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赤眼の彼が、異世界支配してみた  作者: ひよこ丼
第一章 『死始と死別』
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第10話 『桃髪メイド』





「よっしゃ、さっそく質問タイム開始だ。俺はいつだってフレシアに質問攻めされる準備はできてるからな。フレシアも、何でも聞いてどんどん知ってくれ!」


 無駄に多く並べられたイスの一つに腰掛け、図々しく話し始める。クロークとやらが処遇を決めるのなら、決定権のない二人の前で猫を被る必要はない。


「えぇと……。その前に、タツキの存在を解明する機会になるわけだし、ペルも呼んだほうがいいわよね」


「いやいやいや、やめとこうぜ! 俺の心読んだなら謝るからさ! ……あとでバッチリきっちり、そこの激カワメイドさんが伝えてくれるって。な?」


「承りました。しっかりとツキ様の存在無価値をお伝え……」


「無が余分だよ! 頼むから先入観ゼロの状態で呼んできてくれ!」


 すかさずつっこみ、命の懸けた叫び声をあげる。が、ルイが扉を閉じることであっさりと打ち消された。救いを求めて伸ばした手が行き先を失い宙を切る。ルイの俊敏力には諦めるほかない。動きが素早いというより、瞬間移動を使ったと言われたほうが納得できるほどだ。


「これが俺の天運なのかもな……。はは、お似合いだぜ」


 力無く笑い、そのまま机に突っ伏す。目を閉じて今までの行いを振り返ってみるが、どれもマイナスイメージのものばかりで泣きたくなる。


「お、怒らないであげてね。ルイはあんなツンツンだけど、根はいい子だから」


 言い古された言葉に無気力さが襲ってくる。

 ああ、「根はいい子」と言ってしまえば全て打ち消されると思うなら大間違いだ。フレシアは気を遣って言ってくれたのだうが、今のタツキには逆効果だった。


「あれでかよ……。ツンデレ属性も度を越しちゃあ需要減だわ。こっちは仲良くしようとしてんのに何故か嫌われてっし。なんかしたかな、俺」


 出会った当初もそうだったが、先ほどのやり取りはもろに嫌悪感が出ていた。タツキがここにいるのが気に食わないような………嫌われているとしか考えられない扱いである。ルイの冷たい眼差しに思考回路がどうしてもネガティブになってしまう。


「照れ隠し、かも」


「どんだけポジティブに考えてもそれはねーよ……」


 楽観主義なタツキでも、それはさすがに認められない。ルイから感じたのは親しみではなく敵意だ。まるで自分のテリトリーに入ってきたタツキを責めているような。


「そんなことないわ。だってルイはカルの治癒魔法の精密さは知っているはずなのに、まだ目覚めないのか心配してたのよ」


「あーはいはい。そーいやカルトは、超有名な治癒術師サマなんだっけか……」


 フレシアがいうルイの《心配》とは、起きるのが遅いタツキに対する不満に違いない。純粋な彼女は、人の行為を悪意抜きで見てしまうのだろう。人が何をしてもプラス寄りに考えている。籠の中にいるうちはいいが、いつか外に出た時、それを悪用するやつが現れると思うと恐ろしい。


「……」


 改めて言語の壁が無いことのありがたさを痛感する。何故か読み書きだけは別枠らしいが、口が使えるならタツキが悪の手からフレシアを守ることができる。自分の言うことが通じなかったり、相手の言葉が聞き取れなかったりしたらその自信はなかった。そこら辺は上手くコントロールされているらしい。

