秘密の診療②
薬局に戻ったのは日が完全に落ちた夜のことでした。
なんとかその日のうちに戻ることが出来ましたが、店に戻った私を出迎えたエドは明らかに不機嫌でした。理由は分かります。
「ごめんなさい」
遅くまで一人店に残って私の帰りを待ってくれていたエドに心の底から謝罪しました。
「エドは私を心配して止めてくれたのに、ごめんなさい」
「止めたところで行ってただろ。なら謝んな」
「……うん」
本気で怒ってる。お店に戻ってから一度も顔を合わせてくれないエドはずっと窓の外を見ています。こんなに怒ってるエドを見るのは初めてです。薬師として間違ったことはしていない。その自負はあります。でも往診に行くべきではなかったのではと自責の念に苦しんでしまいます。
「あーもう、そんな顔するなよ」
「エド?」
「もう怒ってねぇから。本気で行かせたくないなら羽交い絞めにしても行かせてねぇよ」
「なによそれ」
「ソフィー。俺は薬師としてのおまえは誰にも負けないと思ってる」
「え、いきなりどうしたの」
ようやく私の顔を見てくれたかと思えばすごく真面目な顔をするエド。緊張を通り越して照れてしまいそうになります。
「薬師としてのおまえはすごいと思う。尊敬する。けどさ、おまえになにかあったらルークさんに顔向け出来ねぇだろ」
「……うん。ごめん」
「それでどうだったんだよ。治ったのか」
「もうちょっと遅かったら手遅れになってたかも。でも大丈夫」
出来ることはやってきたと伝えるとようやくエドの表情が柔らかくなりました。私のよく知る、大好きなエドに戻りました。