告白
はぁ、あのタイミングで言うんじゃなかった・・・
眠いよぉ。龍馬さん・・・
おりょうさんは、もう寝てるじゃーん!
私も寝たーい!!
―2時間前―
小春はお風呂上がりに、おりょうに未来から来た事を話して、龍馬とおりょうの部屋に呼ばれていた。
もう、夕食も済んでいるから奥に布団が敷いてあるのが見える。
布団の部屋と小春達が座っているところは襖で仕切れる様になっているが、今は開けてある。
小春にとって畳の匂いのする部屋に泊まるのも、畳の上に敷き布団を敷いて寝るのも、生まれて初めて経験した事だった。
畳の匂いって、落ち着く匂いだなぁ。身体を反らせ天井を眺めながら2度、深呼吸をした。
小春から1mほど距離を置いて二人が並んで座り、おりょうが龍馬に熱燗をお酌している。
冷静さを取り戻しながら、龍馬に説明するおりょうとは反対にどんどん興奮している龍馬。
そんな二人の様子を窺いながら、小春は一日中歩いて乳酸が溜まりに溜まり、既に筋肉痛になっている両足をマッサージしていた。
「小春!!」
ビクッ!!突然大きな声で呼ばれ、小春は肩を竦めて驚いた。
胡座をかいて座る龍馬が、笑いながら手招きする。
小春が龍馬達の近くに座るのを待たずに、龍馬は小春に話しかけていた。
「先の世は、どーなっちょる?こん国は1つにまとまっちょるか?」
小春は、おりょうと龍馬の顔を見つめ、少し考えてから話し始めた。
「うーん、先の世はこの時代とはだいぶ違います。
まず、刀を持ったお侍さん?はいません。銃や刀を持ってたら捕まります。
国は、1つにまとまってるかは分かりません。でも日本は今、とても平和です。
たまに、憎しみとか妬みから悲しい出来事があったり、地震や台風とかでたくさんの人達が亡くなる事もあるけど・・・
それでも大抵の日本人は、毎日ふかふかのお布団で寝て美味しい食べ物もたくさんあって、世の中には娯楽が溢れています。」
龍馬はいつの間にか前のめりになりながらも、珍しく静かに聞いていた。そして、少し間を置いてから小春に問いかけた。
「小春は、幸せだったか?」
ふいに、龍馬から投げられた質問に小春は一瞬驚いたが、落ち着いた声で答えた。
「私は・・・
私の母は、私が生まれてすぐに亡くなりました。
私の祖母は、私が小学生の頃に亡くなりました。
私の父は、ここに来る前に交通事故で亡くなりました。
世間から見れば、不幸の塊みたいな人間です。
それでも、私は幸せでした。
私にはバレエがあったから・・・
踊りを踊っている間は、自分が不幸な事を忘れられたから・・・」
不思議と涙は出てこなかった。どうしてだろう・・・
あんなに、泣きながら悩んでたのに・・・
「踊りかぁ・・・♡明日見せてね♪」
龍馬が笑顔で可愛いポーズをしている。
「は、はーい。」小春は、引きつった笑顔で答えた。
「で?小春!娯楽って何がある?交通事故って何?!」
こうして、龍馬の質問責めが始まった・・・