 そう小刻みに頷きながら考えていると、


「大丈夫。カルはね、どんな傷だって治しちゃうんだから」


 急に黙り込みタツキを思ってか、見当違いの励ましをするフレシア。大方傷の心配をしているとでも思ったのだろう。

 穢れのない二つの目を見ていると心がほぐされていく。自身の醜さが浮き彫りになる不快な気持ちにもなるけれど。


 ………よし。

 温かい気持ちを保ったまま笑顔を浮かべ、いつものナルセ・タツキに戻る。


「そりゃありがたい話だな。俺みたいな命知らずにはちょうどいいぜ」


「タツキってば、見ず知らずの私なんかを助けちゃうんだもん。そのせいで怪我もいっぱい……」


「ノンノン、心配いらねぇよ。カルト様がいれば何百回何万回怪我したって元通り。問題ナッシーング!」


「そうだけど……内面的な傷はあの子でも消せないの。だから他人の分まで苦しむなんて、絶対にダメ」


「………ッ」


「それに治癒術師は大気の力を源としてるから、何万回も怪我したら緑がすっからかんになっちゃうわ」


 喉が詰まって言葉が出ない。

 本気で心配する表情のフレシアに安心させるように片手を振った。

 だが、それは《心配いらない》というサインではなく、《自分に心配される権利はない》というタツキなりの表現だった。


 タツキは、他人の苦しみを背負うことで自分に対する真っ黒な気持ちが少し浄化されるのを感じた。それは確かだ。

 ――体のいい罪滅ぼし。そんな自分勝手な理由で他人の荷をおろそうとする自分が嫌で嫌で堪らない。醜い自分は見せたくない。


「俺が勝手にやって、勝手に救われてるだけさ。あ、それよか治癒能力すげぇな。大地の恵み万歳!」


 表情をころころ変えるタツキに、フレシアはついていくことを諦めて吐息をついた。

 ただこの少年が、何か重たく燻るものを抱え込んでいることは伝わっていた。そんな人を見れば放っておけなくなるのが彼女の性格である。


「真剣な表情をしたと思ったらすぐふざけて……。私がタツキの苦しみ、分かってあげられないわ」


「い、いいんだよ俺のことなんか。現在ハッピーライフ満喫中だしさ。それよかルイ遅くね?」


「……むぅ。さっき行ったばかりじゃない」


 他人に心配されることに慣れないタツキは、フレシアの言葉から逃げることしかできない。さっきから話が次々に切り替わっていっている。それを良しとしないフレシアは、頬を膨らませて不満を表す。


「やっぱり不思議だわ。何でタツキは私を助けようとしたの?」


「なんか責められてる感ビシビシきてるんですけど……」


 またも追求から逃れようとするタツキを、今度はフレシアの真剣な目が捉える。このまま言い逃れでもしたら株が下がりそうだ。その悪夢に薄っすらと汗をかきながら、タツキは肩を落として観念したことを表明した。フレシアが無理にしかめていた顔をパッと明るくする。


「体が勝手に動いたんだよ。……結果的に助けたってわけでもなかったけどな」


「ううん、油断してたのはホントだもの。すっごく助かったわ。それに、タツキは策も無いのに助けようとしたんでしょう?」


「むぐ……。確かに無策だったよ、失敗したよ畜生。けど助けなきゃって思ったんだから仕方ないだろ」


 そう言ってスネたようにそっぽを向く。

 振り返ってみても、自分は何て無謀なことをしたもんだと反省するしかない。助けるための力もないのに突っ込んでいったのは自分だ。それも一切の迷い無く。


「タツキはもっと自分を大事にしなきゃ……あ、だからルイが不機嫌なのかも」


「は? 何でルイが出てくるんだ?」


「ルイはいつも誰かのために動いてるもの。きっと自分とタツキを重ねちゃったのよ」


「へぇ〜、あのルイ様がね。想像つかねぇな」


 ルイと自分が似ているなんて微塵も思わないタツキは、複雑な感情を持て余してベロを出す。彼女は口を開けば棘が出るイメージしかない。


「大切な人は命を懸けて守るって感じがルイだもん。タツキに分からないのは仕方ないわ」


「だよなぁ……って、それはそれでヘコむんですけど」


 タツキに対しての蚊帳の外発言も、本人はその真意に気づかず可愛らしく首を傾げているだけだ。


「もしそうだとしても、あの態度はどうかと思うぜ。俺が本当のお客様だったらクレームつけてるぐらい」

 

