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『女神の守護者』

 灼熱の炎が翼となって、俺は空を羽ばたく。


 真っ赤な鎧から炎が迸り、かつてないほど力が漲っている。


「たい、よう? 」


 俺を見上げるエルピスに向けて、頷く。


「うむ! お主ならできると信じておったのじゃ! 」


 ヒル子が隣に昇って、俺に向かって笑う。


 俺は邪神と正面から堂々と対峙する。


 邪神は激怒するかのように、咆哮する。


 けれど、恐怖を感じることはない。


 俺の心の奥から、マグマのような感情が噴き出る。


 必ず、こいつを倒してみせる。


 黄金樹の枝にいるメッセンジャーが歓声を上げ、俺は視線を向ける。


「素晴らしい! 素晴らしいですよ、八剣太陽君! 死を超越し、自らの肉体、その器の枷を外したとは! 今の君なら、神の一柱と言っても過言ではない! 」


 拍手をしながら、メッセンジャーが樹上から心底愉快そうに俺たちを見下ろす。


「どこまで強くなったか、試してあげましょう」


 メッセンジャーの指がパチンと鳴り、邪神の背中から溢れ出す触手が波濤のように押し寄せる。


 俺は手にしていた剣を右手に持ち換え、左手を前にかざす。


 そして、想像する。


 翼から肩、腕、そして手甲へと炎が回転し収束していく。


 集まった炎が左手の先から、竜巻の如く荒れ狂いながら噴き出す。


 竜巻の炎に触れた触手が、一斉に燃え始める。


 邪神の苦悶の叫びが響く。


 邪神がたじろいでいるその隙に、俺は地上のレグルスの元へ降り立つ。


 レグルスはエルピスに寄り添いながら、辛うじて立っていたものの、今にも倒れそうだった。


 鬣の炎は、今にも消えそうな位の微かな灯のようだ。


 俺は迷わず、そのレグルスの額に手をかざす。


 炎を分け与える。


 消えかけていた鬣の炎が再び燃え上がり、レグルスは大きく唸る。


 俺とレグルスの瞳が交差する。


 互いにうなずき俺たちは、邪神の方を向く。


 すると、エルピスがレグルスの身体を、軽く叩き、見つめる。


 レグルスはエルピスに優しく唸り、しゃがみ込む。


「エルピス? 」


 エルピスは胸の前で両手を重ね、眼を閉じる。


 その瞬間、エルピスが輝き始める。


 俺は眩しさに目を細め、光がエルピスを包み込んでいく。


 ほんの数秒で、光が収まっていき、俺は目を開け、驚く。


 エルピスの衣装が様変わりしていた。


 足先まで覆われていた衣装が、スカートのような形になり、上半身の胸には木が象られたネックレス、肩からは純白のマントのようなものを羽織る。


 なにより目が惹かれたのはエルピスの頭に被せられた、白い花々で編まれ、頭の中央に三日月がある花冠だった。


「エルピス……その姿は……」


 屈んでいるレグルスの背にエルピスはゆっくりと乗る。


 エルピスが乗ったのを確認してレグルスはすっと立ち上がる。


 エルピスがレグルスの背に乗って、俺を見る。


「私も……戦う。あなたと、一緒に……」


 俺はエルピスのその決意を秘めた表情を見て、頷く。


「おう! 一緒だ! 」


 俺の言葉に、エルピスは無表情のまま、強く頷く。


 怒りの咆哮と共に、邪神の全身から触手が再び俺たち向けて放たれる。


「ヒル子! エルピス! 」


「合点承知じゃ! 」


「うん」


 ヒル子とエルピスが答え、レグルスも吼える。


 俺は空へ飛びあがり、目の前から触手に飛び込むと、背中に回した剣を、一気に振り払う。


 刹那、黄金の剣が煌めき、一瞬の交差の間に、俺は邪神の触腕を切り落とす。


 そしてレグルスの爪が、触腕を切り裂く。


 ヒル子の額の赤い球から、閃光が迸り、触手を打ち落としていく。


 ヒルコが腕組みをして叫ぶ。


「どんな相手が来ようが! 」


 ヒル子の隣で、俺は剣を横に払い、叫ぶ。


 「俺たちの敵じゃねえぜ! 」


 俺の叫びにレグルスが大きく高らかに雄たけびを上げる。


 メッセンジャーが目を手で押さえながら、大きく笑う。


「威勢が良いのは結構ですがねえ。その減らず口をどこまで叩けるか、見せてもらいましょうか」


 メッセンジャーが懐に手を入れ、何かを取り出す。


 それは、どす黒い血で塗られ、四角い箱だった。


 その開いた箱を見た瞬間、悍ましい気配を感じる。


