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お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?  作者: 夕立悠理
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
19/82

良いこと

「──というわけで、誰かわからないけどお兄ちゃんには、好きな人が、いる、みたい」

生徒会の仕事が終わったあと、愛梨ちゃんと喫茶店に入り、報告する。


 「そっか、先輩好きな人がいるのかぁ」

愛梨ちゃんは、全く驚くことなく、むしろ、当然といった様子だった。

「でも、彼女はいないんだよね?」

彩月ちゃんも冴木先輩も、お兄ちゃんに好きな人じゃなくて、彼女がいるなら、そう言うだろうし。

「うん、まぁ、それは……」

「だったら、まだ諦められないよ!」

愛梨ちゃんは、よりいっそうお兄ちゃんへの思いを強くしたように見えた。だから、協力するのは難しいかもしれない、と言うつもりだった私は戸惑う。でも、ヒロインにはそのくらいのガッツが必要なのかもしれない。


 「そっか」

「うん! だから、これからもよろしくね!」

愛梨ちゃんは相変わらず、弾けるような顔で微笑んだ。




 「ただいまー」

家に帰ると先に帰っていたお兄ちゃんが、玄関で出迎えてくれた。

「おかえり、朱里」

「たっ、ただいま、お兄ちゃん!」

直前にお兄ちゃんの話をしていたので、ちょっと気まずい。それに、今日学校で恥ずかしいことも言っちゃったし。生徒会の仕事をしているときは、集中していて気にならなかったけど、改めて思い返すと会いたかったから、なんて、恥ずかしい理由だ。


 「朱里?」

思い返して、真っ赤になっている私をお兄ちゃんが心配そうに覗き込んだ。

「な、なんでもないよ! なんでもない」

慌てて首をぶんぶん振りながら、リビングに入ると、おいしい料理の香りがした。


 「ハンバーグの香りだ!」

ハンバーグは私の好物だ。歓声をあげると、お義母さんは微笑んだ。

「お帰りなさい、朱里ちゃん。今日のハンバーグは、優が作ったのよ」

「お兄ちゃんが!?」

どうしたんだろう、お兄ちゃんが料理をするなんて珍しい。お兄ちゃんは、もちろん、料理も上手なんだけど、滅多にしないんだよね。それこそ、相当機嫌がいいときとか。


 「お兄ちゃん、何か良いことあったの?」

私が尋ねると、お兄ちゃんは照れたように顔を背けた。

「たまたま気分が乗っただけだよ」

……絶対うそだ。でも、お兄ちゃんがそう言うときは、絶対理由を教えてくれない。なので、追求するのは諦め、ご飯をよそって、席に座る。


 「いただきます。……うーん、おいしい!」

ハンバーグは、口にいれた瞬間肉汁が溢れた。めちゃくちゃおいしい。

「すごく美味しいよ、お兄ちゃん!!」

この感動をなんとかお兄ちゃんに伝えたいのに、美味しい以外言葉にならない。


 「そう? それなら良かった」

結局その後も、私はただ美味しいとひたすらいいながら、食べ進めるのだった。



 夜。いつものように、明日の日課を準備していると、メールが来た。亮くんからだ。


 『今日の放課後、皆で週末に遊園地にいかないか、っていう話になったんだけど、小鳥遊さんもこない?』

活発で優しい亮くんは、この一ヶ月の間にクラスの中心人物になっていた。こういった、クラスで何かしようって時に、取りまとめてくれるんだよね。私は、生徒会にすぐいくから、そういう催しの時に、話を聞きそびれることも多いけど、こうやって、メールをくれる。


 『行きたいです! 教えてくれてありがとう』

と、亮くんに返信して、ベッドに潜り込む。



 今日は、ハンバーグも食べれたし、遊園地にいく予定もできたし、いい日だったよね。

でも、お兄ちゃんの好きな人も、良いこともわからずじまいだった。


 「まぁ、いっか」

お兄ちゃんの好きな人はいずれ、愛梨ちゃんになるんだろうし。わからなくても、問題ないよね。私はとにかく、二人の邪魔にならないようにしよう。そう決めて、目をつむった。

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