プロローグ
ホモ・フローレシエンシス。
2003年にインドネシアのフローレス島にあるリアンブア洞窟で化石が発見された小型の旧人類。
身長は1mほどしか無く脳も小さいが、火や精巧な石器を使っていたと考えられる。
そのサイズから指輪物語に出てくる小人であるホビットという愛称も付けられているが、この旧人類はピテカントロプス・エレクトスもしくはジャワ原人と呼ばれ現在ではホモ・エレクトスとよばれるヒト科生物の一種から島嶼化による小型化によって小さくなったものの割と最近まで生き残っていた種族であると考えられている。
そのリアンブア洞窟での化石の発掘作業を行っている青年は日本人で清水遥という人類考古学のフィールドワーカーである。
そしてリアンブア洞窟内はとても大きく奥も深い。
「人類はおおよそ250万年前に石器を作りはじめそれにより
骨の中の骨髄や頭蓋骨の中の脳を食べることが出来るようになり
それによってアフリカを出ることが出来るようになった。
そして世界で発見されたホモ・エレクトスの化石から
彼等が世界中に存在していた時期は、約180万年前から
インドネシア・ジャワ島中央部に位置するガンドン遺跡や
同じくインドネシアのフローレス島にあるリアンブア洞窟
の約5万年前まで意外と最近まで存在していた可能性が高く
少なくともホビットはおおよそ70万年前にはすでに存在しており
当初は12,000年前まで生きていたと考えられていた」
最初の発見以来、少なくとも6体のホモ・フローレシエンシスの化石がすでに発見されているが、彼等彼女らにはまだまだ謎が多い。
「その後約60万年ほど前に現れたホモ・ハイデルベルゲンシス
のなかでヨーロッパに向かった集団が進化して
寒冷な土地に適応しホモ・ネアンデルターレンシスになったが
寒冷な土地に適応したネアンデルターレンシスやデニソワ人と
東南アジア地域の暖かい地域のホモ・エレクトスが
出会うことはなく東南アジアのホモ・エレクトスはのんびり暮らしていた」
「しかし5万年ほど前にホモ・サピエンスがスンダランドに
侵入するとスンダランドのホモ・エレクトスや
ホモ・フローレシエンシスは 姿を消して
いくことになる……と、しかしなかなかでないなぁ」
発掘は地味で時間がかかりしかもそう簡単に結果が出る作業ではない。
小さな移植ゴテやスコップやジョレンという道具で地面を丁寧に削っていき、箒で少しずつ砂をどかしてもそこから何かが出てくるとは限らない。
「問題はなぜホモ・エレクトスや
ホモ・フローレシエンシスは姿を消してしまったかだが
これはサピエンスとの技術的格差による戦闘の結果ではなく
アフリカやインドの風土病が東南アジア地域に
持ちこまれたことが原因である可能性が高いと」
そして彼が洞窟の一歩奥に足を踏み入れた途端に足元が崩れた。
「うわーーーーーーーーーー」
・・・
やがて俺が目を覚ますとそこは薄暗い洞窟の中だった。
「っと一体何が起きたんだ……」
周りを見渡すが場所的にはリアンブア洞窟の中に変わりはないはずなのだが。
『?』
俺の周りを身長1メートルほどの全裸の小さな人間?が取り囲んでいる。
「ええとお前さん達は一体?」
『?!』
どうやら言葉が通じないのだろうか?
『おまえこそどこからきた?』
おや会話が通じてるようだぞ?
「いや、この洞窟の穴に落ちてな」
『おちた?』
「いやそう思っただけなんだが……」
『わからない?』
「ああ、俺も自分で言っていて意味がわからないからな」
『ならこちらもわからない』
なんとなくだが彼等彼女らは生きているホモ・フローレシエンシスではないかと思う。
ホモ・フローレシエンシスやホモ・エレクトスは舌骨と咽喉と唇の周りの表情筋の発達の度合いから複雑な声を発声することができたといわれていたが実際にある程度会話はできるらしい。
いや間違いなく日本語でも英語でもマレー語やインドネシア語じゃないが、なんでかわからないが俺には相手の言ってる意味は理解できるし、相手にも俺の言葉の意味がある程度わかるようなんだが一体何が起こってるんだろうな。