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幸せな結末  作者: 灰色 シオ
第Ⅴ章 塁と桃子
23/24

高校3年 3月③

 不幸な事故で父親を亡くした少年 るいが転校してきたことから物語は動き出す。

 幼馴染の少女桃子と小学校に通うことになった塁。慎重に身を処し、うまくクラスに馴染めたと思ったころ、事件が起こる。

 互いに好意を寄せあっていた二人は事件をきっかけにすれ違い始める。全てを許し未来を掴もうとする桃子。対して塁は良心の呵責から桃子に対して素直になれない。塁の友人たちは何かとサポートするが二人の結末はどうなるのか?

「泣けばいいんだよ」

 ぬくもりの中で聞こえるその声は不思議と心にしみこんできた。


 そうだった。オレは悲しいんだ。そのことに気付かせてくれたのは今度も桃子だった。彼女の温かさがオレの心の奥底で暗く凍てついた部分に染み込んで融かしていく。桃子に言われるまま素直な気持ちで、オレは涙を流していた。


 この町に引っ越してきて再会したときもそうだった。オレの、オレ自身の心を気づかせてくれる。この娘はやっぱりオレの特別だ。何も変わっていない。今更ながら失ったものの大きさに気づく。それでも今は、今だけはオレの腕の中にいる。

 一人でいるときには感じたことのないおだやかな睡魔すいまがオレを襲う。でもそれは心地よくって抵抗する気も起きなかった。


     *


 塁がお母さんの睡眠薬をくすねていたことをわたしは知っていた。減ってはいなかったから常用してはいなかったと思う。ベッドサイドの戸棚に隠されていたそれを今日は使わせてもらった。

 きっと塁は我慢してしまうだろう。お母さんのことも自分のせいだと考え、重荷を背負しょいこむのだろう。自分の心と折り合いをつけられず、自責の念に駆られながら自分を押し殺して過ごしていく。そんなのは生きているとは言わない。このままではお母さんと同じになってしまう。

 塁のお母さん、塁を連れてかないで!

 塁はわたしのものだから。


「ごめんね、塁君。でも、お母さんに連れていかれる訳にはいかないの。私に約束してくれたじゃない。まだ、果たしてもらってないよ」

 飲みかけのコーヒーカップを手から受け取る。塁は崩れるようにベッドに伏してしまった。ここ数日でまたやつれたみたいだ。寝息も荒い。苦しそうだ。

「すぐ楽にしてあげるからね」


 その前に大仕事が残っている。塁は大柄な方ではない。むしろ痩せているほうだろう。それでも、いくら体脂肪率10%の塁でも18歳の男の子だ。女の子の力でベッドに寝かせるのは大変だ。けれどもこれはわたし一人でやらなければならない。


 ようやっとベッドに寝かせたときには息が上がっていた。息を整えるまで隣に横たわる。

 塁の匂いがする。夢にまで見た塁の身体からだ。汗と男の匂いだ。寝返りを打つようにして抱きつく。首筋に顔を埋め胸いっぱいに吸い込んだ。涙がでそうになる。でも、これからが勝負だ。塁をけてわたしとお母さんの一生一度の大勝負だ。負けるわけにはいかない。


 起き上がってベッドを降りるとバッグから玩具の手錠てじょうを取り出した。持ってくるときは音がしないかひやひやした。塁に気にする余裕はなかったようだけど。使う前に服を脱がせないといけない。早くしないと目が覚めてしまう。


     *


 懐かしいような、しびれるような暖かさを下半身に感じて目を覚ました。


 オレの部屋だった。記憶を探る。一人で部屋にいたとき桃子がやってきた。たしか桃子と並んでコーヒーを飲んでいたはずだ。それから……

 身を起こそうとしたとき頭上で金属音がした。


 ガチャ


 ベッドの枕元で両手を頭の上にして拘束こうそくされているようだ。


 ?


「目が覚めた? よく寝てたよ」

 胸の上に頭を載せて寝ていた桃子が顔を上げた。

「うっ……」

 桃子の左手がオレの下半身をこすった。


 オレは裸だった。文字通り一糸まとわぬ全裸だった。


 何が起こってる?


