サピエンスたちの事情をきいて子供づくりを目指すことになったぞ
さて、岩牡蠣やバナナだけでなくちょくちょく魚を釣ってそれを焼いて食べることができるようになったサピエンスは自分たちの昔のサピエンスの集団での生活をポツポツ語ってくれるようになった。
「俺達は成人した男が主に象や鹿などを狩っていたが最近は中々象と会えなくなり、鹿などを狩るようになってきていたんだ」
「ふむ、基本は狩りでくらしていたわけか。
でも鹿をやりで仕留めるって大変だよな」
「ああ、このあたりはフルーツが豊富だけどもともと俺達の先祖がいた場所にはそこまでなかったらしいし狩りが基本だったんだ。
だから狩りができないやつは群れにいられなかった」
この時期の人類は基本的に定住はせず象などの大型で動きが遅い動物の狩りの獲物を求めて小さな集団で移動しながら暮らしていたらしい。
ただし季節によって獲物の多い場所に移動はしても全く知らない場所に移動することはあまりないらしい。
それとこの時期に象は大分減ってきているようだ。
象は出生率が低いからな。
「そりゃ、狩猟のための道具がどこでも手に入るわけでもないからな」
石なんてどこにでもあるだろうと思うかもしれないが、打製石器のもとになるフリントやチャートのようなかち割ったら鋭い刃ができるガラス質でなおかつある程度の硬度を持つ石は、実は世界中のどこにでも存在するわけではなく、火山の近くでないと中々存在しない、だからそういった石が取れる場所にある程度の間隔でたどり着かなければ道具無しでの生活を強いられてしまうわけだ。
だから一箇所での定住はしないにしてもある程度の範囲での生活は行われていたはずだな。
「当然だが群れにはリーダーがいるが狩りが上手くできなくなったりしたらリーダーは入れ替わるし狩りの上手い男が好む女を優先的に子作りの相手にすることになる。
だからどちらも身体が大きなものが優先されるんだ」
「なるほどなぁ」
当然だが狩猟を行う際には指示を出すリーダーや実際に狩る者に別れたほうが効率がいいわけで指導者や有能な狩猟者やそれの好む女が優先して食料を回されて、狩猟のヘタなものや指導者や狩りのうまいものに好まれなかった女などには食料は十分回ってこなかったのだろう」
「で、雨風を凌ぐのにはここと同じように洞穴に入ったり岩陰に入ったりして凌ぐけど例えば狩猟のときに怪我をおったり病気になったり歳を撮ったりして動けなくなったら移動のときにはその場において行かれてしまう。
そういったものに食料を与えられるほど余裕はなかったからな」
「ふむ、まあそうなるのだろうな」
定住生活で農耕をしているときでさえ穀潰しと言われて嫌われていたわけだから、この時代では動けなくなったら見捨てられるのが普通なのだろう、成人儀式で狩猟や木登りができなかったり子供ができないだけで追放されるぐらいなのだから。
「だから、我々にとってはあなたは救い主なのだ」
「まあ、言いたいことはわかるぜ。
俺はそんなに大それた存在じゃないとは思うけど」
そこへサピエンスの女が声をかけてきた。
「ですのでどうか私たちに子供を授けてくださいお願いします」
「子供?!」
そう言えば追い出された女は子供ができないからという理由だったんだっけ。
「そうです、どうかお願いします」
「食糧事情が改善すれば子供はできると思うけどな……。
まあわかった、それはやってみよう」
結局サピエンスに男女に望まれて俺は子作りをするようになるのだった。
もちろんもともとのサピエンスの男女の中でのカップルもいるが、そうでないものもいるということなんだが、これで子供ができなかったらかわいそうだよな。
なんとか子供がちゃんと頑張ってみようか。
ちなみにこの時代には土地などの所有の概念がないので特に結婚という儀式もないけどな。




