『戦闘開始』
目覚めると、俺は全身に、熱く迸るような力を感じる。
「何が……起きたんだ?」
両手を見ると、白銀の籠手。視線をずらし胸、足。白銀の鎧が俺の体を覆っていた。そして俺は頭に手をやると、兜が装着されていた。
「もしかして、俺は変身したってのか?」
さっき俺がライオンから受け取り手にした輝く石、そこから響く声に従い謎の言葉を呟いた直後、光に包まれたことを思い出す。そして今の自分の状態から考えると、どうやら俺は子供の頃に憧れ、何度も想像した勇者の姿に変身したらしい。
そんな俺の考え事を切り裂くかのような狂気の叫びが響く。俺は視線を正面に戻す。
コンクリートのタイルを割りながら、悍ましさを纏いつつ、異形の怪物が近付いてくる。全身の至る所にある眼が、赤く血の色を映す。
「やるしかねえな!」
戸惑ってる暇などない。目の前の怪物を倒す、そして、あの女の子を取り戻す。
手もとに武器は、何もない。それでも俺は焦ることはない。
必要なものは、迫りくる異形の怪物を倒すための武器。そしてその武器を、この勇者は持っている。
脳内で思い描いた勇者の武器を、俺は強くイメージをして、叫ぶ。
「来い!」
想像した途端、目の前に光の粒子があつまり形を為していく。そしてそれは、中心に紋様が刻まれた巨大な剣となる。
現れ出たのは、一振りの剣。柄グリップは赤色。金色の鍔。透き通った刀身。そして鍔の中心部には、先ほど見た五芒星の中に焔が燃えているマークが刻み込まれている。
目の前で浮かんでいるその剣を左手で握った途端、体全体に熱と電気が走る。両手で握り空に向かって突き上げると、剣の先端から黄金の火花が溢れ出す。
怪物は、その剣に脅威を覚えたのか、けたたましい叫びと共に、その全身から無数の触手を放つ。高速で動くその触手は、風切り音を鳴らし眼前まで迫る。
「そんなものっ!」
恐怖と絶望は消え去り、目の前の脅威に向かって俺の身体は自然に対処するための行動に移る。
両手で握った剣を後ろに振りかぶり、地面と水平にし、真横に一気に斬りはらう。
閃光が瞬くと同時に、迫っていた触手は切り裂かれちぎれ飛ぶ。怪物は痛みを感じたのか、鳥肌が立つような苦痛の叫びを上げる。
「どうだ、怪物!」
俺はこの調子なら勝てると油断する。
だがその油断が誤りであると、すぐに俺は思い知らされる。
怪物の全身を覆う鮮血の眼が光った瞬間、空気を焼きながら、何十本もの赤い光線が俺に向かって放たれた。




