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8.下着購入

 朝食を食べに食堂へ降りる。

 パンとサラダ、スープに肉料理が出る。

 と言うか、はじめてのまともな飯!

 木の実と樹液の生活が終わり、固形物を胃に入れる。

 高級宿のせいか、味付けもいい。


 おー!!!!!!!!!!!。

 うめえ!!!!!!


 アセナの尻尾が凄い勢いなのは味のせいだろう。

「こんなに美味い食事は初めてだ」

 アセナが息巻く。


 アセナは手で、俺はフォークとスプーンでその食事を食べた。

「マルス様は貴族様のご子息か何かで?」

 カミラさんが俺に聞く。

「普通の子はそんなにうまくフォークとナイフを使えないのですが……」

 聞くに、普通は手づかみということ。

 この店は貴族も来ることがあるので、フォークとナイフを準備してあるらしい。

「んー、死んだ親父に習いました」

「ちなみに、お父様はどんな方で?」

「僕も詳しいことは知りません。僕が産まれた時にはすでに山奥に暮らしていました。なぜか知りませんが、僕を鍛え上げたわけです。

 昨日のお金もオヤジが持っていたもので実際は僕の物ではありません」

 何かを考えるカミラさん。

 そんな間に俺たちの食事は終わった。


 俺は木剣装着、アセナは双剣を腰に帯び、アクセサリー系を身に着けた。

 鎧は次元収納に入れて、俺とアセナは宿を出る。

 今日は下着の購入をした後依頼を受ける。

 バケモノの木仕様の下着しかない俺と貫頭衣しかないアセナ、これでは困る。


 街を歩きながら衣料品店を探す。

 隣を歩くアセナの尻尾がパタンパタンと当たる。

「なぜ尻尾を?」

 見あげながら聞くと、

「マルスを感じるため」

 だそうな。

 白狼族は仲がいい相手にするらしい。


 暫く歩くと市場のような場所に到着した。

 俺たちは屋台を見ながらウロウロする。

 そして、嗅いだことがある匂い。


 ん!


 俺は早歩きでその匂いを追う。

 アセナが何事かと追いかけてきていた。

 そこには樽がある。

「これは!」

 俺はいきなりその店のオッサンに聞いた。

 その服装は着物。

 時代劇に出てくるような農民の姿だった。

 マジ物かもしれない。

「これは豆を貯蔵している間に変質してできる調味料だ」

「味見はできる?」

 小皿に少し黒っぽい液体を乗せると、俺に差し出した。

 舐めると久々に味わった故郷の味に涙が出そうになった。

「美味い調味料なんだよ。でも、知名度が低すぎてね、この街の者たちも見向きもしない」

 話を聞いて大きく頷く俺に、

「知っているのか?」

 とアセナが聞いてきた。

「ん? ああ、オヤジの料理で使っていた調味料。作り方を知らなくてね」

 といつものオヤジ嘘。

 樽だけでなく、ペースト状のものもある。

「あれは?」

「あれはこの調味料と同じような作り方をした別の調味料」

「味見させてもらえる?」

「あっ……ああ」

 オッサンは俺の勢いにタジタジだ。

 ペーストを少し掬うと皿に載せて、俺に差し出した。


 おぉ……ミソ。

 ってことは、米麹?

 もしかしたら、この村に米もあるはず。

 飯が食えるかもしれないなぁ……。

 一度行ってみたいかな。


 醤油が三樽と味噌が二樽ぐらい店先に置いてあった。

「これ全部でいくら?」

 俺はオッサンに言った。

「全部でいくらとは?」

「この五樽全部でいくら?」

「えっ?」

「えっ、じゃなくて、僕が欲しいんです。

 できれば村の名前と場所も教えてください。一度行ってみたいので」

「坊ちゃんは何者なんですか?」

 オッサンは驚いていた。

「僕はそこのアセナと冒険者をやっています。

 この液体とペーストは保存食でしょ? ですから、野営の時に使おうかと。

 ですから、全部売ってもらいたいのです」

「そりゃ、儂も全部売れるなら嬉しいが……」

「だからいくらで?」

 俺の勢いにアセナも引いている。

「きっ金貨二枚」

「はい!」

 俺はポケットから金貨二枚を出して、即オッサンに渡した。

「で、おじさんが住む村の名前は?」

「ラロック村。この街の西へ十日ほど歩いた山際の村だ」

「ラロック村ね。

 機会があればいかせてもらいます」

 行く気満々の俺。

「だったら、俺はナオヨシ。もし村に来ることがあれば声をかけてくれ。礼がしたい」

 醤油と味噌をゲットしてホクホクの俺だった。

「どうやって運ぶ? 儂が運んでやってもいいが」

「ああ、ちょっと待って」

 俺は次元収納で五つの樽を仕舞う。

「はい終わり。ありがとう」

 唖然とするオッサンを置き、俺とアセナは市場に消えるのだった。



「そんなにいいのか?」

「当たり前だろ! 醤油は旨いものだ。

 今度料理してやる」

「マルスは料理ができるのか?」

「当然!」

 俺は胸を張る。


 長年一人暮らしだったオッサンを舐めちゃいけない。

 何なら菓子もできるぜ!


