表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/21

一人

「1年5組の仲原小春さん、至急職員室まで来てください。」

3時間目の授業中、突然放送で呼び出された。

職員室に行くと、いつもより老け顔に見える教頭先生が私が来るのを待っていた。

歳の割に短いスカートを履いてる教頭先生の違和感が妙に気持ち悪かった。


「仲原さん、落ち着いて聞いてね。」

「お父さんが、交通事故で亡くなったって。今、お父さんが勤務されてた病院から電話があったの。

私が運転するから、一緒に病院行きましょう。」


?ちょっと、待ってよ。

なんで交通事故?なんでお父さんが交通事故にあうの?


何も、考えられなかった。教頭先生に言われるまま、自分のバッグを持って車に乗り込んだ。

死んだのは自分なんじゃないか。って思うほど、頭の中も、私の顔も身体も全部真っ白だった。



冷たかった・・・何もかもが。

お父さんも、私も、空気も、音も、色も、世界の全てが……



目が覚めると、私は病院のベッドの中に居た。

無機質な天井を眺めながら、涙が零れて右耳が溺れた。


本当にひとりになっちゃった。家族が・・・

皆、いなくなっちゃった・・・




「龍馬さん、もうすぐ着くみたいですよ。」

おりょうは揺れる船上で、自分に寄りかかって寝ている龍馬を優しく起こしていた。

「う~ん、もーちょっと~」

そう言いながら、おりょうの膝の上に頭を乗せ、おりょうの匂いをクンクン嗅いでいる。

「こら!」ペチンと龍馬の頭を軽く叩く。

「もー、おりょうのケチー。」

口を尖らせた龍馬が、おりょうを後ろから抱きしめた。

「おりょう!夫婦(めおと)ぜよ!ずっと、ずーっと一緒やき、こんな事しても良いがやろ?」

「そやかて、くっつき過ぎやぁ」

嫌がりながらも、おりょうは頬を赤らめながら笑っていた。



「よ~来やった、待ってもした〜!龍馬さん、おりょうさん!!」

港に着くなり、薩摩の藩士達が二人を出迎えた。

その迎えが嬉しかった龍馬は、いきなり歌いながら踊りだした。

「さぁさぁさぁさあ、着きもーーーしたっ!さぁさぁさぁさあ、薩摩ぜよぉぉぉぉおっ!」

「まずは温泉か?上手い飯か?はぁ、楽しみやのぉ!」

「おりょう!楽しみ過ぎて小便行きとーなった!」

「はっ?」

「もー、呆れるっ!うちは、先に宿に行ってますから!」

と、言い残し本当に藩士達と去って行った。


龍馬は、足早に港の木陰に隠れて用を足すと、少し海辺の方に歩き太陽の光を全身に浴びていた。


一瞬、光が強くなり思わず目を綴じた。


ドスン!!


眩しさが和らぐと、音のした方を向きながら銃に手を掛ける。


そっと、近づくと髪の長い女が見た事のない着物を着てうずくまっていた。


龍馬は銃から手を離し、声をかけた。「おまん、大丈夫か?」

「こん着物はどーしたがや?足の出てしもーとるき、寒かろ?」


女はえらく震えていた。寒さからではなく、恐怖で震えていた。全身からビリビリと死を感じるほどに・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