遺品整理
師匠が亡くなって5日目。やるべきことがある程度片付き、ようやく師匠が残してくれた遺品の整理に手を付けれるようになりました。
きっと生前に少しずつ整理をしてくれていたんでしょう。処分に困るような私物や調薬前の薬草はほとんど残っておらず大半が処分されていました。
「持って帰るのも大変だし、師匠なりに考えてくれたのかな」
少しだけど気持ちに余裕が出来て気付いたのはお店の中にほとんど物が残っていなかったこと。待合室や診察室、調薬室の中も大きな家具以外は私が使っていた調薬道具くらいしか残っていませんでした。
「整理する身としてはありがたいけど、なんだか切なくなるね」
自分が不治の病に侵され助かる術がないと悟り、私に迷惑を掛けまいと商売道具を処分していった師匠はどんな気持ちだったのかな。考えたくもない。考えたくないけど、悪足搔きせずに天に身を任せたその姿は師匠らしいと言えば師匠らしいです。
「ソフィー、薬師協会の人が来てるぞー」
調薬室の奥で片付けをしていると待合室だったスペースの掃除をしてくれているエドの声が聞こえました。協会の人が来たってことは準備が出来たんだね。
「いま行くからちょっと待って」
持っていた薬のレシピ集を箱に詰め、私は隣接する診察室を抜けて待合室に入りました。そこには見覚えのある初老の男性が一人、神妙な面持ちでエドの傍に立っていました。
「お待たせしました。ルーク・ガーバットの相続人のソフィアです……あ」
「薬師協会のルイスと申します。貴女はもしや……」
「はい。実技試験で落ちたソフィアです。試験官をしてくださった方ですよね」
あまり皮肉にならないように声のトーンは抑えるけど、どうしても釈然としない私がいます。まぁ、私の顔を覚えていたってことはそれなりに罪悪感があったんだと思うけど、この人に任せて大丈夫なのかな。不安な気持ちはあるけど、今回はこちらが教会にお願いする方です。不信感は拭えないけど丁重に扱わないとね。




