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高知

小春は浜辺に立つ、お龍とお龍の妹の銅像を眺めていた。

気持ちいい潮風と奥に見える青い海が、お龍との日々を思い出させていた。



ホテルのテレビでおりょうさんの描いた絵と、私のトウシューズを見た後、泣き崩れてしまい暫く動けなかった。

何とかスマホを手に取り、テレビに出ていた家主さんについて検索したけど、見つけられなかった。


その代わり、おりょうさんの銅像があるこの場所がヒットしたから今朝来てみたけど・・・


「おりょうさん、もっと美人だったけどなぁ…」


お龍の、色々な表情を思い出しながら小春は微笑んだ。


「そうでしょうなぁ。」


「えっ?」


小春は驚いて振り返ると、白髪で姿勢の良い、お婆さんが笑顔で立っていた。


「あ!テレビに出られてた、家主さん!」


「あははっ。そうそう、その家主です。坂本龍馬の姉、乙女の末裔です。

バレリーナの小春さんですね?」


白髪のお婆さんは、そう言うと優しく微笑んだ。


「は、はい。」

私は戸惑いながらも、そう答えた。


「お待ちしておりました。やっと、これを渡せます。」

そう言いながら、お婆さんが紙袋から木箱を取り出した。


「それ、テレビに写ってた・・・」


小春は木箱を受け取りながら、胸の奥が苦しくなっていた。


「小春さん、テレビに写した手紙は偽物です。

こちらが本物。

お龍が小春さんに宛てた手紙です。」


「へ?」


「どういう事ですか?」

小春は、全く分からなかった。これは、どういう状況なのだろう。考えようとしても、頭が働かない。


「龍馬の死後お龍は、一時期乙女の家に世話になっており、その際この木箱を託されたそうです。

どうやら、龍馬がピストルで撃ってしまった娘の忘れ物だから、その娘がこれを取りに来るまで大事に保管しておくように。

そう伝えられたそうです。

そして、その木箱は代々我が家の跡取りに、ある言葉と共に伝承されてきました。」


「ある言葉?」

お婆さんは、ゆっくりと頷くと続けた。


「バレリーナの小春が有名になったら、この木箱を世に出し小春に手渡す事。」


「えっ?それって…」


お婆さんは、空の紙袋を綺麗に畳み小春に手渡し、小春の手に自分の手を重ねながら、

「私もだいぶバレエに詳しくなりました。あなたが海外のバレエ団でトップになるくらい頑張って有名になってくれて良かった。」

そう言うと、立ち去ってしまった。


「あ、あの!」

どんどん、遠くなるお婆さんを見ながら、どこまで話して良いか考えてしまい、中々言葉が見つからない。


姿が見えなくなりそうな時ようやく、

「あのー!長い間、本当に、ありがとうございましたー!!」

そう叫び、深々と頭を下げた。

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