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神官の撲殺〜銃師出番なし〜

宿に戻った俺はタバコを咥えながら、今日の。正確にはさっきの公園での出会いまでを振り返る事にした。

まず、俺は案の定異世界に転移していた事がほぼ確定した。

目下のやる事はレナとのクエストだが、60発の銃弾が補充出来ている。発動方法は不明確だが視力強化のスキルも使える事も確認出来た。

この状態ならそれなりの収入を今週は得ることが出来そうだ。

レナの教育については手は考えたが、実際独り立ちまで終えられるかは微妙だ…


それに自称女神。俺の素性を知っていた点で、転移の関係者なのは間違いないだろう。

問題は奴が今夜俺の前に姿を現した理由だ。

俺の願いを叶える…普通に考えればレナを助けたボーナスなんだろうが奴は1つミスをした。

俺はあくまでレナの身代わりとして召喚されたと奴は言った。俺はこの世界においてもあの晩死ぬ予定であり、それを奴は利用した。

仮に願ったとして今後俺を体良く利用する為の貸しにするつもりだろう。

おそらく俺の望みも読まれている。

掌の上か、無意識にタバコを噛みしめている。

仕方ない、それはそれとして明日に挑むしか無さそうだな。



ゴブリン狩り2日目、俺は昨日爺さんに試されたあと武器屋で買ったメイスをレナに渡した。

もちろん、傷物なった外套も買い替えた。

恐縮して受け取らないと言い張るレナに、

「昨日、ゴブリンを倒せなかった事を謝るなら、今日このメイスを振るって昨日の分を取り戻してくれ」

と、またまた強引にやらせることにした。

どうやらこの世界、神官の絶対数が少なく、その上男性となると更に少ない。

その為、メイスの使用者数が少なく、昨日買ったコレは中古ではあるものの、使用者の魔力を打撃に上乗せ出来るというレア物だ。嬉しい事にノーマルな剣や杖と然程値段が変わらないという程度には不人気商品のようだった。

店員には

「メイスなんて、金のない冒険者か酔狂な神官しか買っていかないよ」

とまで言われてしまった。


最初は怯えていたレナに手本として、3匹ばかりゴブリンを屠る所を見せた。

「と、まぁこんな風に適当に振り回せば、ゴブリン程度ならなんとでもなる」

ということで、そのメイスをレナに渡す。

「本当に適当でいいんですか?」

不安で泣きそうな顔をしているが、ココは心を鬼にしないと先には進めない。

「大丈夫だ、それに仕留め損なったら僕がフォローする」

と、左手に持った拳銃を見せる。

「正面、2匹来るぞ!」

銃師スキルの視力強化で敵の位置を指示する。

「うわぁーー!!」と絶叫のような叫びを上げて半泣きでメイスを振り回すレナ。

文字通り適当に打ち付けたのだろうが、ゴブリン2匹は「グゥエッ」と呻いて絶命している。それを見たレナは、

「へっ?え?…やりました!やれました!!」

と、はしゃいでいるようだ。

そりゃ、レナには自称女神が憑いてる、仮に事実だとすれば並の人間とは魔力が違うはずだからな…力任せの俺と魔力ブースト込みのレナなら悪くて同等、普通にふりまわしたらレナの方がダメージが出せるだろ。

気を良くしたのか、そのままゴブリンの群れに突撃するレナ。俺は昨日のレナのように、カトラスで角を折りながらレナの後ろをついていく。昼までに既に20匹近く一人で撲殺していくレナ…

青春だなぁ…とはいえ、そろそろ休憩させないとマズいな。

「レナさん、そいつ倒したら一旦森の外に出て昼にしよう」

「はーい!」

最後の一匹を始末して角を回収。森の外に足を向ける。

「攻守交代、森を出るまでは僕が相手をするから、角の回収をお願いします」

と、ダガーをポケットから取り出しレナに渡す。

見たところ、やはり疲労しているようだ。

ゴブリンを倒せた事でアドレナリンが出て、疲労の自覚が無いようだった。

レナのアドレナリンブーストが切れるのと、森を出るのはほぼ同時だった。

見渡しのいい丘に腰掛け、食事を出す。

「疲れて食べられないは、なし」

宿で弁当を頼んでおいて正解だったようだ。

レナは無言で握り飯二個を食べると、ウトウトし始めた。

初めてのモンスター討伐としては、頑張った部類だろう、体力と魔力を消耗していれば加減もわからないだろうしな。

「レナさん、眠いなら少し寝て下さい。周りは僕が見ておきますから」

レナは目をこすりながら、頷いて

「くぅーくぅー」と寝息を立て始めた。

無防備だな、年頃の娘が…まぁ、原因は俺がメイスを渡したせいだから、文句は言えないな。

レナの寝顔をみてると、やはり昨夜の事が思い出される…賭けに出るか、どうするか。

考えても仕方がない、少し目を閉じて俺も休む事にした。下手な考え休むに似たり。

茂みをかき分ける音が聞こえた、目を開け周囲を見渡すもゴブリンの姿は見えない。

そうそうに、レナを起こす。

「はっ!すみません、寝てました」

この様子だと飯を食ってた自覚はなさそうだな、と苦笑する。

「レナさん、君はそのまま伏せて居てくれ」

キョトンとするが、素直に伏せてくれる。

俺は立ち上がり再度周囲を見渡す…居た。

丘の下から弓兵型のゴブリンが3匹、コチラに向けて矢を放とうとしていた。躊躇なく3発眉間に弾をお見舞いする。通常のゴブリンの危険度を1とすると弓兵型の危険度は3に相当する。

奴らは矢に毒を塗っているからだ。解毒薬を持っていないと、全滅のリスクがあるため見つけ次第即時迎撃ないし弓の射程から離脱する。コレも冒険者の基本なる書物の知識だが。

見たところ、今の3匹だけだがコチラは発砲したため音で気づかれる可能性がある。

「レナさん、ここを離れますよ。僕から離れないように」

とレナの首根っこを引き弓兵型が倒れている場所まで一気に走る。

再度周りを見渡し、ゴブリンの気配が無いことを確認し弓兵型の角をレナに回収させる。

「トシさん、どうしますか?」

今日の目的である、レナの近接攻撃克服はほぼ成功している。

「街に戻りましょう。街に着くまでは、コチラから仕掛けずに進路を塞ぐ奴らだけ倒す。できますか?」

今日1日で随分と変わった目をするようになった。

「はい、行きます」

と元気よく返してくれた。

初心者にありがちな根拠ない自信で、粘ると言い出すかと心配したが杞憂だったようだ。

途中何匹か遭遇したが、カトラスとメイスの一撃で難なく処理し無事に街に着いた。

今日の報酬を貰うためにギルドへ向かう。


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