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始まりの街

レナと共に真夜中の森を抜けた俺。

幸いその後モンスターや山賊の襲撃もなく、レナの言うとおり夜明けに街に到着した。

俺は街の入り口から視界の範囲で街を観察する。

標識にはスタディオ。と記載されている。

街の名前か?見たところ中世のヨーロッパ…いや、山賊の骸をレナが収めたとき謎の光が光っていた。ならゲームの剣と魔法の世界。それに近いファンタジー世界という所か。

そうなると、銃はあれど弾は早晩無くなるな。

銃なんて余程の変わり者じゃなきゃ、剣なり魔法で事足りるだろうし。

街を眺める俺にレナが何かを言っている。

意識をレナに向けると、

「トシさん、トシさん!何か思い出しましたか?」

記憶喪失という形で道中話を進めてきたせいか、レナは街を見て立ち止まる俺が何かを思い出したのではないか。そう受け取ったようだ。

「いや、残念ながら何も…」

「そうですか…残念です。私はギルドに薬草の納品に行かなくてならないのですが、トシさんはどうします?」

「今日は街を見て歩こうと思います、縁があればまたお会いしましょう」

レナは一瞬寂しげな顔を浮かべたが、すぐに切り替えて

「私はこの街に滞在してますので、何かできる事があったら言ってくださいね!」

それだけ言うとギルドのあるであろう方向に歩いて行った。


さて、街の標識が読めたということはこの世界の文字は読めるってことだな。まずは、なんにせよ情報収集だ。

ただ、文字通り明け方ということもあり人通りはなく店もしまっている。

時間はある、行く場所も決まってるが場所が分からん以上やはり街を散策する必要があるな。

レナのあとを追いかけるのも、ストーカーみたいな気がしたので彼女の向かった逆方向から街を一周することにした。


街を一通り歩いて、必要な施設は見つけることは出来た。まず、図書館。無い可能性もあったので一安心だ。道具屋、武器屋、宿屋街、冒険者ギルドの位置も無事に把握できた。

そろそろ目的地、図書館の開館時間。

時間に関しては、時計が街のあちこちに設置されていて、字に覚えはなくても物は一緒だと理解出来た。

どれだけのことが分かるか…期待と不安を抱えて図書館の扉を開けた。


結局その日は一日図書館で過ごす事となった。予想通りここは剣と魔法の世界だと言うことが分かった。基本常識と買い物の仕方など、ほぼゲームの世界と同様と考えて良さそうだ。

で、問題はなんで剣と魔法の世界で銃なんだ?