「それは……ルイはいつもあんな感じだから。お客様なんてめったに来ないし、ちゃんとした態度を知らないのよ。だからくれーむ……は、やめてあげてね?」


「いやメイドがそれだとダメだろ! ダメイドに改名するぞ! フレシアの可愛いくれーむに免じて許すけどさ!」


 何だかんだ言いながらあっさりと許してしまった。

 フレシアの思考が、《ルイがタツキを嫌っている》ことに直結しないのが不思議だ。そこが彼女のよさでもあるのだが。


「あ、あのね。実は私も少し不安なんだ。私のせいでタツキが怪我したのに、こんなふうに話してるのは傲慢なんじゃないかなって。――キミは命の恩人だから」


「――――!」


 寂しく笑うフレシアに頭を大きく左右にふって全否定する。違うと叫びたがったが出来なかった。

 《命の恩人》――そんなことを言われて喜ぶ自分こそ傲慢である。喜んではいけない。おごってはいけない。相手を救ったなんて勘違いしてはいけない。


 本当は君と話すことも、笑いあうことも、一緒にいることさえも―――――。


「助けられたのは俺の方なんだ。マジで感謝してる。これから恩を返していきたい……いや、返させてくれ!」


「冗談言わないで! それはこっちのセリフなのに。私、何もしてないもん」


「それはぜってぇ違う! 空っぽな俺が生きる意味を見つけられたんだぜ? ーーーありがとう、本当に」


 心からの感謝。

 フレシアに出会えてよかった――。

 お礼とともに薄く微笑みかけると、フレシアの頬がみるみるうちに赤く染まっていった。顔全体が茹で上がったところで、自分が言った意味に気づき、硬直。まるでプロポーズみたいな言い方になってしまった。


「べべべ別に深い意味はないから! 赤くなってるフレシア超可愛いとか思ってねぇし!」


「もう、また変なこと言ってる。珍しく真面目な顔になったと思ったら赤くなっちゃって、病気だったら困――――大丈夫、よね? それともカルに診てもらったほうが……」


「本気の心配やめて!? 正常だよ! それより俺よかフレシアのほうが顔やばいからね! ほんとなんだからねっ!」


 語彙がおかしくなりながらの必死の弁明。頭は真っ白で、知らず知らずうちに言葉がポイポイ出て行ってしまう。……だが、嫌ではない。むしろ至福の空間だ。


「そ、それはタツキがッ――!」


「ん? 俺が何?」


 赤い顔で口ごもるフレシアに聞くと、顔をそらされてしまった。その理由は分からず、首を傾げるしかない。

 タツキ自身、どうしてこんなに心を掻き乱されているのか分からなかった。


「とにかくだな、俺的には悪魔でも何でもルイと仲良くしたいと思ってるし、もちろんフレシアとも……」


 頬を掻きつつ話しの軸を強制的に戻したが、最終的には本音が零れ落ちるありさまだ。

 だが、そんな自分の本音も彼女なら無条件に受け入れてくれる気がした。瞼に焼き付いたフレシアの笑顔は、全てを否定せずに受け入れてくれる母愛に満ちていた。このあたたかな気持ちが《家族》に繋がるのかもしれない。昔々の記憶が脳裏に浮かんでは消える。


「あく、ま…………?」


 不安げで………どこか怒りを含んだ声に、すぐさま顔を上げる。しまったと思った。地雷を踏んだ感触があった。

 予想通り、先程までのあどけない表情を見事に崩壊させた顔がそこにあった。小さな眉をたらし、タツキへの疑惑をいっぱいに溜め込んだ瞳がこちらを覗いている。その悲しそうな表情がタツキの心を痛ませ、同時にあたたかい気持ちが急速に冷めていくのを感じた。


「え、あ、ごめん。俺悪いこと言っちゃったよな……絶対」


 フレシアの冷たい態度に、焦りと衝撃で顔が引きつりそうになる。それをなんとか内に秘め、もてる頬の筋肉と神経を駆使して笑顔を作った。ポーカーフェイスは得意だが、今の自分は大丈夫だろうか。


「……ううん、なんでもない」


 フレシアと二人きり。おいしいシチュエーションのはずが、タツキの一言で暗い雰囲気へと一転してしまった。


 その原因となったワード、《悪魔》。フレシアの態度が変化したのは明らかにその単語が出たときだ。比喩的な意味で口にしたのだが、彼女にとっては何か不快になるワードだったのかもしれない。


