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季節がないと時間の流れが遅いよな、そしてホモ・サピエンスとであったぞ

 さて、俺がここに来て随分立ったはずだ。

だがカレンダーやスケジュールのないここではどんだけの時間が流れたかはっきりしない。


「腹が減ったら食べ物を探し、雨が降ったら休んでの繰り返しだし当然か」


 ここでは家に住むための家賃の心配はない、なにせ洞窟ぐらしだからな。

服の心配もない裸でも体温を奪われて死ぬようなことはないからだ。

食料に関しても食べるだけなら別に心配はいらない、フルーツや芋、海の幸があれば十分だ。

携帯電話やインターネット、ゲームや本がない?だからといって別にそれで困るわけじゃない。

今の生活は時間の余裕はあるがいろいろな道具は貧弱なので何かを試すのにも時間がとてもかかる。


”ばき”


「げ、また割れたか」


 今の俺は貝殻を石で削ったり割ったりしてJの形をした釣り針を作ろうとしてるところだ。


「われたー」


「われたー」


 俺の周りではフローレス人がそう言いながら笑ってる。

貝殻を割って削ったりして釣り針を作るというのは思っていたよりずっと難しかったのだ。


「あー、今日はもうやめだヤメヤメー」


 そう言って俺は横になってふて寝する。


「やめやめー」


「やめやめー」


 フローレス人たちも真似して横になってる。

釣り針の改良も別に必要に迫られてというわけでもなく、簡単なタモ網を使っての潮溜まりでの魚すくいや直線で細い木の枝の左右を削っただけの釣り針でも魚は取れるし、貝やナマコ、海老や蟹を取るのはもっと簡単だ。

だけど、ずっと同じことをしていたのでは”楽しくない”。

だから今は釣り針の改良を考えてもっとよく釣れるはずの新しい釣り針を作ろうと試行錯誤しているのだな。

しかし、ちゃんと刺さるようにとがらせるために先を細くするというのは思っていたよりも随分難しいものだ、しかも道具は基本的に打製石器と未加工の石、木の枝なんかの木材だけだしな。


「ま、焦ることもないしのんびりやろうか」


「やろー」


「やろー」


 新石器時代の人間が純粋な食料採取つまり労働と言える時間時間は一日1~2時でいい。

衣食住に余裕があるのだからそもそも焦る必要はないのだ

ちょっと腹も減ってきたし食い物を取りに行こうか。

バナナの木の脇から吸芽を切り分けて植えたやつも大分大きくなってるしバナナの木は着実に増えてる。

無論上手く定着しなくて枯れちまったやつもあるけどな。

俺が食料を得るために洞窟から出ると、フローレス人たちがちょこまかついてくる。


「じゃあ今日はバナナでも食べるか」


「バナナー」


「バナナー」


 バナナの木を登って房をもいで降りてくるフローレス人達は相変わらず猿みたいだな

そんなところに西の方から俺に似た姿の者たちが10人位でフラフラと歩いてきた。

そして先頭のものが俺をみて言う。


『こんなところに俺たちの仲間が?』


「まさかホモ・サピエンス?」


『?』


 そう、これがフローレス人とホモ・サピエンスの本来最初の邂逅となるはずだったのだろう。


「お前さん達、仲間から追い出されてきたのか?」


『……そうだ』


「腹減ってんだろうしバナナ食うか?」


『そうしてもらえるとありがたい』


 サピエンス達は皆痩せこけていたし、体格も小さめだ、きっとろくに食ってなかったんだろう。

腰を下ろすと俺達が手渡した皆がバナナをガツガツ食べていた。

バナナだけで腹は膨れないだろうけど、それなりに腹を満たしたんだろ彼らはその場で寝てしまった。


「おーい、そんなところで寝てると風邪引くぞ」


 まあ、よっぽど疲れてたんだろうし気も緩んだんだろうな。

俺はフローレス人に頼む


「せっかく取ったバナナも食われちまったし。

 もう一回取ってきてもらえるか?」


「いーよー」


「いーよー」


 サピエンスが食っちまった分をもう一度取ってきてもらって俺たちもバナナを食い始めたわけだがこいつらどうしようかな。

おそらく成人しても狩猟に成功せずに追い出されてきた連中なんだろうけど。

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