踏み出す勇気
「――と言う訳なの」
「そっか。寂しくなるけど仕方ないよな」
アリサさんがお店を辞めるとエドに伝えたのは数日が経っての事でした。
本当はすぐに話すべきだったんだろうけど、自分の中で整理出来ずにいた――いえ、このままみんなが離れ離れになるんじゃないかって怖かったんだと思います。
「それでどうするんだ。新しい採集者を探すのか」
「探さないよ。やっぱりウチの採集者はアリサさんしかいないから。それに、エドもいるからね」
「俺? 別に俺は採集者じゃないぞ」
「昔と比べたら薬草の知識もあるでしょ?」
エドが薬草の事を勉強していると知ったのはこの村に来てすぐの頃です。確かオイスターモドキを獲りに行った時にアリサさんから聞いたんだっけ。あの頃は「全部同じに見える」って行ってたエドだけど、今ではちゃんと区別が付くようになったよね。
「最初の頃と比べたらエドも頼もしくなったよね」
「そりゃどうも。おまえは全然変わらないよな」
「ちょっ、なによそれ!」
「村に来た時から新米薬師とは思えない仕事をするし、だからと言って驕ることも無くさ、ソフィーが来てくれて良かった」
「え、いきなりなに言うのよ。て、照れるんですけどっ」
エドったら急になにを言うのよ! いきなりそんなこと言われたら直視出来ないじゃない!
「ちょっと部屋にいるから!」
「お、おう……ソフィー?」
「明日! アリサさんのお別れ会するからお願いね!」
吐き捨てるように言い残して自室へ行く私は部屋に入った途端、ドアを背に崩れ落ちるように座り込みました。不意打ちはずるいです。急にあんな顔されたら心臓が止まっちゃう。
「ほんと、ずるいよ」
ドアに寄り掛かる私はボソッと呟きます。でも本当にずるいのは私です。いまの関係が壊れるのを恐れて逃げてばかりいます。
「――いい加減、覚悟決めなきゃ」
アリサさんだって店を辞めたいと言うには勇気が必要だったはず。だったら私だって一歩踏み出すべきです。
「大丈夫。きっと大丈夫」
自分を信じろと言い聞かせる私は、アリサさんの件が終わったらこの気持ちをエドに伝えようと決心しました。




