1.吹き飛んだら……
新作です。
拙い文章ですが、読んでもらえると幸いです。
俺の名はタカシ。アラフォーと呼ばれる年齢に足を突っ込んではいるが独身だ。
仕事で、古びたタンクを溶断していた。
中に可燃性の気体があったのだろう。
タンクが爆発し吹き飛んだ。
ちゃんと除害しとけ!
目を覚ませば木の前。
そう言えば、タンクの近くに公園があった事を思い出す。
しかし違和感。
見あげるほど大きな木の幹には大きな顔が付いていた。
幼児向けの「誰かさんと一緒」の顔の付いた木の顔をめっちゃイカつくした感じだ。
その眼は俺をじっと見ている。
「えっ? 何だ?」
と俺は言ったつもりだったのだが、
「だう? あうあ?」
と声が聞こえる。
仕事をしてごつごつだった手のはずが、柔らかそうな小さな手が現れた。
姪っ子が産まれた時に見たことがある手……。
えっ? 赤子?
転生って奴か?
で、何でこいつの前。
俺の尻はバケモノの木の葉っぱで包まれており、糞尿は根っこが伸びてきて吸い取られる。
枝が伸びてきて水洗されると新しい葉っぱに尻が包まれた。
完全介護。
腹がすくと、バケモノの木のゴツゴツとした枝が俺に向かってきて、その枝が俺の口の中に入った。
何かがにじみ出る。
俺の意思に反して、その指を吸う体。
赤子の生存本能らしい。
吸い終わると満腹。そのまま意識を失い眠りに入るのだった。
そんなこんなで、暫くするとハイハイができるようになる。
何か知らんけど、メチャクチャ早いハイハイが可能。
「何人たりとも!」
なんて思いながら部屋の中をハイハイしていると、バケモノの木に押さえつけられ、手足に輪っかをつけられた。
奴隷のような枷だ。
重っ。
赤ちゃんのハイハイぐらいの速さに変わる。
なぜか、幹にある顔が笑っていたような気がする。
一瞬奴隷になったのかと勘違いし、バケモノの木を睨み付けるが、何も言わなかった。
話しかけようにもまだ発音さえまともじゃない俺。
「ダウアー」じゃ会話はできないか……。
そのうちヨロヨロと伝え歩きをし始める俺。
しかし時が経てばそんなものは無いように歩き始める。
ある日バケモノの木が指から水を飛ばす。
キンキンに冷えた水だ。
その水が俺にかかった。
わざわざ部屋の温度を下げるバケモノの木。
体が冷えてガタガタと歯が鳴る。
「自分で何とかしろ。お前の魔力ならどうにでもなる」
と言い放ち目を閉じた。
魔法が使えるということか?
何も燃やす物など無い。
魔力を使えば温まることができる。
火を作れば温まる。
魔力を使って燃える物を作り、それを燃焼させればいいということか?
考えるままに可燃性ガスを作ると、それに静電気をイメージして発火させた。
ボウアと炎が上がる。
ガタガタと震えながらその炎を維持しようとするが、上手くいかない。
何度もトライアルアンドエラーを繰り返すうちに炎が維持されるようになると、体が温まった。
ふとバケモノの木を見ると、満足げな顔。
俺はやり方に問題があるとはいえ魔法を教わったのかもしれない。
食事ができるようになると、食べ物は樹液と木の実。
甘い木の実を食べれば、腹が膨らんだ。
西遊記ベースの某格闘漫画に出てきた神の豆のようだ。
俺は鍛えられているのか?
こうして時間が経った。
何年経ったのか、枷をつけた手足で簡単に走り回ることができるようになった時、部屋に宝箱が現れた。
その中には俺の成長に合わせ大きくなる仕様。
手にはバケモノの枝で作った木剣。
枝がカランと置かれ、その時からバケモノの木が襲ってくるようになった。
俺がまともに話ができるようになった時、
「何で俺を鍛える?」
と聞いてみた。
「やっと話せるようになったか」
と嬉しそうな顔をしてたのを思い出す。
読んでいただきありがとうございました。