「失礼しま〜〜す!」


 そんな沈みきった空気を打ち気消したのは、甲高い女性の声だった。


 ノックもなしに数あるうちの一つの扉が盛大に開かれ、救世主が姿を現す。

 入ってきたのはルイと全く同じ顔をしたメイドだった。顔のパーツがそっくりなので、双子か何かだろうか。ただ顔や背丈以外の共通点はざっと見少ない。

 ルイの髪型にツインテールをプラスしたような桃色の髪。横に垂らした髪を耳にかけ、さらりと流している。フレシアに負けず劣らずなサラサラ髪質だということが遠目でもわかった。


 タレ目がちなルイに対し、こちらはつり目ぎみのぱっちり開いたピンクの瞳。髪と合わせてかなり派手だ。不健康イメージなルイとピンク少女は対極的な存在だった。


 更に言うと、評価に厳しいと自負するタツキが無意識に美少女リストに書き加えたほどの可憐さである。しかしここではそう珍しくもない。次元を超えた可愛さを持ち合わせた人たちがたくさんいるのだから。


 思わず見惚れてしまっていたタツキだが、停止していた思考はフレシアが視界の端に入った途端動き出した。


「はーいお客さん! アタシの名前はリラでーす。ついでに言えばルイの姉担当! 以後お見知りおきを〜」


「まてまて! 入ってきた時から思ったが、メイドとしての鮮麗さと奥ゆかしさ、その他諸々が欠けてね!?」


 なにを言われるか内心ドキドキしていたが、美少女キャラから飛び出してきたのは元気いっぱいの自己紹介だった。見た目通りの派手さ。……逆に心を落ち着かせるきっかけになったのはありがたいけれど。


「そうか、ルイの姉上だったのか。美系姉妹なパターンね。いいよいいよ、好きだよ俺は」


「あ、タツキってば、リラとルイの違いにびっくりしたんでしょ」


「まぁな。顔が同じなのに雰囲気真逆とかビビるわ」


「リラはね、いつも笑顔で楽しいのが取り柄なの。淹れてくれるお茶もすごく美味しいし」


 先ほどの表情から一転、笑顔で説明係に回るフレシア。その変わり様の早さに驚いたが、顔には出さず会話を続ける。


「フレシア様、可愛いだなんて褒めないでくださいよ。めちゃくちゃ今更じゃないですか〜」


「驚くほどの神経の図太さだな!」


 メイドはメイドでもルイとは全く違うジャンルなのだと心に刻んだ。


 タツキの学校でそんな言葉を吐こうものなら、すぐさま他の女子に目をつけられるだろう。それなのに、不思議と腹立たしさや不快感は感じられない。彼女が魔性めいた美貌を持っているからだろうか。それとも周りに甘やかしてもらえるタイプなのか、と心内で妬む。

 確かに外見は飛び抜けて可愛かった。それにスタイルもいい。あと、最重要なのがルイに比べて胸が大きいことだ。


「アタシは本当のことしか言いませんから〜。ね、フレシア様」


「うん、リラだもんね」


 可憐な少女二人が笑顔を交わす。リラの軽いノリにフレシアは慣れているみたいだった。


「主人に常時そのノリとかすげぇな。ま、いいや――ー俺の名前は成瀬他月。天職は勇者。あ、剣士でも良し。イケメン道(どう)まっしぐらな期待の星としてどーぞよろしく!」


「ふ〜ん。その割には魔力の才能がないみたいだけど。顔もそこまで整ってないしぃ。あ、タツキ様のお体少し触らせてもらうね〜」


「ひゃふん!?」


 散々な言われように反撃しようとしたが、いきなりのボディタッチに変な声が出てしまった。何が起こったか分からず、言葉にならない声を発する純粋少年の顔は赤い。無情なリラはそんな少年の葛藤はお構いなしで、座ったままのタツキの肩や足腰をべたべたと触り倒し、


「結果。タツキ様の筋力値はよく見ても標準、というところでしょうか〜。ソルトルスにいけばもっと詳しく分かるんですけど……。予想通りの凡人道まっしぐらだと面白味がありませんね〜。モチロン勇者の証もナシ、と」


