ユニフォーム 弐
試合は、ホークス先攻で始まった。
タイガースのスターティングメンバーは
ピッチャー、福島三四郎、四年
キャッチャー、野田誠、四年
ファースト、三宮隆、四年
セカンド、九条瑞穂、三年
サード、石屋川萌子、四年
ショート、御影千尋、三年
レフト、杭瀬晴人、四年
センター、新在家上京、四年
ライト、住吉翼、三年
の九人。ダイヤモンドに散ってゆく。ベンチには、三年の大翔の他に、三年の出屋敷太樹と二年の桜川翔太の計三人。
大翔はまだ入ったばかりだから、試合に出られるはずがない。まだ、よくわかっていないこともあって、ベンチメンバーと楽しそうにおしゃべりをしている。
試合が始まった。
お母さん連中が集まってくる。賑やかに、黄色い声援が飛ぶ。
「なんだか向こうのチームの子、大きくありません?」
珠子が感じたままを口にすると、
「向こうが大きいんじゃなくて、こっちが小さいんだよ」
と、住吉ママが答えた。
「うちは小さい子が多いんですか?」
「向こうは五年生が多いからね」
「五年生?」
三宮ママが補足した。
「この試合はね、Bチームって言って、ホントは五年生以下でするんだけど、タイガースは五、六年が少なくって、五年生が全員六年生主体のAチームに入ってるものだから、ここには四年生以下しかいないのよ」
小学生にとって、ひと学年の違いは大きい。そんなので、まともな試合になるのだろうか。
ところが、だ。
珠子は瞠目した。
体の小さなタイガースの子どもたちが、しっかり野球をやっている。福島はしっかり腕を振って、びしびしボールを投げている。野田はそれをしっかりキャッチしている。ホークスの子が打った。大きな体をした子だ。強い打球がサードに飛んだ。
パシィ!
萌子がことも無げに捕った。そのまま、ゆったりしたフォームでファーストに投げる。三宮が平然と捕球。
「アウト!」
次のバッターの打球はショートに転がった。
「はいっ!」
甲高い声とともに、前に出た千尋が掬い上げるように捕球すると、走りながらファーストに横手投げした。
「アウト!」
その次の打球は、高々と外野に飛んだ。
「オーライ、オーライ」
センターの新在家が右手をぐるぐる回しながら落下点まで駆けると、両手でフライを抑えた。
一回表、三者凡退。
タイガースの攻撃は三年生の九条から。
体は小さいが、動きがとても俊敏な子だ。左打席に入ると、3球目をパッカーンと打った。ボールはあっと言う間にセンターの頭上を越えていった。九条、走る走る走る。速い速い速い。一塁ベース蹴った。二塁ベースも蹴った。外野がようやく追いついた。余裕で三塁ベースに滑り込んだ。
「わああああああ」
お母さん連中が一斉に歓声を上げた。珠子も「走れ、走れ」と声を出していた。
二番は千尋。ひときわ小さな女の子だけれど、3ボールの後、振り抜いた打球は三遊間をきれいに抜いた。九条が手を叩きながら、ゆったりとホームに戻ってきた。
三番は大柄な萌子。その初球、一塁ランナーの千尋がスタートを切った。二塁に滑り込む。ゆうゆうセーフ。さっと塁上に立ち上がると、帽子を取って、ショートヘアをさっと搔き上げた。
その千尋を、萌子が豪快なレフトオーバーで返し、さらに四番、福島がライト前で続き、五番、野田のフォアボールで満塁となったが、六番、三宮はセカンドゴロで萌子がホームでアウト、七番、杭瀬は三振、八番、住吉がショートフライで、タイガース初回の攻撃は終わった。
一回の表裏が終わって、2ー0でタイガースがリード。
「なんだ、強いじゃないですか、タイガース」
珠子が九条ママに言うと、
「まあ、この調子でいってくれればねえ」