「さあ。神々を超越した我らの真の力を、存分に見せてあげましょう! 」


 メッセンジャーがその手にもった箱を閉じる。


 肉がちぎれるような音を立て、邪神の背中が割れ、何十本もの触手が飛び出す。


 伸びた触手がそれぞれ束ね重なっていき、八本の巨大な触手ができあがっていく。


 八本の触手の先端から上下に割れ、鋭い牙の生えた咢をもつ顔が現れる。


 八つの頭を持つ竜が、降臨する。


「くっそ、また厄介なのが出てきやがった」


 樹上でメッセンジャーが両手を叩く。


「さあ、君達を倒して、次は現実世界へと向かうことにしましょうか! 」


 まるで愉快なおもちゃを待ち望む子供のようにメッセンジャーの顔が笑みをうかべる。


「とても楽しそうだと思わないかい? 」


 俺は拳を握りしめる。


 この邪神が万が一でも、現実世界に現れたら、殺人程度じゃすまない。


 大虐殺が起こる。


「んなこと、させてたまるかよ! 」


 けたたましい奇声をあげ、八本の触手の竜が俺たちに襲い掛かる。


「散れっ! 」


 俺の掛け声と同時に、俺とレグルスとエルピス、そしてヒル子は三方に分かれる。


 俺は炎の翼で空へと舞い上がる。


 目の前に来た触手の竜が俺を飲み込もうと、口を開け、俺を上下の牙で襲う。


 飲み込まれまいと、俺は上の牙を剣で防ぎつつ、脚で下の牙を何とか抑える。一瞬でも力を緩めると、そのまま飲み込まれそうになる。


「やられて、たまるかっ! 」


 翼を羽ばたかせ、炎を竜の口の中へ送り込む。


 竜が痛みで叫ぶと同時に顎の力が緩み、俺は即座に牙の間から抜け出す。


 竜の頭の上まで飛び上がり、俺は剣を高く掲げ、一気に振り下ろし、竜の頭を切り落とす。


 眼下で、エルピスはレグルスの背に乗り、一体となって駆ける。


 上空から迫る触手の竜目掛けて飛び上がると、その刃のような爪で竜の頭部を切り裂いてゆく。


 ヒル子も空中を飛び回りながら、光の矢を放ち、矢が竜の頭部に突き刺さり竜が絶叫する。


「いいぞっ! このまま」


 と俺が叫んだが、


「太陽! あれを見るのじゃ! 」


 ヒルコの指さす方を見る。


 先ほど頭を切り落とした竜の首から、触手が飛び出る。


 その触手が割れ、再び竜の頭ができあがっていく。


「また再生するってのかよっ! 」


 メッセンジャーは歪んだ笑みを浮かべ言う。


「いくら神が来ようが、君が新たな姿に変わろうが、敵うはずがないのだ」


 触手の竜が再び俺たちに襲い掛かる。


「必ず弱点はあるはずじゃ! 」


 ヒルコが飛び回りながら叫ぶ。


「こやつが邪神とはいえ、元は怪物なのじゃ! 必ず、何処かに弱点があるはすじゃ! 」


 その時だった。


 触手の竜が一斉に邪神の背中の辺りへと戻っていく。


 邪神がその上半身を一気に反らす。


 頭部に生えた巨大な触手が鮮血に染まりだす。


「いかん! 」


 駆けるレグルスとエルピス目掛けて、八本の触手の竜が飛んでいく。


 レグルスの行く手を阻むように周囲を触手の竜が取り囲む。


 レグルスの身動きが取れなくなる。鳥かごの中の鳥のように。


 エルピスが顔を上げ、俺を見る。


「エルピスっ! 」


 邪神の上半身が前のめりになり、しならせた触手が鞭のように放たれる。


 竜に囲まれたレグルスとエルピスに向けて。


「させぬのじゃあああ! 」


 ヒル子がマントを翻し飛んでいく。


 鮮血の触手の進行方向に立ちはだかったヒルコは、両腕をかざし光の壁を貼る。


 世界が砕けたかのような轟音が響き渡り、ヒル子の光の壁と鮮血の触手が激突する。


「これ、しき、の、ことでえええええええええ」


 ヒル子が顔を歪ませながら必死に、巨大な鮮血の触手を防ぐ。


「ヒル子っ! 」


 ヒル子に助太刀しようとしたが


「来る出ない! エルピスの元へ行くのじゃ! 」


 俺は止まり頷くと、八本の竜に囲まれているレグルスの元へ向かう。


 上から取り囲むように浮いている八本の触手の竜が、一気にレグルス達に襲い掛かるのを見て、俺は雄たけびを上げる。


「させっかよぉおおおおおおおおおおおおお」


 俺は炎の翼を全力で羽ばたかせ、全速力で飛ぶ。


「はぁあああああああああああああああああああ」


 エルピスとレグルスに襲い掛かる触手の竜、その一体目掛けて、黄金の剣を持ち換え、やり投げのように放つ。


