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オーパーツ

「皆さん!!見てください!こちらが先日発見された、龍馬とおりょうが残したと思われる手紙です!そして、この手紙と一緒に発見された物があるんですよね?」

最近、よくテレビに出ている若手芸人コンビのインテリ担当が、興奮気味に叫んでいる。

その雰囲気に戸惑いながら、家主が木箱を手に戻って来た。

「では、開けますね?」

「はい!お願いしますっ!!」

テレビから効果音が流れ出すと同時に、ゆっくりと木箱が開けられた。

「おっと?これは、手紙ですかぁ?」

長方形の木箱と同じくらいの大きさの和紙が木箱の内蓋の様に入っている。

そっと、和紙を持ち上げると・・・

周りは茶色く変色しているが、真ん中辺りに筆で天女の姿が描かれていた。

そして、箱の中には・・・

薄茶色に変色した、ボロボロの紐とその下には何となく、トウシューズらしき物が見える。



な、んで。 どーして?


涙がぽろぽろと溢れ出る。

小春はテレビ画面に近寄り、膝から崩れ落ちた。

それでも、画面を注意深く見ている。溢れる涙をそのままに、ついさっきまでは聞きたくなかった若手芸人の声に耳を傾ける。


おりょうさん・・・おりょうさん、ごめんなさい。ごめんなさい!


テレビに集中したいのに、心の声が邪魔して全然入って来ないよ…


・・・・・・っていう状態だったんですねー!」


「いやー!考えれば、考える程分からなくなりますよね!!」


若手芸人が番組の用意したフリップを指さしながら、説明している。

「これは、どう見てもクラシックバレエで用いられる、このように先が平になっているトウシューズに間違いありません!しかし!!このトウシューズがこの世界に生まれたのは、1832年頃のイタリアなんです!

バレリーナがイタリアの靴職人に依頼して作らせた、爪先で立つ事の出来るこのトウシューズ。当初は、シューズの先を少し固くしただけだったそうです。そして、今の様に先が平な形になるのは、


なんと!1900年以降なのです!!


20世紀以降にしか存在しないトウシューズが何故、1866年に龍馬達が鹿児島から送った手紙と共にあったのか!


・・・この事実は、説明が出来ない、歴史上辻褄が合わない、歴史品、オーパーツなのですっ!!」


場面が変わり、スタジオでさっきの芸人を囲んで、見慣れたタレント達が座っている。


テレビの中では、タレント達が何か話しているが小春には何も聞こえなかった。




あれは、間違いなく私のトウシューズ。


さっき、少しだけ写った天女の絵。あれは、おりょうさんが私の踊りを見て書いてくれた物なんだから。


龍馬さん、おりょうさん、私は生きてるよ。


あの頃、高校生だったけど、今年で25才になります。


私、私ね、大好きな踊りを仕事に出来たんだよ!


ヒック、ヒック、ヒック

「おりょうさーーーーん!!龍馬さーーーーーん!!会いたいよーーーーーーー!」

小春は泣きながら叫んだ。

二人の笑う顔を思い出しながら・・・


二人にまた会いたい。

会って謝りたい。

お礼を言いたい。

それから、

また私の踊りを見てほしい。

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