『獅子と石』
俺が最後の力で叫んだ瞬間だった。
疾風が俺と怪物の周囲を吹き荒れる。雷が走るように、頭上から金色の影が飛来する。
それは轟くように咆哮し、怪物目掛けて突撃する。その影と怪物が激突すると同時に衝撃波が起き、俺は後ろに吹き飛ばされる。
「何だっ?!」
俺と怪物の前に立ちふさがっていたのは、ライオンだった。だが、それはただのライオンではなかった。
今まで動物園で見てきたものとは、体格が一回り、いや二回りも大きい。全身の毛には稲妻が走り、何よりその鬣は、灼熱の焔を纏っていた。
怪物は突然の乱入に、戸惑い警戒しているのか、奇声を上げ、後ずさりする。
俺は呆気にとられていると、ライオンがこちらを振り向く。
鬣、牙、そしてその眼光から放たれるその威容は、飼いならされた獣では発することのない圧力を秘めていた。
俺はその巨大な牙を見て、食われると思ったが、よく見るとライオンは口に石のようなものを咥えていた。
ライオンは首を振り、それを無造作に俺の目の前に放り投げると、怪物を睨みつつ唸り声を上げ、威嚇する。
俺は目の前に落ちてきたものを手に取る。
それは奇妙な形をした、錆びた石だった。
手のひら大の大きさ。そして厚みもある。表面にはひし形の枠があり、その周囲に小さな三角形が4つ。
そして一番目を引かれたのが、ひし形の枠の中に刻まれた奇妙な模様だった。一筆書きした星のような図があり、その中心に炎のマークがある。一見すると、奇妙な落書きにしか見えない。
「これが、一体どうしたっていうんだ?」
ライオンを見るも、俺の方に視線を寄越したのち、怪物に向き直る。
怪物はライオンの方をいまだ警戒しているのか近づいてこないが、このままじゃ時間の問題だ。
俺が途方に暮れたその時、手の中にある星が真っ赤に輝き始める。俺が驚いたと同時に、それは聞こえる。
『我は汝に問う。汝、守護者の資格あらんや』




