表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/21

覚悟

最後のポーズを決めた小春は、舞台の中央へと行き龍馬達の方を向くと丁寧にお辞儀をした。


「ブラボー!」

龍馬がいつもの様に、大きな拍手をしながら叫んだ。

その横で、おりょうも感動した様子で小春に拍手を送っていた。


「龍馬さーん!おりょうさーん!大好きぃぃい!」

そう叫びながら、小春は二人に抱きついた。


二人は少し驚きながらも、笑顔で小春を褒めながら撫でた。


龍馬は、興奮した様子で声をかけた。

「そん靴を履いて踊るとげに、天女のようやったぜよ!」


その言葉に頷きながら、おりょうも「うん、うん!本当に、この世の物とは思えんくらい美しかったぁ。」


「ありがとうございます!」


一歩引いて、頭を下げながら小春は二人に伝えた。


小春は、二人の正面に座るとトウシューズを脱ぎ始めた。最後、舞台全体の端をぐるっと大きな円を描く様に、自分自身も高速でターンしながら回る時に少し、滑ってしまったからだ。


足は捻ったりしていないみたい。

大丈夫。


トウシューズを脱ぐと、龍馬が身を乗り出して見ていたので、小春は龍馬にトウシューズを手渡した。


小春の呼吸と心臓の鼓動が、少しずつ落ち着いてくる。しかし、小春の心の中には灰色のモヤモヤした物が渦巻いていた・・・


「小春?

うちらに、伝えたい事があるなら言ってごらん?」


おりょうが優しく声をかける。


小春は深呼吸をした後、こう言った。


「私、私・・・

死神、って言われていたんです。」


小春は、淡々と小学生の頃の話しをした。

そして、自分自身もそう思っているという事も……


「小春、それは考え過ぎでしょ?」


おりょうの言葉に、小春は俯きながら首を横に振った。

「だって、だって・・・

龍馬さん、死んじゃうもんっ!」


馬鹿だ。馬鹿だ!何でそんな事言うのよ!

黙ってよ!私の口!!


小春は泣きながら、声を震わせ言った。

「私、歴史のテストとか全然ダメだったけど、それでも有名だもん!ドラマとか、テレビとかでやってたもん・・・」


小春の呼吸がまた、早くなる・・・


「龍馬さんは、おりょうさんと鹿児島に新婚旅行に行って、その後、何年後か分からないけど京都で、殺されちゃうんだもん!

やっぱり、私のせいで私と仲良くしちゃったから!二人の幸せを、私が、私が!壊しちゃったんだよ・・・」



小春は怖くて、恐ろしくて、顔を上げる事が出来なかった。


はぁ、はぁ、はぁ。

「ごめんなさい。ごめんなさいっ!!

急に、こんな事言ってごめんなさい!!」


小春は、俯いたまま叫んだ。


少し間を置いた後、おりょうが小春の両頬に手を当て、目を合わせながらこう言った。


「小春が謝る事じゃない。

大丈夫!龍馬さんが命を狙われてる事くらい知ってるし。実際、切られたしね。うち、そんな覚悟も無く、龍馬さんと夫婦になった訳じゃないからね?」


おりょうさんは笑顔だった・・・

あんな酷い事言っちゃったのに・・・


「小春、私は?私もすぐに死ぬの?」


「・・・分からない。知らないです。ごめんなさい・・・」

小春はまた、ぽろぽろと涙を流していた。


「小春、だったらうちが証明して見せる。

何がなんでも生きてやる。

どんな事をしても長生きするから。

だから、あんたは死神なんかじゃない!

誰も不幸になんかしない!

だって、あんたは光り輝く天女様なんだから!!

小春の踊りを見て、うちは本当に幸せだったんだよ・・・

龍馬さんと毎日、小春の踊りを見て笑い合ってさ。

うちの人生の中で1番、幸せな日々だったんだから!うちらの事、勝手に不幸になるとか決めつけないで!」


小春は、初めておりょうの涙を見た。


「小春、わしゃ先の世でそがに有名なんやな!」

龍馬は、いつもの笑顔でそう言った。

そして、

「小春、もうひと踊りしてくれんか?」

と優しく小春にお願いをした。


小春は、ゆっくりと頷くとトウシューズではなく、先が柔らかいバレエシューズを履き、舞台の中央へと歩く。


その後ろ姿を見ながら、龍馬は震えるおりょうの肩を抱き寄せ、力強く抱きしめた・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