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『決着』

 俺は怪物を斬り裂いた感触、手ごたえを感じる間もなく、上空から落下し地面にぶつかった衝撃と怪物を斬った際に生じた反動で、身体が勢いよく吹き飛ぶ。

 

 何度も地面を跳ねた俺は、隣のグラウンドまで派手に吹き飛ばされ、フェンスにぶつかりようやく止まる。


「くっそ、痛え……」

 

 生きているのが不思議なくらいだった。痛みはあるが、鎧のおかげで何とか痛みだけすんでいた。だがその鎧も、今や肩や胸の部分が大きく抉れていた。

 

 痛みをこらえ、うつ伏せの状態からようやく顔を上げる。


「まだ、生きてやがるのか……」

 

 視線の先では、胴体の甲殻が真っ二つに裂けた怪物が震えながら、残った僅かな足で立っている。そして怪物が身じろぎしながらも、何とか逃げようと、足を動かしてどこかに向かおうとする。

 

 怪物は、砕け散ったブランコの方へ向かって動く。


 それを見て、俺は一瞬安堵する。


 逃げるっていうなら、もう戦わなくていいんじゃないか。


 そんな俺の一瞬の弱気は、鎧の兜を通して見えたものによって一瞬で消え去る。


 怪物の二つに割れた甲殻、その奥には、星のように瞬く金の髪と、純白の白い服が揺れて、衣服の先から伸びる腕が僅かに動く。


 あの子は、生きている。


「逃がすかよぉおおおっ!」

 

 限界を超えた痛みを忘れるくらい俺は叫び、左手に握った剣を支えにして立ち上がる。

 

 脚に力を溜め、一気に前へと踏み出すと、地面を砕き、音を置き去りにする。


 怪物は金切り声をあげて足を動かし、ブランコの前に浮かび回転している黒い渦めがけて一目散に走る。


 今にも黒い渦に向かって飛び込もうとする。


「うぉおおおおおおおおおお!」

 

 怪物が渦に足を突っ込む間際、追いついた俺は怪物の首筋目掛けて、左手に握った剣を伸ばす。輝く剣の切っ先が、怪物の首元に突き刺さり、怪物の絶叫が木霊する。


「くたばれ、怪物!」

 

 俺はそのまま首を切り落とそうとしたが、怪物の頭がこちらを振り向き、禍々しい頭部の眼が光る。稲妻が走るような危機を感じた俺は咄嗟に掴んでいた剣を離し身体を半身にずらす。

 

 閃光が放たれ、兜の半分近く抉られかけるも、俺はすんでのところで避ける。


「これで、終いだ!」

 

 怪物の背に馬乗りになりながら、首に突き刺した剣を今度は両手で握りこむと、横に振り払い、そのまま首を一気に切り落としす。


 怪物が動きを止め硬直した時を狙い、俺は剣から手を離した右手を半分に割れた甲殻の中に突っ込む。少女の体を引っ張り上げると、俺はそのまま飛び上がる。


 断末魔の叫びをあげると、怪物はその毒々しい黒と紫色の体から、一気に灰色となる。


 硬直した全身がひび割れていき、そのまま崩れさり、灰となって何処かへ飛んで行く。


 浮かんでいた黒い渦も徐々に小さくなると、消えていった。


 俺は地面に着地して、怪物の消えていく様を見る。


「何とか倒せた、な……」

 

 右腕に抱えた少女を見て安堵した俺は、自分の意識が急速に遠のいていくのを感じる。


 最後の力を振り絞って左手に握った剣を地面に、突きたて、俺は抱えていた少女をゆっくりと下し地面に寝かせる。

 

 俺は剣を両手で支えにし、両膝を地面について倒れないようにするも、限界を迎えた俺は、そのまま頭から地面に倒れこむ。

 

 突き刺さった剣、全身を覆っていた鎧は光の粒子となって消えていく。 生身の体に戻った俺は、もはや意識を保つことができなくなる。


 目を閉じると、俺の意識は闇の中へと落ちていった。


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