土器を作りたいがうまくいかないしバナナの木を増やそうか
さて、雨の日に暇だからと簡単な木枠の網をつくって潮溜まりで魚を掬えたのは食生活のバリエーションを増やせたが、やはり炭水化物が食いたい。
このあたりで取れる炭水化物と言えばバナナなどのフルーツを除けばヤムイモとタロイモだな。
それぞれ後に日本に持ち込まれて長芋と里芋の祖先となった芋だ。
そもそも芋というのは地下茎にデンプンを貯める植物を指しているのでヤムイモとタロイモは全く別々の植物だしサツマイモやジャガイモ、キャッサバもまた違う植物だ。
だが問題もある。
野生種の植物の大部分の地下貯蔵器官要するに球根や芋は、多量のアルカロイド、サポニン、タンニンなどの毒やアクを含むために生で食うと死ぬ場合がある。
ジャガ芋の緑の部分が毒だったり、里芋にもアクが有るから加熱してあく抜きが必要なのと同じようなものだ。
そりゃ栄養を蓄えてるからと動物に喰われてしまっては一大事だからな。
フルーツが硬い種子を中に含ませて甘い実を成ることで種子を広範囲に広げようとするのとは違う。
「というわけで土器を作ろう」
「どきー?」
「どきー?」
ああ、土器についてはわからんよな。
実際土器が一番最初に作られたのは中国南部か東南アジアというのが定説なのだが俺は他の地域よりも象という大型で動きの遅い動物が早く絶滅した可能性が高い、スンダランドでは栄養の確保のために芋を食うために加熱しているうちに土器が作られるようになってそれがスンダランドが海に沈む時に日本へ持ちこまれたんじゃないかなと思っていたりもする。
氷河期が終わり象などが絶滅してどんぐりやナッツを食べ始めた後に西アジアでは麦は中国南部では米が栽培され始めこれが農業の始まりと言われるが、実はスンダランドでのバナナや芋の栽培のほうが歴史は古いはずなのだな。
とりあえず土器をつくるには粘り気がある土を手に入れないとならない。
「今日は川探しだな」
「さがすー」
「さがすー」
まあ、大きな川はないだろうけど、粘土くらいは手に入るだろう。
「ところでお前さんたちう、水がまとまって流れてる場所に
心当たりはないかい?」
「?」
「?」
うん、どうやらないようだ。
適当に歩いて探すしかないな。
で、適当に歩いてようやっと小川を探し当てた。
川底には粘土が薄っすらと積もってるのでそれを丸めて手にして帰る。
「?」
「?」
フローレス人達も意味はわからないながらなにか楽しそうと粘土を丸めて持ち帰ってきている。
「んじゃ、作るか」
「つくるー」
「つくるー」
粘土を丸めて押しつぶして底を作った後、ぶちっとちぎって平らな石の上で紐状に伸ばしていき、それを何本も作る。
それを端と端をつなげて円にして積み上げていき壺状にすれば土器の出来上がりだ。
後はカマドで焼けばいいはずだな。
早速枯れ枝などを集めて火にかけたら……バキーンと音を立てて割れてしまった。
「……なんでだ?」
「なんでー?」
「なんでー?」
なんで割れてしまったのかよく思い出してみよう……そうか、土器を作るときはちゃんと空気を抜いた上で粘土中の水分も抜く、つまりしっかり乾燥させて中で水が気化しないようにしないとだめだったかな。
蒸気機関が水から気化した水蒸気になり体積が増えることのエネルギーを利用するように気化というのは馬鹿にできないのだ。
「すまん、やり直しだ。
後今度はつくったらしっかりと中まで洞窟の中で乾かそう」
失敗と言ってもフローレス人達は特に気にしている感じはない。
なんか新しいことができて楽しいのだろう。
粘土遊びってたしかに面白いよな。
「かそうー」
「かそうー」
同じことをもう一度繰り返して土器をつくったら今度は洞窟の奥で陰干しする。
たしか乾燥に一ヶ月くらいはかかったんだっけな……先は長いぜ。
「急いでも仕方ないし、バナナの木を増やそうか」
「ふやそー」
「ふやそー」
バナナは種だけでなくて吸芽でも増やせる。
種だけでは確実に増えることができないからで山芋のむかごなんかも同じようなものだな。
「バナナの木の場所を教えてくれるか?」
「おしえるー」
「おしえるー」
彼等がちょこまかと歩いて先導してくれる。
やがてバナナがなっているバナナの木が見えた。
そしてその横にたけのこのように突き出している吸芽も見える。
「を、生えてる生えてる」
「はえてるー」
「はえてるー」
後は簡単そして吸芽を親側に近い場所で切る。
親木は傷ついてもまず枯れることはないから子株の保護を優先するのだな。
で吸芽に根っこが多く付いていればなおさら良い。
逆に切る角度を間違えると根っこが全くないときもある。
「ありゃ根っこがついてないな、こりゃ失敗したか」
「しっぱーい」
「しっぱーい」
「おし!。
根っこがいっぱいついてるしこれならうまくいくだろ」
「だろー」
「だろー」
石器のナイフだとちょっと大変だがそこまで硬いわけでもない。
で、先を尖らせた木の棒で穴をほってそこに根っこの生えた吸芽を埋めてやれば後は育ってくれるはず。
とはいえ早くても実がなるのは半年は先だけどな。