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レオタード

「おりょうさん!私の踊りを見てくださいっ!」


小春の格好を見たままフリーズしてしまっている、おりょうに小春は頭を下げながら言った。


おりょうは深呼吸した後、ゆっくりと小春の汗の滲んだ肩に手を置き、優しく耳元で囁いた。

「とりあえず、着物を羽織りなさい。若い娘がそんな格好してたら、襲われちゃうよ?

うちが、宿の人に小春の部屋に近ずかんよう、言って来るから。それまでは、大人しくして?」


「はいっ」小春は、顔を真っ赤にしながら返事をした。


・・・い、色気が。凄すぎますよ、おりょうさん。


おりょうは、颯爽と主屋の方へと戻って行った。


小春は部屋へ戻ると、タオルで汗を拭いた。拭きながら改めて、自分が着ている黒いシンプルなデザインのレオタードを見てみる。


うーん、自分にとっては普通なんだけどなぁ。

小さい頃からバレエのDVDを見てバレリーナに憧れて。バレエを習い始めてからは、身体のラインが分かるシンプルなデザインのレオタードを着るのが当たり前だった。


けど、バレエに興味が無い人や見たことが無い人、ましてや、幕末のバレエすら何なのかも知らない人達にとっては、恥ずかしい格好…なのかな。


小春は、おりょうに言われた通り着物を羽織り、もう一度バッグの中身を確認した。


これ・・・舞ちゃんから貰ったプレゼントだ。


A4サイズほどの薄い紙袋を取り出し、中身を出した。中には未開封のレオタードが入っていた。

小春は、中のレオタードをそっと取り出していく。


舞ちゃんは、同じバレエ教室に通う3つ年上のお姉さんだった。学校でも、バレエ教室でも友達は出来なかったけど、舞ちゃんだけはレッスン中に何度か話しかけてくれた。


そして、海外のバレエ団に入団する事になってお別れする日、私にそっとこれをプレゼントしてくれた。

身長が高く、手足が長くて、美人。バレエをする為に生まれて来た様な人だった。そんな皆の憧れの人が、どうして私なんかの為にプレゼントをくれたのか分からない……


でも、凄く嬉しかった。飛び跳ねるくらいに嬉しかった。早くこのレオタードを着てレッスンしたかった。


レッスンに行く度に中身を出そうと思うけど、出せなかった。他のレッスン生に、私だけ舞ちゃんとお揃いのレオタードを着てレッスンしていたら、何を言われ何をされるか、だいたい検討がついていたから…


結局、袋から出さないままバッグの中に入れっぱなしにしてしまっていた。


初めて、袋から出したレオタードはバレエの衣装並に可愛かった。


七分袖で、袖とデコルテの部分が透けていて薄くピンクの花柄が見える。胸から下は薄いピンク、そしてウエスト部分からは袖と同じ素材のスカートが付いている。


舞ちゃんが着ていたレオタードは、薄いブルーだった。舞ちゃんが踊る度に透けた花柄のスカートがふわぁっとなって、とっても素敵だったんだ。


やっと着れる。

これを着て踊れるんだ!


小春は、着替える為に襖を閉めて着物を脱いだ。


「小春っ!おまたせ!」


襖が勢いよく開いた。


「もーーー!何してんの!?着物羽織りなさい!って言ったっしょ!!」


お、おりょうさんが・・・キ、キレてる・・・

しかも、何か龍馬さんも隠れながらめっちゃ見てるし・・・(笑)

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