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姫様、魔王様!  作者: 煌黒星
2/5

プロローグ2

「うーーーん!今日もいい天気だ!」


朝、俺の目が覚めた。軽く体を伸ばして、ベッドから降りてきた。

外は小鳥たちの鳴き声が響いて、太陽の光で世界が活気にあふれてる。そして俺は、今日も訓練に勤しむ。これは勇者である俺のやるべきことだ。

今はまだ名が広くないが、そのうち全大陸中から勇者の歓声が響くだろう。

俺は勇者、職業でも自称でもなく、俺の名前だ。お母さんの願いを込めた、俺だけの名前。

部屋から出て、階段を下りて、顔洗ったら師匠の声がした。


「勇者ー!早く飯作って!」

「はいはい、わかってますよ。」


今も変わらずに、師匠は俺の料理が大好きだ。昔は「町のレストランより全然うまい!」てよく言うけど、今はそんなこと言わなくなった。ちょっぴり寂しい気持ちだ。


「はい、できた。」

「わはーオムライスだ、旨そう!いただきます!」


手を合わせて、一緒に言った。

飯食ってる場合じゃないぞ!って言ってるように、外は大騒ぎだ。

だがそんなのどうでもいい、今はただ飯に集中すればいい。と、師匠がいつも言ってる。

でも......

パ―――ン!

今日はちょっとおかしい。


「爆発?何があったのかしらね。」

「......ちょっと見てくる。」

「気をつけなさいねー勇者。」


外に出て、俺は見た。


「あれ、なんかおかしいぞ?」


今は朝、朝6時くらいのはずなのに。

王城のところは真っ赤だ。まるで何者かに火を放たれたように。


「俺、ちょっと王城に行ってくる、師匠はここで待ってて!」

「はーい。待ってるね。」


本来は師匠も一緒に行くべきなのだが、師匠はちょっと訳があって、王城に行けないためいつも俺一人で調べてる。

師匠はすごい人だ。刀だけではなく、剣も、槍も、魔法も、何もかもすごい。

おそらくだが、彼女は俺一生でも超えそうにないほどの戦士だ。そんな師匠がなぜこうなったのは、俺は知らない。

俺と師匠の家は王城から歩く1時間くらいのところにある。

それは、師匠は追放された者だから王城に住めない、入ることすら禁じられてるから。


「これはーー!?」


町中が死体だらけだ。

人族だけでなく、魔族の死体もある。

「魔族が攻めに来た」としか思えない。

なんでだ、おかしい。魔族とは同盟を結んでるはず。なのに魔族が攻めに来た?一体なんでだ。魔族は簡単に同盟を破ることはしないこと、それは俺たち人族が一番知ってるので、防衛はしてなかった。でも、一体どうしてだ。なんで攻めに来た?


「ギギギ!」

「!?」


魔族が襲い掛かってきた。

キン!

剣で奴の爪を防いだ。


「なんで攻めに来た、お前らの目的はなんだ!」

「てめぇら人族が一番知ってるんだろうが!クフル様を返せ!」

「クフル様......魔王様がどうしたの?」

「てめぇらに攫われたんだよ!まぁ、魔王様のおかげでこうして攻めにこれたから感謝してるけどね!ギギギ!」


なっ!?

魔王が攫われた?ふざけてる。あの魔王様が、あのクフル様が?どう考えてもあり得ない!

クフル様は大陸三大魔王の光明、暗黒、月下の三人でも勝てないって言われてるほどの強者だぞ?なのに俺たちに攫われるとか、ふざけてる。

それに......感謝してる、だと?まさか元々攻めてきたかっただと!?


「クフル様を返さないならそれでいいや、おいらはてめぇらを滅ぼしに来たんだし!」

「させるか!」


バサッ!

剣が切り裂いたのは魔族の体。


.........

......

...


「オラ、早く歩けラス!」

「やだやだやだ、帰らせてよ!」


ん?

