ココナッツファイバーで糸を作って更に網も作ろう
さて、バナナなどフルーツ、貝・ナマコ・ヤシガニなどの海の幸・ココナッツという自然の恵みのお陰でフローレス人達より遥かに燃費の悪い俺でも食いつなぐのには十分な食料は得られそうだ。
しかし、今日は雨が降っていて外に出られそうにない。
「ま、今日は一日ゆっくり過ごすか」
「ゆっくり?」
「ゆっくり?」
「ああ、雨に濡れてまで食べ物を探す必要もないだろうしな」
「ないだろー」
「ないだろー」
実際問題として別に毎日食わないと死ぬわけではない。
むしろ一日くらい喰わないほうが内蔵を休められたり老廃物の排出を促進できたりするから、今日はねて過ごすのがいいだろう。
「ひまー」
「ひまー」
と思ったのだがおそらく今までにないくらいたくさん食べたフローレス人は体力が有り余ってるらしい。
牡蠣やナマコ、ココナッツはミネラルも豊富だしな。
「ん、とは言え雨の中で行動するは現状雨を防ぐものもないし、外に行くのはやめておこう。
その代わりちょっと作ってみたいものがある」
俺は昨日殻を割って手に入れたココナッツファイバーを手にする。
ココナッツファイバーは塩水に強いことから漁網として使うのにも優れてるのだ。
その他にもブラシやロープ、たわし、床敷マットやマットレス、釣り糸などにも使える。
亀の子たわしに使われてる毛のようなものはココナッツファイバーだったりする。
「なにー?」
「なにー?」
「先ずはこれをほぐす」
そういってブチッとココナッツファイバーをちぎる。
「ほぐすー」
「ほぐすー」
フローレス人たちも楽しそうにココナッツファイバーをちぎっている。
「で、それを並べて手で撚り合わせる」
撚り合わせるのはいいが手が結構痛い。
火をおこすのに手で木の棒をひたすら回す錐揉み式による着火をやらないのも手がめちゃ痛くなるからだ。
「あわせー」
「あわせー」
フローレス人達は平気らしいが普段からフルーツを取るために木の昇り降りなどをしてるだろうから俺とは手の皮の厚さが違うだろうし当然だよな。
21世紀の現代人のひ弱さが恨めしいぜ。
「そうするとまずは糸ができる」
撚ったココナッツファイバーの糸は結構丈夫だ。
「できたー」
「できたー」
うんフローレス人達が楽しそうで何よりだ。
「で、木の枝を四角く重ねさせたら四隅を縛る」
「しばるー」
「しばるー」
こうすると四角い木枠ができるわけだ。
「で、糸をまたよって作る」
「つくるー」
「つくるー」
「で、つくった糸をさっき作った木枠の中に結んで張っていくと
簡単なタモ網が出来上がりだ」
「できたー」
「できたー」
自分たちの頭の上にタモ網を掲げて喜んでるフローレス人達。
「明日晴れたら、潮だまりへ魚をすくいに行こう」
「いこー」
「いこー」
ああ、それにしても手が痛いぜ。
糸を撚ったり何だりしていたら一日が終わってしまったので今日は寝る。
明日には雨が止んでると思うがやんでなかったらどうしたものか……。
・・・
そして翌日だがちゃんと晴れてくれた。
「じゃあ、魚をすくいにいくぞー」
「いくぞー」
「いくぞー」
岩場の干満の差でできる潮溜まりには意外に魚やエビ・カニはいっぱいいる。
もっともそんなに大きい魚はいないけど。
「よーしすくうぞ」
まずは俺が手製の網を潮溜まりに入れてすくうとフローレス人たちも楽しそうに真似をする。
「ぞー」
「ぞー」
すくい上げた網の中にはハゼっぽい魚がいた。
「おっしゃ、魚ゲットだぜ」
「だぜー」
「だぜー」
ハゼは極地を除く全世界の淡水域、汽水域、浅い海水域のあらゆる環境に生息し、もっとも繁栄している魚のひとつ。
だからこういった場所にも当然いる。
いつものようにカマドの火を用意しながら先ずはハゼのヌメリとうろこをとり、ハゼの頭と内蔵をとりのぞいて開きにしたら、海水で洗い、シャコガイの貝殻を使って、ハゼを焼いて食べる。
本当は天ぷらにするとめちゃ美味いのだが油も小麦粉もないからな。
「そろそろ焼けたかな、みんなでくおうぜ」
「くおー」
「くおー」
木の枝に焼けたハゼを刺して火から恐ろして口にする。
「うん、やっぱ美味いわ」
「うまー」
「うまー」
ハゼは外見は悪いが意外に美味い白身魚なのだ。
やっぱ、たまにはあっさりした魚も食いたくなるよな。
貝やナマコやヤシガニはちと味がこすぎる、美味いのは確かなんだけどな。
それにしても炭水化物を食べたいものだ。




