ようやく土器が完成したぞこれで芋が食えるな
さて、粘土を壺の形にして洞窟の奥で陰干しにしてから30日たった。
何日たったかを正の字にして書いておいたのは正解だったな。
「そろそろ乾いただろうし、焼いても大丈夫だろ」
俺が乾いた粘土のツボを抱えるとフローレス人たちも真似しで土器を抱え上げた。
「だろー」
「だろー」
もちろん彼等には意味はわからないだろう。
わからなくてもなんとなく役に立つことであるというのは理解していると思うけどワクワクしてる様子が見て取れるな。
「まずは枯れ枝を集めてきてくれー」
「わかったー」
「わかったー」
フローレス人が燃料の枯れ枝を集めてくる間に俺はルーペでココナッツファイバーに火をおこしておく。
「みつけたー」
「みつけたー」
そう言って枯れ枝を積み上げていくフローレス人たちはやっぱり楽しそうだ。
これからなにかが起こるのだろうとなんとなく察しているのだろう。
ココナッツファイバーを火付けとして枯れ枝に火を移してまずはその火から少しはなれた場所に土器を置く。
いきなり火の中に突っ込んだら割れるからな。
土鍋だって水を入れないでいきなり火にかけたら割れるのと同じで温度が上がれば粘土は膨張するのだ。
「よいしょ」
「よいしょー」
「よいしょー」
俺が置いたのを真似てフローレス人たちもつぼを地面においている。
土器が火にあぶられて少し色が変わったらココナッツファイバーをミトン代わりにしてまんべんなく熱を受けるように土器を回し少しずつ全体をまんべんなく加熱していき全体の色が変わったら、土器を生木の枝で挟んで沈火して炭になった枯れ枝の上において底をまずあぶる。
小1時間ほどたったら背の高いものを真ん中に移動させて土器同士の間や土器の中にも枯れ枝をいれたうえで、土器を覆うように枯れ枝をかぶせて土器の全体に温度差がないようにしながら本格的に焼きはじめる。
土器の表面がススで真っ黒になったあとすすが取れてとれて白くなっていき、最終的には茶色になる。
全体が焼けたら長い棒を土器の中に差し込んで割れないようにそっと倒し、土器の底を焼く。
あとは鎮火して自然に冷めるのを待つ。
焼き始めと同じく冷ますときもゆっくりやらないと冷えた場所だけ収縮して冷め割れする可能性が高いはずだ。
焼き物は焦らずゆっくりやらんとな。
「冷めるのを待つ間に芋でも探そうか」
「さがすー」
「さがすー」
俺達は山にはいってヤムイモやタロイモを探す。
タロイモは里芋と同じようなものなので葉っぱも多分同じだろう。
「お、あったあった」
俺がそれを引っこ抜こうとするとフローレス人たちが止めようとする。
「だめー」
「まずいよー」
まずいよが”やってはいけない”の意味なのか”おいしくない”の意味なのか。
まあ多分どっちもだろう、生では腹を下す可能性が高いし。
「大丈夫だ、そのための土器だからな」
「どき?」
「どき?」
タロイモを引っこ抜いて茎頃持ち帰ると土器もちょうどよく冷えていた。
ただ中には焼いている時に割れてしまったものも有ったがこれは仕方なかろう。
まずは泥を落とすために海水でよくあらって輪切りにする。
「じゃあ、煮てくおう」
土器で海水を少し汲んだ後でそこにココナッツを割ってココナッツウオーターを入れる。
そこにナイフで輪切りにしたタロイモを皮ごと入れていき火にかける。
「泡は葉っぱですくって取り除いてくれよ」
これがアクなので葉っぱの付いた枝ですくい取って捨てる。
「くれよー」
「くれよー」
十分に煮えたところで細い木の枝を箸代わりにして中の芋を摘んでちょっとだけかじってみる。
時間をおいてみたが特に唇や舌のしびれ等やエグミは感じない
「ん、大丈夫そうだな、じゃあくおうぜ」
「くうー」
「くうー」
時間があって冷めたのも有って手づかみでも食べられるようになっていた。
「まあ、悪くはないな」
「ないなー」
「ないなー」
やはり貝やナマコ・魚やフルーツばかりだと芋というのはありがたい。
味付けが塩だけなのがちょっとなんではあるが。
次は貝とかも一緒に煮てみるか、きっとだしが染みてうまくなる気がするぜ。
とは言えフルーツに比べてうまいという感じはしないな。