 剣は一体の触手の竜に突き刺さり、他の竜が動きを止め、俺を見上げる。


 俺はこの状況を打開する一手がないか瞬時に考えるも、俺の手には何の武器もない。


「いや、武器ならある! 」


 目を閉じて、想像する。


 脳内を電撃のようにイメージが走る。


 瞬時に目を開けた俺は空中で急停止し、胸を張り、両腕を一杯に伸ばし、翼を全開まで広げる。


 俺の周囲を、翼から溢れ出す灼熱の炎が舞い踊る。


 俺は両手を前へ伸ばす。


 紅蓮の炎が分かたれ、それぞれが集まり形を成す。


 燃え盛る、八つの炎の剣へと。


「食らい、やがれええええええええええ」


 空中に浮かぶ八つの炎の剣が、八つの触手の竜目掛けて飛んでいく。


 剣は触手の竜に突き刺さると、巨大な炎の柱となり、竜を焼き尽くしていく。


 俺は地面に降り立つ。


「大丈夫かっ!」


 エルピスが、俺を見て頷く。


 俺はヒルコを助けるべく上空へ飛び上がる。


 視線の先で、ヒルコの張る光の壁が、鮮血の触手を防いでいるが、段々と罅が入りはじめる。


「この我を……」


 ヒルコが叫び、ヒルコの背後の光の環が巨大になると同時に光の壁が修復し、より分厚くなる。


 ヒルコは両手を引きつつ、円を描くように両手を動かすと、光の壁が円錐形の柱となっていく。


「舐めるなっ! 」


 ヒルコは勢いよく両手を突き出すと、光の柱が杭打ちのように放たれ、巨大な鮮血の触手を弾き返す。


 頭部の触手をはじき返された邪神が後ずさりし、黄金樹に寄りかかる。


 その隙に、俺たちはレグルスの元へ合流し、邪神を見上げる。


「何とか、奴を倒すための突破口を見つけねえと」


「いいや。そう嘆くことはないのじゃ、見よ!」


 邪神の背後で八本の触手が伸びているものの、頭部は再生されず、そのままだった。


「太陽。お主の炎なら、あやつにとどめを刺すことができるはずじゃ! 」


「よっしゃあ。ならやることは一つだ! 」


 ヒル子、エルピスは頷く。


「もうそろそろ諦めて欲しかったのですが。それでは、全てを終わらせてさしあげましょう」


 邪神の口の穴に、再び破滅をもたらす暗黒が生まれゆく。


 螺旋を描きながら、これまでより遥かに巨大に。


 全てを飲み込むブラックホールのように。


 黄金の剣を天に掲げ、俺は叫ぶ。


「征くぞ! みんな! 」


 レグルスが雄たけびと共に駆け出す。


 俺は炎の翼をはためかせ、飛び上がり、邪神の頭部めがけて吶喊する。


「はぁああああああああああああああああああああ! 」


 迫りくる触手を躱し、斬り裂き、燃やしながら、邪神の頭の真上までたどり着く。


 俺は体を半身にし、狙いを定めるように右手を邪神に向け真っすぐ伸ばす。


 左手に握った剣を振り上げる。


 胸を反らし、極限までねじりながら、剣を背中の裏へ持っていく。


「ぜいやぁああああああああああああああああああああああ」


 俺は邪神の頭部めがけて飛び込みながら、左腕をしならせて、黄金の剣を一気に振り下ろす。


 邪神の口の前で、これまでよりも何重にも分厚い漆黒の障壁が現れ、剣を防ぐ。


 火花が散り、障壁と剣がしのぎを削る。


「往生際が悪いですよ、八剣太陽君」

 

 メッセンジャーの言葉と同時に、障壁が俺を押し返そうと、分厚くなる。


「俺はっ」


 右手と伸ばし剣を両手で掴み、全身全霊、全ての力を込める。


「女神の守護者! 八剣太陽だぁあああああああああああああ」

 

 炎の翼を大きく広げ、そして羽ばたかせる。


 前へ、ただ前へ。


 俺は一気に剣を押し込み、迫っていた障壁を押し返す。

 

 障壁を抉るように黄金の剣の枝刃が伸び、障壁に罅が入り、そこから一気に砕け散る。


「レグルースっ!! 」


 頭上からエルピスを背に、レグルスが大きな咆哮をあげ、樹上から邪神を見下ろす。

 

 レグルスは、体全体を沈み込ませる。


 その両足からは稲妻のような光が溢れ出る。


 レグルスが咆哮を上げ、枝から邪神の頭部めがけて飛び込む。


 稲妻の爪が、邪神の障壁とぶつかる。


「レグルス」


 エルピスがレグルスを強く抱きしめると、レグルスの鬣の炎が大きくなる。


 レグルスの眼が黄金に光ると同時に、その巨大な顎を開く。


 雷鳴のような咆哮を轟き叫び、それは刃のように邪神の障壁を切り刻む。

 

