プロローグ3
これは......何の冗談だ。
俺の城が、真っ赤に燃えてるじゃねぇか!誰だ、こんなことをしたやつは、誰だ!
「親父!生きてるだろ、返事をしろ!」
城内で探す。ひたすらに親父の姿を探してる。
仮にも俺の親父だ、心配しないはずがない。
だけど、これはどういうことだ......どこにもいない。親父ところか、兵士たちもいない。
なんでだ......これは一体なんなんだよ!
「プリスティンちゃん、ここ!人がいるよ!」
すぐ確認しに行った。
人がいる、いや、正確に言うと......
「おい、アンタ!こいつら魔族じゃねぇか!」
「クフル様、よくぞご無事で!さぁ、城へ帰ろう。」
そこに居るのは魔族どもだった。こいつ、よくも俺を......!
「おい、ガキ!何のつもりだ!」
「ごめんね、プリスティンちゃん。でも僕、帰りたいの。」
「き、貴様!」
剣を構えて、あのクソガキに向けた。
「ダメじゃないか、仲良くしなきゃ。」
カサ、カサと、後ろから何者かが歩いてきた。
仲良くしなきゃ?ふざけてる。俺とこのガキが?こいつは俺を殺そうとしてるよ?
まぁ、俺も人のこと言えないけど。でも俺はやらなかった、殺さなかった!なのに、このガキは!
「まぁまぁ、ここは私に任せて。」
「あ!?貴様、何様のつもりだ!」
後ろからやって来た者は変な格好をしてる。
真っ白なローブ、金色の髪、真っ赤な目。それと、どこから神々しいオーラ......こいつは誰だ、国内でこいつを見たことないぞ。
まさか、魔族か!?でも、このオーラ......魔族とは思えない。
「すぐわかるさ、姫様。」
俺の肩に右手を置て、左手を伸ばした。
そして、次の瞬間。あのガキ以外の魔族は眠りについた。
「な!アンタ、何者だ!」
「さぁな、私は一体何者なんでしょう。」
それだけ言って、消えた。
さっきまで俺の隣に居たにも拘らず、いきなり消えた。
何も残さずに、いきなり消えた。まるで「大気」そのものだ。唖然してるけど、その前にこいつをちゃんと躾けないと。
「......おい、ガキ!」
「ヒッ!」
「よくも俺をだましたな、殺されても文句はないな!」
「ご、ごめんなさい......でも、帰りたいの!なんで帰してくれないのよ!」
「それはな、アンタはすでに俺の所有物だからだよ!アンタは俺のそばに居なきゃいけないのよ!」
「な、なんでだよ......うわああああああ!」
そうだ、なんでだ?
なんで俺がこんなに執着してるの?俺がものにこんなに執着してるのは珍しい......いつもすぐ捨てるのに、なんでだ?
「とにかく......」
剣を掲げた。
目標は眠りについた魔族ども。ガキは泣いていて、俺がやってることに気づいてなかった。
「おい、ガキ!いつまで泣いてるつもりだ、行くぞ!」
「行くって、どこに?」
「人探しの続行だ、文句言わずについって来い。」
「いやだ!」
あ?こいつ、今、なんて?
「いやだと?アンタに拒否する権利があると思ってんのか?」
「僕は僕だ!僕はプリスティンちゃんの物ではない!」
「アンタ、さっき俺を殺そうとしてたよね?」
「し、してたけど......殺されてなかっただろ!それでいいんだろ!」
「アンタな......」
近づいて、剣をガキの首に当てた。
「ヒッ!」
「アンタを殺すことは簡単だが、俺はしなかった。なのに、アンタは俺を殺そうとした。その罪の大きさは知ってるんだよね?」
「う、うぅ......わかったよ、お父さんを見つければいいのだろ?もう......」
剣を鞘に入れて、人探しを再開しました。
それからしばらくしたら、思わぬ人物と出会えた。
「アンタは......確かあのガキの魔将軍でしたよね?グランバールでしたっけ?」
「あぁ、私のことを覚えてるのか、光栄です。」
「ふん。」
剣を抜いて、あいつに向いた。
「言い残したい事は?」
あいつはすでに傷だらけで、この部屋に入ってくるのはたぶん休むためだろう。
鎧も傷だらけで、赤く染まっている。それはあいつの血か、人の血かは、俺にはわからない。
ふん、いい気味だ。昨日俺の腕を斬ったのはまだ忘れてないぞ。でも、誰に?こいつは誰にここまでやられたの?さっきのあの変な奴か?いや、それはない。あいつなら一撃で殺せるはずだから。と、思う。
「......」
しばしの沈黙。それから、あいつは言った。
「強いて言うなら、あるかな。」
「言え。ガキへの伝言なら代わりに伝えってやる。」
「それはありがたい、姫様。」
「姫じゃない、俺は王女だ。」
「同じですよ、姫様。」
「ふん。」
王女は王の娘で、姫は貴族や王の娘だろ?
