序
「落窪姫はミシンが欲しい」の名前で投稿していましたが、いろいろと修正するうちに別物みたいになってしまったので新しく書き直します。すみません。
ゆっくりですが更新していきたいと思います。
その日私は急いでいた。
ハァハァと切れる息を整える間もなく自転車のペダルに力を込める。
速く速く
頬を打つ風は冷たく、吐く息は白いのに体は火照ったように熱かった。
喉がヒリつき、ッハ!と一度大きく息をつく。
ただでさえ、万年文化部で体力には自信がないというのに、ここ最近の受験勉強ですっかり衰えた気がする。
それでもスピードを落とさないよう、足に気合を入れた。
校則違反の短いスカートは少しも寒さを防いでくれない。
自転車の前籠で鞄と一緒に本が数冊、跳ねた。
図書室で借りたものの、思いのほか分厚くて鞄に収まらなかったのだ。
いつもの土手を抜け、商店街へ続く道を曲がる。
数分前に夕陽が沈み、辺りは黄昏色に染まっていた。
ガタンッ!
突然、何かにタイヤがとられ、ハンドルが揺れた。
籠から本が飛び出そうになり慌てて押えこもうと体を乗り出した。
と、
プップーーー!!!!!
クラクションの音が響き次の瞬間には視界が真っ白い光に覆われた。