脆くなった障壁を、レグルスの爪がそのまま一気に引き裂く。


 そして俺とレグルスは勢いのまま、邪神の口の真ん前に張られた、最後の障壁にぶつかる。


 邪神の頭部の虚空に収束していた暗黒が、今にも破裂しそうな程、極限まで膨張していく。


「と、ど、けやあああああああああああああああああああ」


 俺の剣とレグルスの爪で割ろうとするも、ひと際分厚い最後の壁を突破できない。


「後一歩でしたが。残念ながら、ここまでの」


 閃光が走り、光の矢が障壁に突き刺さる。

 俺は見上げると、ヒル子が手にした弓矢を手放し、一直線に飛び込んでくる。


「この我をっ。忘れるでないわああああああああああああ 」

 

 ヒルコが上空から、叫びながら、突っ込んでくる。

 

 俺とレグルスの間に降りてきたヒル子は、障壁に突き刺さった光の矢に、怒涛の勢いのまま、拳を突き立て、押し込んでいく。


「「いっけええええええええええええええええええええええ」」


 レグルスの爪、ヒル子の矢、そして俺の黄金の剣が最後の障壁に罅を入れる。


 黒い螺旋の球がぎりぎりまで膨張した瞬間、最後の障壁が巨大な音を立て、砕け散る。


 邪神の口から黒い球体が放たれる寸前のラストチャンス。



 俺はそのまま、黄金の剣を両手で構え振りかぶる。


 背中から炎が腕を伝って、手の先へ。


 黄金の剣が炎と一体となる。



「とどめだあああああああああああああああああああああああ」


 頭部めがけて剣を振り下ろす。

 

 炎を纏った黄金の剣は、その勢いのまま、邪神の頭部を割り、そのまま全身を一刀両断する。


 地面に着地した俺が剣を振り払い、叫ぶ。


「俺たちの、勝ちだ! 」


 俺の鎧が消えていき、それと同時に半分に分かれた邪神の体が炎に包まれていく。


 そして邪神の体は崩れ、消し炭となっていく


「太陽おおおおおおおおおおおお! よくやったのじゃ! 」


 ヒル子が叫びながら、降りてきて、俺の背中を思いっきり叩き、俺は前のめりに倒れそうになる。


 俺の頭に飛び乗って頭を齧ってくるレグルスを振り剥がそうとすると、視線を感じ顔を下に向ける。


「太陽」


 見上げるエルピスに向かって俺は全力の笑みを浮かべ、頭をがしがしとなでる。


 エルピスは目を閉じて俺の手を両手でそっと包む。


 上から割れんばかりの拍手が聞え、俺は顔を上げる。


「素晴らしい! 只の人間が、自らの器の限界を破り、神の領域へ踏み込む。これほど胸躍る活躍、間近で見れるとは! 」


 さも愉快に笑い続けるメッセンジャーを前に


「次こそ、てめえの番だ! 」


 と俺は叫ぶも


「ふふふ。さあてそれはどうでしょうか。今回私の化身は倒されてはいますが、君自身は大丈夫なのかな?」


「何をっ」


 俺が言い返そうとしたその時、心臓が大きく鼓動し、息が止まる。


 思わず、地面に膝を突く。


 心臓の鼓動が爆発するかのように身体の中で鳴り続ける。体の神経全てが、雷に打たれたかのような痛みに、俺は地面をのたうち回る。


「太陽君。君はあまりにも急激に覚醒し過ぎました。いくら君に素質があるとは言え、神の力を直接その身に降ろせば、人間の肉体では耐えきれない。残念ですよ」


 全身が弾け飛ぶんじゃないかと錯覚する程の痛みで叫ぶ。


 ヒル子、レグルスが、そしてエルピスが俺に駆け寄る


「もうちょっと楽しんでいきたいところですが……ここまで派手にやらかしたからでしょうか、あの老いぼれが戻ってきそうです。残念ではありますが、ここらで退散させてもらいましょうか」


 メッセンジャーは笑顔のまま立ち上がると、エルピスに向けて指をさして言う。


「それは、今は預けておくよ。さて八剣太陽君」


メッセンジャーが俺を見る。


「君は守りきれるかな? 」


 捨て台詞を吐き、メッセンジャーはそのまま黄金樹の枝から後ろ向きに倒れ、背後の闇の中に消え去っていった。


 俺は薄れゆく意識の中、懸命に手を伸ばす。俺の傍で、瞳を震わせているエルピスに向かって言う。


「ま、もる……さ。俺は、エルピスの、守護者、だから……な」


 力が抜けた地面に落ちた俺の手を柔らかい手が掴む。


 そして俺の意識は、闇の底へ落ちていった。

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