「見境なく暴れてる感じかよ……。」そう言った瞬間、今度はアルダンテの腕を持ってった。アルダンテは精霊なので腕は再生したものの一発で腕丸ごと持っていかれたのには衝撃が大きかった。嘘だろ……?
「ちょっと!」
「いいぞ!さぁ!殺して私の仲間になるのだ!」バスが大声でそう言った瞬間。ナサールは呼応するように、拒否するようにバスを蹴っ飛ばした。その後10分以上ナサールは暴れまくった。大抵何も無いところに突っ込むだけだったがそれでも壁に亀裂をいれ、人にぶつかった際にはそのものをすごい速度で吹っ飛ばし即気絶レベルの大怪我を与えた。
「みんな……」そう言った瞬間ものすごい衝突と共に何も見えなくなった……
「……!……!起きた!」ルーナカミが脇腹を抑えながらそう言った。全身痛い……。
「今回復魔法ほとんどの人にかけてるとこ。ナサール結構暴れてるからさ。1回さっきよりも強いシールド集まってかけたんだけどそれでも2発耐えるのがやっとだよ……。正直マレと二人でやってもギリギリ足りるかどうかだよ。」
「ちょっと……私やってくる。マレ。ルーナカミ。ちょっと来てくれない?」アリシアはそういうと二人を招いた。少し話していたがその間にもコントラがナサールと争っていた。
「え……」
「本当にやるの?」
「うん……正直こうでもしないとどうにもならないと思う。」
「話してますね。」
「取り戻そうと必死なのだろう。ただ、よほどの事がない限り、無理だと思うがな。」その後アリシアはゆっくりと右腕を横に伸ばした。何を……と思ってるとその右腕にナサールが思いっきり噛み付いた。バキボキという骨が契れる音と「クッ……」と痛みに悶みながら耐えるアリシアの声がしたが回復魔法による局所的な回復により、腕がどこかに吹き飛ぶということは無かった。
「ど〜ど〜。」アリシアは痛みをこらえた声でそう言いながらナサールを抱っこした。
「愛で治そうとしてるんかね。」
「無駄だと思うがな。」
「まぁ……一縷の望みくらいは許して差上げましょう。さぁ、登りますよ。」そう言うとみんな上に上がって行った。あとは……ナサールが治るかどうかだな。治ってくれよ。
「ん〜!」
「よしよし。落ち着いて〜。いいよ〜」その後アリシアは痛みをだいぶ堪えながらナサールを抱きしめていた。
「大丈夫なんですか?」
「大丈夫じゃないし……すごく痛いけど……こうでもしないと戻ってくれないでしょ……。お願い……戻ってきて。」そのまま5分以上アリシアはナサールを抱っこしていた。かなり落ち着いてきていた。いつしかアリシア以外の全員が黙っており、静かにナサールの様子を見つめていた。
「そろそろかな……?」アリシアが最後に背中をぽんぽんと叩くとナサールから徐々に肌の鱗のようなものが消えていった。
「よいしょ……いてて……」アリシアがナサールの口から腕をパカって外し腕を少し回した。怪我も結構治ったがやっぱり急な回復負荷により結構影響があったらしい。
「終わりましたかね。」
「どうなんだろう。よいしょ。じゃあ帰るよ!」アリシアはぐったりと気絶したナサールを抱っこしながら大声で言った。
「そこまでしてナサールを戻したいのか。ならもう適わぬ。」
「好きにしてください。」
「あぁ。」
「そうさしてもらいますよ!」
「元からそうするつもりだ!」
「もう関わらないでね!」
「べ〜!」その後僕らはナサールを抱っこしたまま精霊を戻し立ち去った。こうして見ると……結構傷だらけになってるなみんな。特にアリシアさっきのやつが跡になりそう。
「……ハッ!」馬車に乗って5分経った頃だろうか。ナサールが目覚めた。
「大丈夫だよ。」
「……ごめんなさい。」
「いいですよ。」
「捕まえて仲間にしようとしたやつが悪いんですよ。」
「そうだよな。」
「うん。」
「だから心配しなくていいよ。」その後はゆっくりと馬車に乗って帰ってった。国境付近の検査では魔属が1人増えてることに疑問があったらしいのだが何とか誤魔化してくれたため、家に帰ることが出来た。その後はすぐ疲れたように寝た。
24Nassar ver.
……ふ〜。ごめんね……。やっぱり、大丈夫と言われても私は……納得できないや。いくら相手のせいと言われてもこのまま、一緒に出来るとは私は到底思えない。
「悪魔・參。」どこ行こう……。あの村はもう帰りたくないし……となると、実家か。まだあるのかな。
「どこに行くつもりじゃ?」
「あぁ。ちょっとね……。色々あって、知ってるでしょ。」
「あのことか。」
「そう。」
「変に巻き込まれただけなのだからそのまま暮らすことも可能じゃろう。」
「まぁ、できるとは思うけどそれより、1回暴走が起こってしまった方のが大事。今回は犠牲者いなかったけどもし次暴走した時に、犠牲者を出したくない。そして……暴走しないっていう事は、約束できない。」
「それもそうじゃな。まぁ、そこまでいうなら止めはせんが……。あの手紙だけで充分かのう?別れの言葉とか、」
「アリシアだし、別れるって言ったら止めてくる。だからこういう別れが1番。」
「そうか。」
「ん。」さて、いくか……グスン。




