先の世
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。
「小春♪着いたよー!」先を歩いていたおりょうが、小春の方を振り返りながら声を掛けた。
「やったぁぁあ、着いたぁ!はぁ、はぁ。」
龍馬とおりょう一行は、山奥の温泉宿を目指し歩き続けていた。
なんなん?!幕末の人達の体力!なんで、こんな草履いて一日中歩けるの?しかも、ほとんど山道だよ?
龍馬さんなんて、怪我してるっぽいのに普通に歩いて、しかもずっっとふざけながら喋ってたし・・・
はぁ、そういえば私の靴どうしたんだっけ。
・・・あ、そうだ。こっちの世界に来る直前、歩き疲れたから靴脱いで防波堤に置いて、そのままだ!
叔父さん達、私の事捜してるかな?靴を防波堤に置いて消えるって・・・
確実に自殺・・・って事になるよ、ね?
そしたら、マンションが売られちゃって、お母さんの宝物も処分されちゃうのかな・・・
ヤバい!!戻らなきゃっ!!
「・・・はる? 小春?のぼせるから上がろ?」
宿に着いた後、一緒に露天風呂に入り無言で考え事をしていた小春にしびれを切らし、おりょうが声をかけた。
「はっ!すみません!」
小春は、勢いよく立ち上がり返事をした。
が、瞬間立ちくらみ尻もちを着いた。
おりょうが顔に掛かったお湯を拭いながら爆笑している。
「ぶはははははっ!大丈夫?こはるぅぅっ、はははっ」
「ホント、小春は面白いねぇ」
おりょうは、そう言いながら小春を支えながら身体を起こした。
二人で笑いながらお風呂から上がった。ふと、見上げた夜空はたくさんの星が輝いていて、プラネタリウムの星空をコピペしたみたいだった。
いやいや、違う。これが本物の夜空なんだ・・・
「おりょうさん、私たぶん未来から来たんですけど・・・
元の世界に帰りたいです!」
「未来?未来って何?どこ?」
予想外の返事に小春は、かなり動揺した。
「もしかして、先の世って事?例えば、うちに娘が居たらその孫が小春で・・・その小春が先の世から此処に来た・・・とか?」
「おりょうさん!That's Right!!たぶん孫の孫?くらいかも♪」
「・・・・・・えっ、はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ?!!」
おりょうは小春に巻いてあげていた浴衣の帯をほおり投げた。