そして、俺は王の娘だ。貴族の娘ではないから姫ではなく、王女で呼ばせてほしかった。
それとも、こいつは知ってるのか?俺の身分。
「遺言を言え、早く。アンタの顔なんてもう二度と見たくない。」
「そうか。私的にはもっと姫様に会いたかったけどね。」
「言わないなら今すぐ殺すぞ。」
「ははっ、せっかちですね。では、まずはクフル様への伝言をお願いします。お姉さんと仲良くしてください。とね。」
「お姉ちゃん?それに、アンタは何か勘違いしてない?俺はあいつを戻す気なんてこれぽっちもない。」
「クフル様には姉が居て、小さい頃から離れててね。」
......うん?
なんか、この話どこかで聞いたことがあるようだ。
いや、でも、さすがにそれはないだろう。俺と俺の弟も小さい頃から離れてるけど、それは彼が死んだから。
「次、いいですか?」
「言え。」
「その前に。記憶無くしたらしいね、姫様。」
「なんのこと?」
「......今はいいか。忘れてくれ、姫様。」
記憶をなくした?こいつ、俺と誰かを勘違いしてない?
まぁ、いい。今の俺は優しいから、ちゃんと最後まで聞いてやる。
「知りたくないか?クフル様が姫様を攫おうと命じたのは。」
「それ、正確的に言うとアンタが指示したらしいね。」
「なんだ、もう知ってるのか。......では、教えてあげようか。」
ごくん。唾をのんで、彼の話の続ぎを聞いた。
「あなたの弟は生きています。」
「は!?あいつはとっくに死んだ!10年前に!」
「ふふ。せいぜい悩むといい、姫様。あぁ、それと。」
手を伸ばして、俺に触れようとしてる。
「あ!?」
「昔のあなたも可愛か......た、よ......」
「昔の俺?お前、何か知ってるの!?」
「ははっ、それはどうだろう......あぁ、眠い。しばらく寝かせてください、姫様......」
パタン。と、あいつの手が地面に落ちた。
俺はあいつを斬らずに剣を捨て、あいつの頬にピンタした。
パッ!パッ!と、二連続で。
「起きろ!寝るな!教えろ、俺の弟の居場所を吐け!それに、昔、俺たちあったことないよね?教えろ!」
パッ!パッ!と、また二連続。だが、そんなことしてもあいつは起きなかった。
なぜ今そんなこと言うの?俺を攫おうとした原因はなんだ?
それと、俺の弟は死んだ!俺が、この手で殺したの!でも、あれは事故だった。俺だって好きで殺したわけではない!
「起きろ、起きろおお!!!」
パッ!パッ!パッ!と、今回は三連続で。それでもあいつはまばたきもしなかった。
手を心臓に当てた。もう、動かなくなった心臓に手を当てた。
「どうしたの、プリスティンちゃん?......!!」
そのあと、ガキが来た。グランバールの遺言もちゃんと伝えた。
だけど、最後のあれは一体何だったのか。なぜそんなことを言ったのか。それを知る術はなかった。
「居たぞ!クフル様を見つけたぞ!」
「!?」
「皆!」
「さぁさぁ、どうぞこちらへ、クフル様。」
魔族が集まってきた。
だけど、ガキはいかなかった。何かを警戒してるように、俺に近づいてきた。
「どうしたの、クフル様?」
「あなたたちは誰?城内で見たことないよ?」
「これはこれは......」
これは、どういうこと?
魔王だからって部下全員の顔覚えてるわけではないよ?なのに、こいつは......
「ガキ、下がれ。」
あふれ出る殺気。俺からだけではなく、あいつらからでも殺気があふれてる。
「クフル様、どうか、どうか彼女を説得してください。俺たちは敵ではなく、ただクフル様を連れ帰るとしてるだけだって。」
「い、いやだ、あなたたちと帰らない!あなたたちは、僕の部下ではない!」
俺に掴んで、ガキが言った。
「仕方ないな......力尽くても連れて帰るぞ、お前ら!」
シャーと、剣が鞘から抜かれた音がした。
それは俺でも、相手の魔族からでもなく。後ろにいるガキからの音だった。
「おい、ガキ!何の真似だ。お前は戦わなくっていい!」
「いいえ、戦わせてください。彼らは僕の部下でも、味方でもないので。」
「それでも同じだ!魔族相手に戦えるの、アンタ?」
「戦えます!」
!?
