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雨や曇りでも火が起こせるように発火法を考えてみようか

 さて、ここ2日は連続で雨が降っている。


「雨の日はやることがなくて困ったもんだな」


「こまったー」


「こまったー」


 俺は横になりながらひとりごちたがフローレス人たちも暇そうにしている。

とはいえ野生の動物たちも濡れた草を食べると水分量に比べて有効な栄養分も少なくなるので殆どは雨の日は大きな木の下で皆が固まって休んでいるし、こういうときは無理して動かないほうがいいのだ。

このあたりでは雨もさほど冷たいわけでもないが水に濡れると気化熱で体が冷えることには変わらないからな。


「ま、今日まではのんびり過ごそうか。

 流石に明日には雨も止むだろ」


「やむー?」


「やむー?」


 しかしながらあんまり暇なので洞窟の中でゴロゴロしつつ多少体をほぐすために体操でもすることにした。


「じゃあ、俺に合わせて体を動かしてくれな」


「うごかすー」


「うごかすー」


 俺はラジオ体操の音楽を自分で口ずさみながらラジオ体操をゆっくりとしてみせた。

ラジオ体操というのは案外馬鹿にできず全身をほぐすのにはとても良いのだ。


「おいっちにーさんしー」


 フローレス人たちもリズムを合わせて体を動かしている。


「おいっちにーさんしー」


「おいっちにーさんしー」


 土木作業や工場などの現場では作業前に皆で行うことも多いがそれだけ効果的なのだよな。

ま、フローレス人たちに必要かわからないけど、なんとなく楽しそうだし良しとしよう。

ラジオ体操が終わったら横になってまたゴロゴロしていたらいつの間にか夜になったから寝てしまった。

それから一晩たって目が覚めると外は曇っていた。


「雨は止んだが曇りか……。

 まあ食べ物を集めてこないとそろそろまずいし出かけようか」


「でかけよー」


「でかけよー」


 先ずは先日縄梯子を掛けた木に登ってマンゴーやパパイヤをゲット。

バナナもゲットして岩場に行きシャコガイや牡蠣もゲット。

雨が降ってしまったので塩はゲットできないがまあ、大丈夫だろう。

いつ雨がまた降るかわからないので早めに洞窟に戻る。


「さて、こうなると太陽光で発火はできないし……。

 錐揉みだと手が死ぬほど痛いし

 発火用道具でもいずれは作らないとな」


 洞窟にはいくらかの枯れ枝等があるしココナッツファイバーは火口としても役に立つ。


「?」


「?」


 フローレス人にはあんまり意味がわかっていないようだ。

発火方法で最も単純なのはキリモミ式で丸い棒と平らな板があればいいのだがこれはかなり大変なのだ。

手慣れてれば結構早くできるというがまずこれは”手のひらがすごく痛い”のだ。

綺麗な丸められている木材ではないのだから当然だが。

それでもとりあえずやってみる。

初めは感触ががたがたしているが摩擦で木屑が出始めて凹凸が合うとあるとキュ!キュ!と音が変わる。

木屑がどんどん屑が溜まると少し焦げ臭い匂いが出てきたのだが……そこで力尽きた。


「うーん駄目かー」


 きりもみ式の世界最速では5秒、普通でも30秒から50秒で発火するらしいがどうもうまくいかない。

やはりなれてないと駄目だな。


「やるー」


 フローレス人が俺に変わって木を擦り合わせ始めたらあっという間に木くずが発火したのでそれをココナッツファイバーに移した上で枯れ枝に火をつけて、牡蠣やシャコガイを焼いて食うことにした。


「あー、お前さん達やっぱり火の起こし方は知ってたのか」


「しってたー」


「しってたー」


 そもそも人類はチンパンジーと共通の祖先から500~600万年前に別れ、簡易な石器の使用は260万年前から始まったが人類の火の使用については150万年前、つまりホモ・エレクトスの出現とほぼ同じ時代だったらしい。

ただし、日常的に火の使用が行わっれるようになったのは50万年前からとされ、これはネアンデルタール人やデニソワ人が寒い地域に適応できた理由の一つともされるが、スンダランド付近でも50万年前にはすでに火が使われていたらしい。

火を通すことで食物は生の食物よりも含有されるエネルギーが多くなり、寄生虫やバクテリアなどにより食べて具合が悪くなる危険もずっと少なくなった。

ただし、スンダランドでは狩猟による肉食はフルーツ食より効率も悪かったし火を絶やさずにいて暖を取る必要性もなかったので火の使用は必要最低限だったようだが。


「したら俺が無理してやることもないか」


「ないよー」


「ないよー」


 とは言え自分だけでも火おこしをできるようにはしておきたい。

木の棒に紐を巻きつけて木の棒の上を凹んだ石などで押さえつけながら糸を左右に動かすヒモギリ式は一人ではできないという欠点がある。

それを改良するのがユミギリ式だ。


「先ずは木の棒の上を抑えるための凹んだ石を探して、

 で別の木の棒の端と端にちょっと切れ目を入れる」


 これが弓と呼ばれる部分だな。


「で火をおこすための棒に糸を巻き付けたら

 弓の両端に紐を結びつければ完成っと」


 だいぶぼろっちいが弓切り式発火法の道具が出来上がった。

マイギリ式より構造も簡単だしな。


「よっと」


 木の棒の上を石で押さえながら弓を前後させることで木の棒はスムーズに回転する。


「お、行けるか?」


 やがて木くずに火がついた。


「うん、これなら俺でもできるな」


「できたー」


「できたー」


 フローレス人たちも嬉しそうに喜んでいる。

マイギリ式に比べると原始的にも見えるが道具が少ない状況では木工の必要が少ないに越したことはない、正確な穴あけが必要なマイギリ式の道具を作るのはちょっと難しいしな。

時間をかければできないことはないと思うけど。

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