 拘束されているのは両足もだ。身をよじってうかがうとどうやら手錠をされているらしい。両手は頭の上でベッドの柵に固定されていた。


 胸に指をわせながら桃子が顔を近づける。


 チュッ


 キスをするとにこやかに宣言した。

「これから塁をレイプします」

「ば、馬鹿なことはやめろ……」

「それはずるいよ。自分はよくてもわたしはダメなの?」


 むなしいオレの抵抗を論破すると、桃子は服を脱ぎだした。Tシャツを捲り上げるとピンクのブラジャーに包まれた豊かな胸が目に入る。スカートを脱ぎ捨てると胸を見せつけるようにして両手を背中に回し、ブラのホックを外した。色白の柔らかそうな固まりが揺れる。目が離せない。パンツも脱ぎ捨て裸になると顔を寄せてきた。


「どう? 見せるのは久しぶりだよね。あのときはまだこんなじゃなかったし」

「……やめろ」

「やめない。わたしね……あれからずっと塁に言いたいことがあったんだよ。でも、ずっと言えなかった。塁、聞いてくれないんだもん。ずっと胸の奥にため込んでいたら、こんなに大きくなっちゃった」

 両手で持ち上げるようにして見せつける。

さわって欲しいけど、それは後でね」


 桃子はオレの腹の上にまたがると抱きついてきた。桃子の乳房が胸に当たる。熱かった。それはたまりにたまった桃子の感情なのだろう。

「抵抗しないから手錠を外してくれないか?」

 頼みこむオレの顔に両手を添えて覗き込む。

「本当?」

「ああ、約束する……」

 桃子は考えるふりをした。

「でもダメ……塁って信用ないんだよ。知ってる?」


 これまでの行いからすれば当然だろう。何度となく彼女に救われておきながら、オレは彼女から逃げ続けてきたのだ。

「ごめん……」

「だ~か~ら~ わたしは謝って欲しいんじゃないんだよ」

「ごめん……」

 やはりオレの口から出るのは謝罪の言葉だった。


「も~、今日という今日は許さないんだから。泣いて、もうこれ以上は無理ですって、言わせるまで寝かさないんだから」

(オヤジかよ……)

 昔はこんなこと言う娘ではなかった。会わなかった2年もの時間の長さを思う。


     *


 18歳の男の子の身体は敏感だった。


 夢にまで見た塁の肉体からだ。夢にまで見るなんてやっぱりわたしはいやらしい女の子だ。


 それは知ってる。6年間、彼のことだけ見てきた。会わなかった間も彼のことを思わなかった日はない。ずっとこうなりたかった。優しくしてほしかった。わたしに触ってほしかった。激しくしてほしかった。わたしを見てほしかった。


 ううん。塁はわたしだけを見ていてくれた。それはわかっている。でも、それは本当のわたしじゃない。塁の中のわたし。思い出やしがらみのフィルターを通したわたし。それは本当のわたしじゃない。

「ねえ、塁……わたしを見て」


 虚飾を一切取り去った裸のわたし。外見だけじゃない。わたしがどう思っていたのか。どうしたいのか。どんな女の子なのか。わたしの全てをちゃんと見てほしい。いやらしくって呆れられるかもしれない。我儘で嫌われるかもしれない。わたしだって怖いんだよ。ここまでしたのにまだ手が震えてる。でも、いつまでもこのままではいられない。いたくない。