「僕だって、何時までも子供で居たくない!僕はーー!」
俺の後ろから出てきて、俺の前に立った。
「僕はラス=クフル、魔王だ!」
.........
......
...
外に出ても、城の中でも、とにかく大混乱だ。
街中は死体だらけ。城内もそうだけど、あれをやったのは俺たちだ。でも、街中は俺たちがやったわけじゃない、魔族だ。
ガキが戦い始めた少しあと、あいつから話があった。
なんとも実は自分はあんまり人望がないらしく、街中の魔族は謀反を企んでるそうだ。これの話はグランバールからだと、あいつは言った。
今まではグランバールのやつが反クフル勢を抑えていたが、ついに爆発したという。
こいつが何をしたんだ!と言ったら、あいつから「逆に何もしてなかったから嫌われてた。」と言った。
そっちのことは知らないが、ふと思いだした。この前親父が「クフル様にやってもらわなきゃダメだな......」って独り言言ってた。たぶんそれのことなんじゃないかな?
なんとも、魔町では餓死した魔族がいっぱいらしい。まぁ、詳しくはわからないがな。たぶんこれのことだと思う。
城から出て、俺たちはひとまず休めれる場所を探した。街中ではさすがに無理があるから、町からも出てた。その最中にあいつに会った。自称勇者。
「あら、勇者?もう帰ってきたの?」
町はずれにある小屋のドアを叩いたら中から女の声がして、ドアを開けた。勇者?さっきの野郎か?あいつ、俺を知らないらしい。今時珍しいね、俺の顔知らない人。いつも街中で遊んでいたのに。まぁ、こんなところに住んでたのなら仕方ないか。
「残念だが、勇者ではない。通りすがりの王女だ、入らせてくれ。」
「はぁい~」
しっかし、この女の声聞くだけで吐き気がする。なんでだろ......そうだ、あの女の声と似てるからだ。名前は知らないが、俺を負かした唯一の人族だ。あの時はあいつの強さに怒って、あいつを追放した。我ながらひどいことをしたなっと、今思っても意味ないか。
「あらぁ~プリスティンちゃんじゃないか~相変わらずかわいい顔してるね。」
「ケッ!やっぱりアンタだったのか。とにかく、入れてくれ。」
「いいよぉ~」
うん?こいつ、酒くさっ!
「アンタ、今は朝だぞ!?朝っぱらから飲んでるの!?」
「勇者ちゃんがいないからねぇ~いいじゃん、アタシの自由だし~?」
「ちっ!仕方ない、ちょっと邪魔する。落ち着いたらすぐ出ていくから安心しろ。」
「えぇ~出て行っちゃうのぉ~?いやだよぉ~一緒に居て?」
「誰がアンタみたいな酒くさ女と一緒に居たいのよ!近寄んな!」
「いいじゃんいいじゃん~へへへ~やっぱりプリスティンちゃんはかわいいねぇ~」
「はぁ......おい、ラス、お前も黙ってないで何とか言え!」
「え、え!?僕!?えぇと、何を言えばいいのかな......」
チッ!こんな時にいつものアンタに戻るのかよ、ラス!やっとお前の実力を認めたのに、それでこの有様かよ!認めるべきじゃなかった!畜生。
「あらぁ~あなた、ラスって言う名前ね?可愛くてお姉ちゃん好きよぉ~」
「え、え!?ちょ、ちょっと!?」
「ていうか、アンタの角と羽はどこ行った!」
「じ、人族と接するときは隠した方がいいって、いつもグランさんが言ってたから......」
「えぇ~あなた、魔族だったの~?まぁ、かわいいからいいか!」
「ちょ、ちょっと、助けてプリスティンちゃん!」
「ケッ、自分で何とかしろ。ちょっとシャワー浴びてくる。」
「行ってらっしゃい~じゃあ、こっち来て?ラスちゃん~?」
「ちょ、ちょっと、助けてよプリスティンちゃん!」
と、鎧も服も脱いで、俺はシャワーを浴びに行った。その間に、ラスとあのババアは何をしてるのかは、俺にはわからない。まぁ、大したことやってないでしょうねリビングで見たときは二人とも笑顔だから。
しばらく休憩したら、あいつが戻ってきた。あの自称勇者が。