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幸せな結末  作者: 灰色 シオ
第Ⅰ章 高梨塁
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プロローグ 佐々木桃子

 不幸な事故で父親を亡くした少年塁が転校してきたことから物語は動き出す。

 幼馴染の少女桃子と小学校に通うことになった塁。慎重に身を処し、うまくクラスに馴染めたと思ったころ、事件が起こる。互いに好意を寄せあっていた二人はこの事件をきっかけにすれ違い始める。

 全てを許し未来を掴もうとする桃子。対して塁は良心の呵責から桃子に対して素直になれない。友人たちは何かとサポートするが二人の関係は思うようには進まない。そうしている間に周りも変化していき……

「服、かえしてよ……」


 きっかけは些細なことだったはずだ。肩が当たっときあやまらなかったとか、呼ばれたとき返事をしなかったとか、そんなどうでもいいことだったと思う。それでも、わたしにもこれだけはわかった。スクールカーストの階段を踏み外してしまったのだと。


「はずかしいよぉ……」

 わたしはクラスの中心派閥の子達から衣服をはぎ取られ……つまり、裸なのだった。

「隠すんじゃないよ!」

 リーダー格の佐伯優里菜さえきゆりなが怒鳴るとその意を受けて取り巻きの酒井美穂さかいみほ三井由紀みついゆきが両脇からわたしの両手を引き離した。隠していた下腹部が露わになる。


「いっちょ前に毛が生えてんじゃん」

「わーっ、やらしい!」

 小学校6年生なら、早いというわけではないはずだ。胸だってそれほど膨らんでいるわけではない。けど、人に見られるのは別だ。うつむいたわたしの目に映る恥毛は恥ずかしいだけでなく、やはり、いやらしく思えた。


 冷やかすような声をあげた鈴木安奈すずきあんなと黙って興味深げに見つめる安西あんざいりさ子は佐伯優里菜の腹心だ。酒井と三井を入れたこの5人がクラスの中心派閥でいじめの主犯だ。

 これまでにも何人かのクラスメイトが、彼女たちの標的となり涙を流してきた。これまでは子供のやること、ハブられたり、からかわれたりするくらいだった。けど、わたしたちも6年生になった。性について授業で習ったり、ネットで知識を得ることもある。なにより、わたしたちが興味あるのだ、大人というものに。


 そのためいじめの性格が変わってきた。それがたまたまわたしの番だったのだろう。わたしはそこまで目をつけられてはいなかったはずだ。憎まれるほど人目を引くような美人じゃないし、話の中心になるような活発な娘でもない。嫌われたり、馬鹿にされたりするほどでもない。つまりクラスの中ではどうでもいい子なのだ。


 そんなわたしがここまでされる(いじめられている最中でもこれが普通のいじめではないことはわかった。)というのは、ただ単に、彼女たちの興味を満たす生贄としてたまたまわたしが選ばれてしまったのだ。それが証拠に、佐伯優里菜はわたしの罪状を口にはしない。


「ねえ、桃子。あたし、セックスに興味があるんだ」

 その代わり、わたしに自発的にさせようとしている。

「悪いと思ってるなら、あたしたちにセックスするところを見せてよ。それで許してあげる」

 もちろん、わたしも年頃の女の子だ。興味がないわけがない。けれどもセックスには相手が必要だ。誰でもいいわけじゃない。


「お前も、びくびくしてんじゃねえ!」

 鈴木安奈に尻を蹴飛ばされ、わたしの目の前に全裸の男子がよろめきでた。河原貴大かわはらたかひろ、クラスでも目立たない、おとなしい男子だ。太っていて男子からはよくいじめられている。小心者のくせに舐めるような目で女子を見るので、女子からも人気はない。つまり、わたしへの嫌がらせには最適な人物だ。

「なんだ、てめえ。普段、いやらしい目であたしたちを見てるくせに、はだかの女を見てびびってんのか?」

「チンチン縮こまってんじゃん」

「こいつ、もともと小っちぇんじゃね?」

「違げえねえ!」

「ぎゃははは!」

 下品に笑う彼女たちの目は笑っていない。好奇心むき出しで血走っていた。

「しごいてやりゃ、大っきくなんだろ?」

「美穂。手伝ってやれよ」

「手伝ってって言われても、私、どうすればいいのか分かんないよ」

 河原貴大の勃起を手伝えと言われた酒井美穂が悲鳴を上げた。


「そんなの、扱いてやったり、しゃぶってやったり、いろいろあんだろ……」

 使えない手下に癇癪を起しそうになった佐伯優里菜が、なにかに気が付いたように矛先を治めた。わたしに視線を移す。

「フェラチオって、オーラルセックスとも言うよな。オーラルセックスもセックスのうちじゃん。桃子にやらせようぜ」


 絶対やだ!!


 逃げようとするわたしの身体を三井由紀が押しとどめる。どのみち、この格好では逃げられない。酒井美穂と三井由紀に両側から頭を押さえつけられ膝をつかされた。目の前に鈴木安奈に押された河原貴大が迫ってくる。戸惑いながらもフェラチオと聞いて河原は期待に目をぎらつかせていた。

 わたしは歯をくいしばって口をつぐんだ。


 ガラガラ!


 放課後は、誰も来ないはずの理科室の扉が開いた。


読んで頂きありがとうございます。

初めての投稿で不安でいっぱいですが、評価頂けたら幸いです。

よろしくお願いします。

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