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(なろう版)新米薬師の診療録  作者: 織姫みかん
Special Episode:私とアリサさん

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お姉さん?

 宿のご主人に教わった浴場は歩いて5分ほどと近場にある公衆浴場。入湯料を払えば誰でも入れる温泉施設らしく、大小さまざまなお風呂があるけど温泉の効能としてはどれも同じだそうです。

 「このとろみのあるお湯はなかなか良いものだな」

 「そうですね。それに硫黄のにおいはこのお湯が原因みたいですね」

 「これが美肌効果の正体なのか?」

 「うーん。断言はできませんが普通のお湯とは違いますし、なにかしらの影響はあるかもそれませんね」

 硫黄には殺菌効果があって皮膚病の治療薬の材料になるけど私は使わないし、それだけがこの温泉の秘密とは考えにくいな。この肌に纏わりつくようなとろみのある湯にも秘密があるような気がします。もしかしたら硫黄がお湯に溶けてこのぬめりを生み出しているのかもしれないね。それにしても……

 (納得いかないんですけどっ)

 隣でお湯を愉しむアリサさんをじっと見つめる私。見つめる先はただ一点、その明らかにスケール違いな胸。オイスターモドキの時に気付いたけどアリサさんって着やせするタイプなんだよね。

 「ソフィー殿。その、あまりジロジロ見ないでくれないか」

 「……納得いきません」

 「そう言われてもなぁ……」

 「教えてくださいっ。どうしたらそんなに大きくなるんですか!」

 「落ち着け。こればかりはなんとも……ああもう。そんな顔するな。ソフィー殿はそのままで良いと思うぞ」

 「嫌味ですかっ」

 「落ち着け。ソフィー殿は新米薬師にしては十分すぎる知識や判断力がある。それに人となりは申し分ない。アタシはそんなソフィー殿が羨ましいぞ」

 「ぺったんこなのに⁉」

 「ソフィー殿、他人を容姿で判断するのは簡単だ。しかしな、容姿に囚われず、人となりを見てくれる相手の方がソフィー殿を幸せにしてくれると思うぞ」

 なんか話をはぐらかされている気がする。だけどアリサさんの言葉にはそんな私の感情を打ち負かすだけの説得力がありました。

 アリサさんは私より4つ上でそれだけ経験を積んで価値観を作り上げてきたんだと思う。私はそれを否定しないし、むしろ共感できるというか余裕の表情すら見せるその姿がちょっとだけ羨ましかったりします。

 「アリサさんって、なんかお姉さんみたいですね」

 「ソフィー殿は一人っ子ではなかったか?」

 「そうですよ。でも、お姉さんがいたらこんな感じなのかなって」

 「母親と言われるよりマシか。ま、アタシも同じような感じだ。妹がいればこんな風に手を焼くんだろうなってな」

 「私、そんなに手を煩わしてますか」

 「たまにだけどな。でも、それはそれで楽しいから気にするな」

 ニコッと微笑むアリサさんはやっぱり大人だ。いつも優しく、時には厳しく諭してくれるアリサさん。私もいつかはアリサさんみたいな女性になりたいと思う温泉旅となりました。


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