『邂逅:Θεά』
トンネルをぬけた先に広がる光景に、俺は絶句する。
そこは、まるで自然が作り上げた広間だった。色とりどりの草花に覆われた天然の床。周囲はどこまでも伸びる巨木に囲まれている。
そしてその自然の広間の中心に聳え立つのは、ひときわ太い、幹から枝葉にいたる全てが、黄金に光り輝く大樹だった。
俺はゆっくりと、その黄金樹に近づいていく。
手庇をしつつ、燦然と輝く黄金樹を見上げる。視線をずらし、枝の先の方を見ると、金色に輝く林檎や葡萄、洋梨らしき果物が生えていて、どれも金色に輝いていた。
「すげえ……」
俺は幹の近くまで来る。その幹、人間が10人くらい合わさった太さをしていた。
俺は眩しさに目を細め、大樹の幹に手を触れつつ半周程歩く。
すると、ちょうど大樹の裏側に俺の身長の半分程、屈んでようやく入れるくらいの大きさの洞があいている。
中からは微かに光が漏れている。俺は気になって屈んで中を覗いてみる、と俺は固まる。
洞の中、その奥にいたのは、一人の少女だった。
華奢な背中を洞の端によりかかって、目を閉じてすやすやと眠っている。首元まで伸びた黄金色の髪が、暗い洞の中で、夜空に瞬く星々のように、淡く煌めいている。
少女は純白の衣服を着ており、その衣服に既視感を覚えた俺は、世界史の教科書に載っていた古代ギリシャ人の衣服にそっくりだと気付く。
黄金色の髪や純白の衣服もあいまって、暗い洞の中で、眠れる少女は光り輝いていた。
幼さと神々しさ、相反した要素を併せ持つその少女から、俺は目を離すことができない。髪の色から来ている服に至るまで、まるで神話に出てくる女神のようだ。
俺はしゃがみつづけ、体を小さく揺らしながら眠り続ける少女を見入っていると、不意に動きが止む。
少女の瞳が開かれる。
翡翠の如く輝く、美しい海のような瞳が、俺を見つめていた。