と、ここに送り込んだ見知らぬ存在に毒づく。

日が落ちる前に宿屋街を歩き休息を取ることにした。1泊銅貨10枚…

昨日の山賊から巻き上げた分で2日は食いつなげる計算だ。なにせ宿は夕食朝食付きだ。

一昼夜飲まず食わずなのを思い出して、途端にエネルギー切れを感じる。正直すぐベットに倒れ込みたい衝動に駆られるが。

その前に俺の所持金を改めておかないとコレから先動くのに不便だ。

ジャラジャラとズタ袋をひっくり返すと、銅貨15枚に銀貨が20枚程入っていて一安心する。銀貨1枚は銅貨100枚に相当するようだ。

少なくとも2、3日で死ぬ事がないのは、精神的に楽だな。

俺はシャワーを浴びて一旦頭をリセットする。


明日はまずは両替、紙とペンを購入して、図書館へ行き、今日時点で目星をつけた資料を書き写す。

明日のスケジュールさえ決まれば、食事をして寝るだけだ。


翌朝目覚めてからも既に予定を組んでしまえば、それを済ますのに時間は対して掛からなかった。

両替、小物買い、図書館での転記。一日の予定が昼過ぎに終わったのは僥倖だった。

早々に昨夜泊まった宿(食事付きでは最安値らしい)に後3日泊まる手配をし、早速宿の部屋で魔法の契約を始めた。

図書館ででも契約出来なくないそうだが、仲間がいない現状で、自分の手札を他人に晒したくないと考えた。


契約そのものは非常に簡単であった。

魔法陣に手を添え意識を集中する、上手く世界と繋がれば通した魔法陣に応じた魔法の契約が成立する。あとは自分が、その魔法に適合するように修練するだけだ。

契約した魔法は5つ、下級3つに中級2つ。

中級は早い気もしたが時間のある内に出来ることはしておきたいという思いが強い。


これまた夕食の時間までかかると思ったのだが、一回コツを掴めば流れ作業で契約は終了した。

目的とした魔法の契約と買い物は終わっている。

残り僅かとなったタバコに手をつけどうするかを考える。

あとやるべきことは…そこまで考えて一つ抜けていたことに気づいた。

服だ、ココをまぁ俺の主観では異世界だが街を回ってる最中流石にスーツ姿の人間は居なかった。

どう動くにせよ、この世界の人間として不自然にならない格好をする程度の対策はしておいて損はない。手持ちもそれ程命の危機を心配しなくて済む程度には持ち合わせているし、山賊から失敬した武器も処理すれば多少は賄えるだろう。

とりあえず旅人を装うなら、カトラスは持っていた方がいいな…ダガーはどうする?

ポケットにしまっていた3本のダガーを取り出し、素人判断ではあるが魔法陣を転記してきた用紙を切って切れ味を試す。

一本だけ他の二本より切れ味が鋭かったので、それをポケットにしまい残りの二本は武器屋で売ることにした。

外套だけでも買っておけば困りはしないだろう。


「へい、らっしゃい!何かお探しで?」

店員が愛想良く声をかけてくる。

「いや、予算が無くてね。軍資金の足しになるかな?」

二本のダガーをカウンターに置く。

「ふむふむ、一般的な品ですな…コレだと2本で、銅貨5…いや8ですね」

「おぉ、重畳重畳。それでお願いする」

店員はスッと銅貨8枚渡してきたのを受け取り、

「少し店内見させてもらうよ」

と、踵を返すと見覚えのある女の子が目に止まった。

「こんにちは、確かレナさんでしたよね」

声をかけてたから気づく。しまった、と。コレじゃ年甲斐もないナンパだ。

レナはコチラを見ると、1拍開けてあ!と。

「その節はありがとうございました。」

ペコっと頭を下げられた。そして思い出したように

「あの窮地を救って頂いたのにまだ、お礼をしていませんでしたね」

と、腰のズタ袋に手を伸ばしたので、手で制する。

「冒険者は自己責任が基本、だからこそ困った時はお互い様ということで」

昨日図書館で仕入れた冒険者の基本論を伝えるが、どうも納得したという顔ではない…

「もし、レナさんが先日の借りが気になると言うのでしたら、冒険者登録に同行してもらえると助かります」

正直何の備えもなく冒険者ギルドに乗り込む程、俺は豪胆ではないのだ。レナさんも渋々ながらもそこで手打ちにしてくれそうだ。

「そうですね、私も先日登録したばかりなのでお役に立てると思います。ただ…」

「ただ、何ですか?」

「いえ、今の時間だと報酬の受け取りなどで混み合ってますから、新人の登録するタイミングとしてはおススメしません…お恥ずかしい話ですが私、それで失敗してるので」

なるほど、神官職それも可愛い娘と来たら引く手数多か…銃師(コレも図書館で調べた事だが)の俺も悪目立ちはしそうだ。

「登録自体さほど急いでいないので、先輩であるレナさんの都合に合わせますよ」

「でしたら、明日の朝にしましょう。そろそろ薬草集めのクエストが出る頃ですから」

「それでお願いします、ギルドの前で大丈夫ですか?」

「えぇ」

と、了承を貰った。とりあえず、明日やる事も出来た。

レナさん登録したて、だとするとランクはEか良くてD。それなら軽い仕事しか回して貰えないし、先日の山賊への対応を見てもレナさんは戦闘向きではないよな。収集がメインってことか思案していると周囲がざわついている、俺?じゃないなレナさんか衆目が集まっている。それを感じたのか彼女はコチラに軽く頭を下げて去っていった。

レナさんが去ると視線も止まった。はいはい、メタボオッサンには興味なんてないでしょーよ。

では、俺も買い物を…確か外套は防具扱いだから。と、外套を買い店を後にした。

トシ:転移者にして自称拳銃使い銃師。メタボリックな作り笑顔と声だけは人並み以上のオッサン。


レナ:神官。冒険者なりたて、トシに生命を救われている。黒のロングヘアでかなりの美形の少女。

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