 だから……


「塁、大好き」


 塁の下半身に顔を寄せる。やがて口いっぱいに塁の味が広がる。すごい量。あふれそう。わたしで感じてくれたんだね。幸福感に包まれて飲み込んだ。

「桃子……」

「塁の味だ。うれしい」


 膝立ちになってわたしの中心を開いて見せる。そこは既にあふれんばかりに潤っていた。

「見える? 塁に感じてこんなになっちゃった。」

 塁は黙ってわたしを見つめている。今日の塁は目をそらさない。わたしに向き合ってくれている。今はわたしを見ていて。


 塁の上に跨る。

「入れるよ……」

「やめろ……」

 まだそんなこと言ってる。諦め悪いよ。

 少し意地悪したくなる。

「一度レイプしたんだから、もう一度すればいいじゃない」

「あれは……」

 塁は苦しそうな顔をした。

 でも、許してあげない。塁は自分と向き合わなければいけない。それはわたしたちにとって必要なことだから。


「あのときはそうしたほうが桃子を守れると思ったんだ」

 塁に圧し掛かるようにして顔をのぞき込む。

「嘘だったの?」

「嘘じゃない。けど……」

「けど、なに? わたしが本当にやりマンになって、誰とでも寝る女になってもよかったの? それともあのまま河原君とすればよかったの? 誰か別の男のものになってもよかったの? 塁はわたしをどうしたかったの?」

「……桃子を取られたくなかった。だから……」

「だからなに? ちゃんと言って、わたしは誰のもの?」

「桃子はオレの女だ!」

 ようやっと言ってくれた。うれしい。

「うん。じゃあ、問題ないね。さあ、時計の針を進めましょう」


 塁の半身に左手を添えて私の中心に導き、そのまま腰を落とす。


 !?!!!


 6年ぶりの塁は大きくて下半身が引き裂かれるようだった。声を押し殺して構わずわたしの中に引き入れる。一瞬の抵抗の後、さらに激しい痛みがわたしの背筋を貫いた。


 ……動けない。


 塁を全ておさめるとしびれるような痛みで身動きが取れない。つながったまま抱きつくようにして塁の胸に倒れこんだ。

「大丈夫か?」

 優しく尋ねる塁に渾身の力を振り絞って抱きつき、キスをした。


     *


 長いキスから離れるとオレの顔を見ながら桃子は言った。

「痛いの……なんでだろう。痛いの……」

 すれ違っていた気持ち同様に身体までもが拒んでいるのか? 桃子の両目から涙が零れ落ちた。


 ……そうではなかった。

 接合部を見て驚いた。

「血が出てる……」

「えっ……なんで?」

 桃子にもわからなかったらしい。だが、それが示しているのはたった一つの真実だ。


 ああ、神様。ありがとうございます。


 彼女は犯されてなお、汚されず、純潔を保っていたのだ。彼女は神に愛されていた。オレを救い、守り、導いてくれていた。オレの天使……

 間違い続けていたオレはこの奇跡のおかげでやり直せる。


 腹筋に力を籠め、両手の手錠(戒め)を引きちぎる。少しじれば玩具の手錠は簡単にちぎれた。


 ずっと触れたかった。素直になっていれば手に入ったかもしれない大切な宝物。諦めていた。だが、彼女は諦めなかった。見捨ててくれなかった。救ってくれようとした。そして救われた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 温かい。両手の中に確かに存在する温かさに甘えてオレは泣いていた。わーわー声を上げて泣きじゃくっていた。

 やっぱりお父さんが正しかった。結局、オレは独りでは克服できなかった。だけど、そのわだかまりはきれいさっぱり消えていた。すべて腕の中にいる天使、桃子のおかげだ。もっと早くお父さんの言うことを聞いておけばよかった。そうすれば彼女にこんな苦しい思いをさせずに済んだのに


「違うよ。これまでがあったから今のわたしたちがいるの。無駄なんてことは一つもなかった。あんなに必死に頑張ってくれた塁は格好良かったよ。見ているだけでうれしかった。だから今わたしは幸せだよ」


 オレもだ。今のオレは間違いなく世界で一番幸せだ。

 胸の中の宝物を大事に抱きしめた。もう二度と手放さないように。オレの決意を込めて……


 長い抱擁の後、互いを思いやりながら体を動かす。甘い嬌声を聞きながら何度も何度も抱きしめた。目が合うたびに唇を重ねた。失われた6年を取り返すかのように。飽きることなく何度も何度も

読んでくれてありがとうございました。

桃子の逆襲が始まりました。今日の桃子はちょっと意地悪です。塁が悪いんですけど。小さな奇跡のおかげで桃子の思いは塁の頑なな心を融かすことができました。

これで本編はおしまいです。次話エピローグまでお付き合い頂けたら幸いです。感想・レビューなど頂けたらうれしいです。

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