考え事
──突然言ってごめん。すぐにじゃなくていいから、考えて欲しい。
「朱里?」
不思議そうなお兄ちゃんの声にはっとする。お兄ちゃんは、遊園地から駅に帰った私を迎えに来てくれていた。
「ごめん、考え事してた。お兄ちゃんは、もし私が、」
「うん?」
私が、告白されたっていったら、どうする?
いいかけた言葉を飲み込む。お兄ちゃんのことは、もう諦めたんだし、それに、これは、私の問題だ。
「ううん、なんでもない」
「そう?」
「うん。迎えに来てくれて、ありがとう」
「……はぁ」
家に帰って、ベッドに転がる。誰かに告白されたのなんて、初めてだ。そもそも、前は、お兄ちゃん以外興味がなかったから、男子と話すこともあんまりなかったんだよね。
高校生になったんだし、いつかはお兄ちゃん以外の人が彼氏になったりするのかな、と思ってた。でも、それがこんなに早く起こることとは考えてなかった。亮くんのことは、もちろん嫌いじゃない。むしろ、好きだと思う。でも、それは恋愛的好意とイコールではなかった。今までそういう目で見たのは、お兄ちゃんだけだ。
嫌いじゃないなら、とりあえず、付き合ってみるべき? そんなの失礼じゃないかな。いや、でも、付き合ってから産まれる恋もあるかも。
「どうしよう」
返事は、すぐじゃなくていいみたいだし、もう少し、考えよう。
「なるほど。それで、最近、朱里と田中、よそよそしかったんだ」
「……うん」
彩月ちゃんに、亮くんと喧嘩したのかと指摘されて、誤魔化すことができずに、話してしまった。
「それで、どうするの?」
「どうしよう」
あれから一週間も経ったというのに、未だに返事ができていない。告白の返事って、大体いつまで待ってもらえるんだろう。でも、あまり待たせ過ぎるのもよくないよね。
「私は、朱里の幸せだけを考えるなら、付き合ってみてもいいんじゃないかと思うよ。……安全を考えるなら別だけど」
「り、亮くんって、そんな危険な人物かな?」
「いや、田中じゃなくて……いや、やっぱりなんでもない」
そこで切られると、余計気になる。けれど、彩月ちゃんはその先は言わなかった。
「田中のことは嫌いじゃないんでしょう?」
「うん、嫌いじゃない」
「小鳥遊先輩のこと、卒業したっていってたし、だったら、付き合えばいいんじゃないかな」
「やっぱりそう思う?」
「うん」
そっかぁ。彩月ちゃん的には、付き合うのに賛成みたいだ。彩月ちゃんの意見も参考にして、もう少し考えよう。