そろそろ川にトイレを作って高床式の家を建ててみよう
さて、人間も増えてきたし排泄物の処理も結構大変になってきた。
あと、俺が木の根元に埋めるとよく育つと言ったせいで、芋も大きくなると思って芋の側に大便を埋めちまったやつが出たりもした。
「ごめんなさい」
「ん、いや悪気はなかったろうし仕方ないさ。
十分加熱すれば問題はないと思うけどそろそろ厠を作るか……」
厠とは川の上に建てられた便所で洋の東西を問わず大小便を水で流して川の浄化力に任せるという方式は珍しくはない。
ただし飲水を川の水以外で入手できるという前提条件があるがな。
俺達はココナッツウォーターや土器に雨水を貯めるということをやってるので川の水を直接飲むことはしないから大丈夫ではある。
昔のフローレス人達は知らないが、俺が来てからは川の水は飲まないようにしてるはずだ、川の水は赤痢とかが本当怖いからな。
厠と言ってもとりあえずは川に杭をうちその上に桟橋のようなものを作って、そこに四角い穴を開けると言う単純なもので屋根や壁などを作るまではとりあえずはしない。
西洋だと穴の開いた石の椅子を水の流れる溝の上に設置してトイレにしたりするがそこまでしなくてもいいよな。
この便所の造りはインドを境に東はしゃがみ、西は椅子に座るという形式になってるのが面白いところだ。
「これからは晴れた日は大小便はここでしてくれな。
雨の時は専用のつぼにして早めに捨てること」
「わかったー」
「分かりました」
人間に限らず動物の大小便というのは植物にとって肥料になるのは確かなんだが人数が増えてくると衛生的な問題も出てくる。
定住しないで移動する生活だとそこまで問題にはならないんだけど。
それとこの時代はプライバシーなどないのが当然ではあるんだが、状況によっては隔離した方がいい場合もあるだろうし、高床式住居を作ってみることにした。
高床式にする理由は湿気や照り返しによる高温多湿を防ぐとか、雨期のスコールの洪水の影響を受けないようにするとかいろいろある。
「じゃあみんなでつくるぞー」
「わかったー」
「わかりました」
一度焼き畑農場の柵を作っていることも有ってある程度は俺のやりたいことを理解してくれてるようだ。
今回はとりあえず幅3メートル奥行き2メートル程度の小さなものを試しに作る。
「じゃあ、柵を作ったときのようにまず木を切るやつと切った木を立てるための穴を掘る者に別れよう」
「わかったー」
「分かりました」
「今回は木は切り倒したら長いまんまでとりあえずいいぞ」
「わかったー」
「穴掘りは俺が木の枝で丸を書いた場所を指先から肘くらいまで掘ってくれ」
「了解です」
こんな感じでみんなで手分けして木を切ったり穴をほったりする。
石の釿や蚤で表面を整えたりしつつ、柱を立てる場所6箇所に深さ30センチほどの穴を掘る。
当然だがこの際きちんと長方形にあなをほれるように気をつけながら印をつける。
俺の背丈と同じくらいの長さにまずは木を切って軽く表面を焼いて簡単に腐らないようにし、穴に立てて上面が高さが同じになるように削って高さを合わせる。
まあ完全に水平や垂直でないのはしょうがないが。
「じゃあ、横木を渡すぞ」
「わかったー」
「了解です」
立てた柱の上に横木を渡して蔦で縛り床の土台にしてそこに竹を割ったものを引いていきさらにのその上にバナナやヤシの葉っぱを引いて床にする。
竹の間はちょこちょこ空いてるが通気性が確保できるからむしろ涼しくて良い。
その上に柱を立て横木を載せてやはり蔦で縛り、壁もヤシやバナナの葉っぱでふく。
壁には大きな窓が開いてるから通気性も悪くない。
熱帯の強い日射と激しい降雨を避けるために、急傾斜の屋根を造りやはりヤシやバナナの葉っぱで屋根をふく。
「できたぞー」
「できたー」
「できましたね」
まあ、狭いことこの上ないがこれでも一人二人が寝るには十分だ。
出入りにははしごが必要だからはしごは別に作る。
こうした高床式の住居は雨季の洪水から家を守る事もできるし、トカゲやヘビ、昆虫などが家の中に入ってこないようになってる。
ちょっとした休憩を取るにはなかなか良いはずだったのだが……。
「これ、いー」
フローレス人は特に高床の家を気に入ったらしい。
「そうか、いいか」
「いー」
なんかギュウギュウ詰めな状態で狭い高床式住居にいるのもどうなんだということで、結局もう少し広い高床式住居をみんなで建てることになったが、これはこれで楽しいものだ。
何かを作り上げるというのは良いものだな。
結局トイレは家の中にはないわけだが。




