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(なろう版)新米薬師の診療録  作者: 織姫みかん
Karte3:薬師って残酷な生き物なんです
16/118

事故

 ――――ちゃん!


 「え?」


 ――ソフィーの嬢ちゃん!


 「誰か来ましたね」

 薬草棚の整理を再開してすぐのこと。私を呼ぶ声に気付き、振り返って全開にした窓の外を見ると息を切らしながら走ってくる男性が一人。雑貨屋のバートさんだ。そのかなり後ろには村長さんの姿も見えます。

 「バート殿に村長殿もいるな。エドを呼んでくるか」

 「そうですね。でも、あの様子だと私に用事があるようにも――」

 「たしかに。急病人でも出たのか」

 「さぁ?」

 ずっと全力疾走してきたのか完全に息が上がっているバートさん。調薬室から呑気に手を振る私を視界に捉えるや否や大声で叫ぶ。

 「けが人だ! すぐ来てくれ!」

 「けが人⁉」

 「村の入り口で馬が暴れて馬車が横転した!」

 「馬車が横転⁉ すぐ行きます!」

 これはすごく嫌な予感がします。状況次第じゃ手に負えないかもしれない。そんな不安を抱きながらも私はすぐに準備を始めます。

 「アリサさんは薬棚から傷薬と止血薬をありったけ出してください」

 「わかった!」

 「私は先に行ってます。支度が出来たらエドと一緒にすぐ来てください。あと、包帯も全部出してください」

 最低限必要と思われる薬の準備はアリサさんに任せ、私は往診の時に使う薬箱を手に調薬室を飛び出ます。それとほぼ同時にバートさんたちも薬局に辿り着き、店のドアを開けると現場へ向かおうとする私と鉢合わせになりました。

 「けが人の状態は⁉ 何人いるんですかっ」

 「3人だ。男が2人と女が1人。女は腕がなくなってる」

 「――っ⁉」

 嫌な予感が当たってしまった。腕を切断した人の処置なんて完全に専門外。すぐにでも医師のいる街に運ばないといけません。それでも最低限の処置はしなくてはならないし、私は必要と思える薬をすべて用意するようにアリサさんに指示を飛ばしました。

 「鍵付きの薬棚から麻酔薬と気付け薬、それから痛み止めのポーションも全部出してください」

 「承知した!」

 「バートさん! 走ってきたところすみませんがすぐに案内してください!」

 「お、おう。こっちだ。村長は少し休んでな」

 「す……すまんの」

 「村長さんはエドたちと来てください。アリサさん! 村長さんにお水お願い! バートさん、案内お願いしますっ」

 体力の限界を超えている村長さんには少し休んでもらおう。私は薬箱を持って夏の日差しが照り付ける中、バートさんと共に馬車が転覆したという村の入り口を目指し力の限り走りました。

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