嫌な予感
前略
師匠、お元気ですか。
亡くなった人に手紙を書くって少し変な感じですね。
村に来て3年目。ようやく修行期間も折り返しに入りました。最近はリリアさんからも褒められることが多くなり、また一歩、師匠に近づいたような気がします。
暫く王都に行く用事は無いので会いに行けませんが、これからも私たちのことを見守っていてくださいね。
ソフィア・ローレン
4月に入って少し経ったあるお昼過ぎのことです。
「え? 壊れてる?」
「気付いてなかったのかよ。なんかガタガタ言ってただろ?」
「確かに。言われてみればそんな気もする」
「ルーク殿が購入した時には既にガタが来ていたのだろ? 壊れても仕方ないさ」
みんなでお昼ご飯を食べながら話題になったのは屋根に取り付けられている風見鶏。2階の屋根、この建物で一番高い場所にあるそれは今では看板のような存在。お店のトレードマーク的な物です。
「この際、外したらどうだ。俺、上がっても良いぞ」
「だが一人で上がるのは危険ではないか?」
「エドなら大丈夫ですよ」
風は吹いてないし、エドには雪搔きで何度も屋根に上がって貰ってるからなにも心配せずに風見鶏の撤去をお願いする私。
「風見鶏外すついでに屋根に異常がないか見てくれると嬉しいな」
「俺は大工じゃないぞ」
「修理が必要なら職人さん呼ぶから大丈夫だよ」
「はいはい。わかったよ」
仕方ないなと私の頼みを聞いてくれるエド。やっぱりこういう時は男の人って頼りになるよね。けれどアリサさんはなぜか不安げです。私は「エドなら大丈夫ですよ」と言いましたが、まさかその不安が的中するなどその時の私は思ってもいませんでした。