 屋台を冷やかしながら進む俺たち。

 屋台が途切れると、ちゃんと店を構えた場所に出た。

 ちょっとした服が並んでいる店を見つける。


 少しお高い感じ?


 俺とアセナはその店に入った。

「何の御用でしょう?」

 細身の男性……三十ぐらいだろうか……多分店主が現れた。

「この女性の下着と僕の下着を買いたいんです」

 俺が言うと、

「うちの服は下着でも銀貨一枚は下りません。問題ないでしょうか?」

 と俺に聞く。

「じゃあ、これ前金で」

 金貨を一枚差し出した。


「えっ……お客様」

 驚く店主に、

「履き心地の良いものを見繕って」

 と俺が言うと、奥に

「手伝ってくれ!」

 と声をかける男。

 すると女性店員が二人ほど現れた。

「この人は公用語が苦手だから、僕もついて行きますね」

 驚く女性店員に、

「この人の裸は見慣れているから問題ありません」

 と言っておく。

「どこに行けばいいですか?」

 との問いに、

「あちらに」

 と男性店員に言われ、

「アセナ、あそこだそうだ。

 そこで下着を買う」

 と獣人語で指示すると、アセナは俺に付いてきた。



 アーカーシーロ―キイロ♪

 だけじゃないねぇ、黒やら紫やら……。


「選んで欲しい」

 と俺に言うアセナ。

 男も女性店員も俺とアセナの関係を測りかねているようだ」

「そうだなぁ、アセナは色も白いし、髪の毛も白いから同系の白か、逆に黒かな」

 俺が獣人語で言うと、

「じゃあ、それで」

 アセナが頷く。

 俺は店主に、

「白と黒、その人に合いそうなものを出してもらえない?

 一応冒険者だから履き心地と機能性を求めているけど、何枚かはレースとかついていてもいいと思う」

 そう言うと男は女性店員に指示を出した。

 女性店員は棚の中から、下着を選ぶ。

「僕も、着心地と機能性重視で」

 俺が言うと、店主は俺に合ったサイズの下着を探し始めた。


 まずはアセナの合わせ。

 店主が出ると、アセナは服を脱ぐ。その下から出てきたみすぼらしい服を見て、女性店員が驚いていた。

 ニヤニヤしているところを見ると、何か勘ぐっているのだろう。

 あとで聞くに、貫頭衣からアセナを奴隷と勘違いしたようだ。

 人間がケモミミを奴隷として飼う事はよくあることらしい。

 つまり、どこぞのボンボンである俺がアセナを買い、その足で下着を買いに来たと思ったようだ。


 そこは俺の下着も買いに来たことを考えて欲しいなぁ……。

 金を出すのは俺だから、奴隷と勘違いされても仕方ないんだろうな。


 アセナは尻尾と体格のせいか、選択肢は少なかったが、それでも貫頭衣よりはましな感じ。この世界にもブラはあるらしく。元々重力に負けない胸だったが、ブラをすることで更に形よくなっていた。

「きつくないか?」

「丁度いい。少し動いたら揺れて邪魔だったのが、固定されていい感じだ」

軽く体を動かして、絞めつけ具合を確認していた。

 そんなアセナを見て女性店員が自分の胸と比較している。


 残念……。


 白と黒を下とブラで五セットずつ。あとレースで少し透けるものを二セットずつ購入する。

 そのうちの黒の一セットをアセナは着けると、服を着た。

 女性店員には貫頭衣の処分を頼んでおく。


 あとは、俺。

 見繕ってもらった物……って言っても白しかないんだが……それのトランクスタイプと丸首のTシャツのようなものを十枚ずつ買い込んだ。

 さて、トータルでいくらだ?


 店主が言うには金貨一枚と銀貨七十枚だそうな。

 んー、高いねぇ。

 大量生産でないから、余計なのだろう。

 良いものらしいので言い値で払う。


 ポケットから残り銀貨七十枚を何度かに分けて出した。

「これでいいですか?」

「えっ、ああ……。あなたはどこかの貴族のご子息で?」


 ん? これ、宿でもあったよな。


「いいえ、特には……」

「表立って言えない事情もおありなのでしょう。

 私はグリビシと申します。

 何かありましたら、私共の店をお使いください」

 との事……。


 何か勘違いされているような……。


 紙袋に入った下着を受け取ると、俺は店を出るのだった。


読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字等ありましたら、指摘していただけると助かります。

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