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お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?  作者: 夕立悠理
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
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部活動

「小鳥遊、ちょっといいか?」

放課後。彩月ちゃんとまた部活動見学をしようとしていると、担任の先生に声をかけられた。彩月ちゃんは、先生の用事が終わるまで待ってくれるみたいなので、急いで先生のもとへと向かう。



 「何ですか?」

「部活、何に入るか決まったか?」

「? いいえ」

まだ、迷っていて今から見学に行くところなのだというと、先生は私をじっと見つめた。

「俺が生徒会執行部担当の教員なんだが、お前、生徒会の補佐をするつもりはないか?」

「……え」


 生徒会の補佐といえば、確か入試でいい成績を修めた生徒が優先的に声をかけられるんだよね。ヒロインももちろんその一人で、生徒会の補佐になることでお兄ちゃんと親しくなっていくのだ。


 「でも、私成績がそんなに、いい方じゃ……」

お兄ちゃんに勉強を教えてもらって、それなりに進学校として有名なこの高校に入学することはできたけれども、トップレベルの頭脳を持っているかと言われたら、そうでもない。


 「あー、いや、成績よりもな、今は手綱を握っといてほしいやつがいてだな……。それなら、お前が適任だろうと、冴木が言ったんだ」

手綱? 生徒会にそんな暴れ馬のような人っていたっけ。誰のことだろう。


 「まぁ、とりあえず、考えてみてくれ」

「わかりました」


 先生の話はそれでおしまいのようなので、彩月ちゃんの元へと向かう。今日も色んな部活を見学したあと、彩月ちゃんは今日は塾がお休みだということで、一緒に喫茶店にいってパフェを食べることにした。


 「んー、美味しい!」

私はイチゴのパフェを、彩月ちゃんは、白桃のパフェを注文した。四月だからか、桜の砂糖漬けが散らされたパフェは、見た目もかわいくて、美味しい。


 「ところで、朱里は何部に入るか決めた?」

彩月ちゃんは、手芸部に入るつもりらしい。手芸部は、活動日数がゆるく、塾に通っている彩月ちゃんには都合がいいそうだ。


 「まだ、悩んでる」

「ちなみに、何部で悩んでるの?」

「野球部と、料理部と、テニス部と、オーケストラ部と、あと、生徒会、かな」

「生徒会?」

彩月ちゃんに、先生に言われたことを話す。すると、彩月ちゃんは途端にあー、と納得した顔になった。


 「ごめん、私がいったことだけど、その選択肢なら、野球部のマネージャーは少なくともやめといた方がいいと思う」

「え? なんで?」

「下手すると、血の雨が降ることになるっていうか……」

私、そんなにマネージャーに向いてないかな? ちょっと悲しい気分になっていると、彩月ちゃんは慌てて否定した。


 「そうじゃないよ。そうじゃなくて、おんなじマネージャーっぽい、仕事なら生徒会の補佐の方が朱里には向いてるかなって!」

「そうかな?」

「うん、うん、絶対そう!」

なぜか、彩月ちゃんは異様に生徒会推しだ。でも、部活と言えば、学生生活の象徴みたいなもの。彩月ちゃんの意見も参考にして、じっくり、考えよう。



 夜。明日の授業の教科書を、準備していると、電話がかかってきた。冴木先輩からだ。どうしたんだろう。


 「もしもし、朱里ちゃん?」

「もしもし、どうしたんですか、冴木先輩」

お兄ちゃんに用事があるなら、直接お兄ちゃんに言うだろうし、私に用事があるなんて珍しいな。


 「足立先生から聞いた? 生徒会のこと」

足立先生は、私の担任の先生だ。そういえば、私を生徒会補佐に推薦してくれたのは、冴木先輩だった。


 「はい、聞きました」

「それなら、良かった。もし、朱里ちゃんがよければなんだけど、ぜひ、入ってほしいんだ」

でも、既に、一人補佐として生徒会に入っていると聞く。私が、入ってかえって邪魔にならないだろうか。


 「それが、入ったのは入ったけれど、優に夢中でね」

「……ああ」


 なるほど。そういうことか。でも、それなら、お兄ちゃんが言ったら仕事してくれるのでは?


 「それに加えて仕事はしてくれようとするんだけど、その何て言うかすごく、ドジな子なんだ。その子がやらかす度に大魔王が不機嫌になるから、もう、大変で……」

だ、大魔王? 聞き間違いだよね。そんなRPGみたいな名前のひと生徒会にいないし。


 「俺の胃のためにも、ぜひ、考えてみてほしい」

力強くそういったあと、電話は切れた。



 お兄ちゃんは生徒会の会長だ。お兄ちゃんと、適切な距離をとる、というのが高校に入ってのひとつの目標だ。だから、生徒会は、やっぱり断ろうと思っていた。それに、ヒロインも生徒会に入るだろうから、目の前で、お兄ちゃんと恋に落ちるのを見るのも嫌だし。でも、冴木先輩も困ってるみたいだし、彩月ちゃんも生徒会が向いてるって言ってくれたし。


 「うーん、どうしよう」


  

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