 無情な判決が言い渡された。

 勇者に証が要ることも初耳だ。なりたい奴がちっぽけな勇気を振り絞って手に入れる職業ではないのか。

 せっかく異世界転移させられたというのに、チート能力の一つもないとは……。システムに問題があるんじゃないだろうか。


「悪かったな、平々凡々没個性で!」


 短いお触りタイムから解放されたタツキは、勝手に下された厳しい評価に噛み付いた。

 さっきまでの天真爛漫な雰囲気はどこへやら、ルイに似た冷ややかな空気がリラから感じられる。


「体力筋力がそこそこあるだけいいじゃないですか〜。アタシは全然なんですから。それに、器用さが無駄に高いのが驚き桃の木私の髪です〜。生産系の職にでもついたらどうですか?」


 真顔で冗談も言えないルイに比べるといささか話しやすいといえば話しやすいが、いきなりの爆弾発言にはタツキも反応しきれない。そもそも私の髪って締めは何だ。色か。


「俺に向いてる職があるのは嬉しいけど、一人で作業する苦痛に耐えられないだろうからやめとく」


 変な例えと一緒に勧められた職業。自分の特技が活かせることは魅力的だが、タツキの性に合いそうになかった。無駄に高い技術を使う機会は無さそうだ。


「これでも褒めてるんですよ? だからここは素直にありがとうでしょ、タツキ様」


「半端敬語キャラでいくのは分かった――ありがとな。んで、その能力値ってのは何よ?」


「そのままの意味よ。人が本来持つ力。そこから能力に見合った道を進んだり、特技を伸ばしたりするの。リラはね、相手の体を触るだけでその数値が分かるすっごい子なのよ。簡単にできることじゃないんだからね」  


 使用人の特技を披露してご満悦のフレシアが、誇らしげに人の魅力を語る。腰に手まで回していた。今にも「えっへん」という言葉が聞こえてきそうである。その幼い仕草に思わずキュンとする。


「ほぉー。それは便利だな。ちなみにフレシアはどーだったん? そこんとこ詳しく教えてちょーだい!」


「えーと、確かフレシア様は筋力が平均以下………ですが、力を必要としないフレシア様には関係ないことですので!はい!」


 冷酷な判断を下した割にはフォローを忘れない従者、リラ。主の顔が徐々に曇っていったからだろう。自分の失言に焦りながらも、リラは笑顔を崩さない。

 その様子を見て納得する。彼女が常に笑顔だというのは間違いではなかった。――笑い続けるというのは、案外辛いものなのに。


「大丈夫だぞフレシア! 力が弱いってのは女子のアピールポイントになるからな!」


「あぴーるぽいんと……? そんなものいらないわ。それに私、全然全く気にしてないし」


 早口でタツキもフォローに加わるが、逆に自尊心を傷つけてしまったらしい。頬をふくらませて拗ねられてしまった。


「めっちゃ気にしてる顔で言わないで!? いいじゃん、筋力なんて言葉可憐な少女には似合わねぇよ。むしろグッジョブ! GJフレシア!」


「……タツキは、もっと気にしたほうがいいと思うけど」


「え? それならフレシアも―――はいウッソ〜」


 しまった。これじゃ火に油を注いだようなモンだ。

 フォローし続けていたタツキがぽろりと漏らした本音は、フレシアのほっぺの空気量をさらに増やし、足までばたつかせるようにさせてしまった。

 自身のしくじりを嘆きながらも、内心嬉しくなる。どこか大人びた二人にも子供らしい一面があることに。パッと見だと二人は高校生ぐらいの外見だ。背丈と顔つき頼りの判断なので、この世界基準で言えばまるっきり違うのかもしれないが。


 大人びた口調を使う理由を尋ねたいところだが、さらにフレシアの機嫌を損ねてしまいそうなのでやめておく。


「子供っぽいフレシアもめちゃかわだけどさ。どーせあれだろ? 他の能力が天才級にすごいっていうお決まりのパターン……」


 バンッ!!!

 タツキの踏み込んだ質問は、無駄に響く開閉音で掻き消された。



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