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お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?  作者: 夕立悠理
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
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風邪

さて。今日からいよいよ、中間テストが始まる。中間テストは今日と明日の二日間に分けて行われる。よし、頑張るぞ。


 「朱里、大丈夫? 顔真っ赤だよ。熱でもあるんじゃない?」

なんとかテストを乗りきり、ぐったりと机に伏していると、彩月ちゃんが心配そうに声をかけてくれた。


 「あはは、テスト頑張りすぎたからかな」


 昨日、雨に降られたのと、テストの為に徹夜をしている。テストで徹夜してもそう頭の中に入らないってわかってるのに、どうしてもしちゃうんだよね。もしかしたら、そのせいで体がだるいのかもしれない。


  「とりあえず、保健室いってきなよ」

「うん、そうする」


 明日もテストがあるし、今日は早めに帰った方がいいかもしれない。ふらふらする体で何とか、保健室に行き、熱を測る。


 熱は、38℃だった。うーん、風邪だ。完璧にやらかしたな。とりあえず、家に帰る。保健室の先生には、保護者に迎えに来てもらった方がいい、といわれたけれど、お義母さんには迷惑をかけたくない。


 「ただいまー」

家に帰ると、玄関に鍵がかかっていた。車もないし、お義母さん出掛けてるんだろうな。やっぱり、連絡しなくてよかった。そう思いながら、鍵を開け、家の中に入る。


 「えーっと、薬は……」

確か、市販薬がこの辺りにと、台所をごそごそと探す。


 「あ、あった!」

薬を見つけたので、とりあえず、水で流し込み、ふらふらしながら二階に上がる。


 と、

「あれ」

もう自室は目の前だと言うのに、急に力が抜けた。その場にへたりこんでしまう。これは、熱が上がってきちゃったかな、と、どこか遠くで思いながら、私は意識を失った。





 「……り、朱里!?」

誰かが身体を揺さぶっている。おでこにあてられた手がひんやりとしていて、気持ちいい。


 「ひどい熱だ。すぐに運ばないと」

「……ゆう、くん?」

何とか瞼をうすく開けると、優くんが心配そうな顔をしていた。


 「朱里、立てる?」

「ううん」

身体に力が入らない。そういうと、優くんは私を抱き上げた。


 そして、そのまま私の部屋に入り、私をベッドに横たえる。


 「とりあえず、氷枕と──」

「……いかないで、ゆうくん」

優くんの制服のシャツを掴む。優くん、いかないで、私をおいていかないで。



 「わかったよ。朱里の傍にいる」

そう苦笑して、私の頭を優しく撫でる。すると、何だか眠くなってきた。私がゆっくりと瞬きをすると、優くんは優しく、おやすみ、と言ってくれた。なんだか、いい夢が見られそうだ。そう思いながら、目を閉じた。




 「うーん、よく寝た」

欠伸をしながら、身体を起こすと、身体が重いことに気づく。ん? と思って、布団に目を落とすと、お兄ちゃんが、伏せていた。

 

 えっ!? なんでお兄ちゃんが私の部屋に!? 二階に上がってから全く記憶がない。看病してくれたのだろうか。


 そういえば、左手が暖かい。そう思って、左手に視線をやると、


 「!?!?」

お兄ちゃんと手を繋いでいた。えっ! うそっ!? お兄ちゃんが自分から手を繋ぐとは思えないから、私がせがんだんだろうか。そんな、熱で心細いなんて、今時高校生になって、そんな。


 あまりの恥ずかしさに、熱は下がったはずなのに、顔が真っ赤になるのを感じる。


 せめてもの証拠隠滅を図ろうとして、握った手を離そうとするも、お兄ちゃんにがっちり握られていて、抜け出せない。お兄ちゃん、案外力強いよね。


 そうこうしている間に、お兄ちゃんも目を覚ました。

「あかり……? 顔が真っ赤だよ。まだ、熱があるんじゃ──」


 「だっ、だだだ大丈夫! 大丈夫だから!」

「そう?」

「お、お兄ちゃん、そういえば、私桃缶が食べたいなぁ、なんて」

「わかった、とってくるよ」


 「ありがとう! お兄ちゃん」

さりげなく離された手にほっとするような、残念なような。ち、違う。全然、残念じゃないから!


 誰かに聞かれてるわけでもないのに、言い訳をしながら、目を閉じた。

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