それから城に向かって歩くと、二人の男女と出会えた。

年の差はあんまりなさそうな上に、なんとなく姉弟って感じがした。


「ちょっと、君たちも早く逃げたほういいよ。」

「あ?アンタ、誰に向かってッ!」


な、なんだ、このプレッシャーは!?

姉は何か言いたそうだけど、弟に止められた。


「お兄さんは逃げないの?」

「逃げないよ、お兄さんは勇者だからな。」

「勇者......!」


なぜか弟の目がキラキラし始めた。まぁ、勇者にあこがれるのは俺だってそうか。

今はまだ本物の勇者じゃないけど、そのうちなれるだろう。

姉弟の後ろで魔族が何人迫ってきた。


「とにかく、二人は早く逃げて!こっちはお兄さんに任せて。」

「は?逃げろだって?俺はーー!」

「ここは勇者様に任せて、早く逃げようよ、プリスティンちゃん!」

「ちっ!今の俺はこいつを守る義務があるから......任せたよ、自称勇者さん!」


タッタッタと、走り出した姉弟。


「ここは通さないよ、魔族ども!」


.........

......

...

時間を戻して、二時間前。


郊外のある洞窟にて、俺とさっき攫ったガキと一緒に雨宿りしてる。


「おい、アンタ。名前は?」

「うええん、お父様、お母様......ラス怖いようう。」

「泣くな、男だろ!」

「男だって泣いていいじゃないか!うえええええん!」

「困ったな......」


俺は子供が嫌いだ、何時も泣くばかりでちゃんと話すこともしない、最低な存在だ。

だが、気が知れて俺は、なぜこいつを誘拐したのやら......

あの時、俺は一体何を考えてるのやら......あぁぁぁマジでどうなってんのよ!


「うえええええん、おかあさまああああああ。」

「うるせぇよ!それ以上泣くなら、殺すぞ!」

「う、うう......」


お?ようやく泣き止んだか?


「うええええええええええん!!!」

「うるせぇよ、魔族どもにばれたらどうするんだよ!俺が殺されても平気か!」

「いいもん!魔族が来たら僕は助けれるからいいもん!」

「その前にお前を殺すぞ。」

「ヒッ!」


奴を見る目は本気だ。だが、いまいち殺気が立たない。

なんでだろう、こいつは......いまいち殺す気が起きない。こいつが俺の腕を治ったから?知るか。

そんな理由で人を殺められなくなるなんて、俺らしくない。


「話を戻って。名前はなんだ、教えろ。」

「ラスだよ、さっきも言ったじゃないですか。」

「父の名前はどうでもいい、聞きたいのはアンタの名前だ。」

「だからラスってば!信じてよお姉ちゃん。」

「お姉ちゃんって呼ぶな、ガキが。俺はプリスティン......まぁ、アンタには「奥様」って呼んでもらうけどね。」

「ふえ、なんで?」

「アンタは俺の所有物だからな、奥様で呼べ。」


ぶっちゃけると、今ここでこいつを殺して戻ってもいいけど、なぜか手が出せない。こいつが左腕を治したからとかそういう関係じゃなく、他に原因があるはずだ。

俺はそんな生ぬるい覚悟を持つわけがない。いや、持ってはならない。


「いやだよ、プリスティンちゃん。仲よくしよ?」

「けっ!誰がアンタのような魔族と仲良くするもんか!」

「なんで?」

「いちいち聞くな、殺すぞ。」

「すぐ殺すなんて言わないほうがいいよ、プリスティンちゃん。でないと、性格が疑われるのよ。」

「あ?」

「ヒッ!」


本当、マジで何なんだよ、このガキ。

ラス=クフルはこんなガキじゃないだろ、もっと立派な大人だろ?もっと立派な魔王だろ?

そうでなければ、昔の手紙で感じ取ったラスのイメージが崩れてしまうじゃねぇか。

あの残酷で、傍若無人なラスのイメージが崩れるじゃねぇか。

今更だが、ここだけ見れば、まるで俺が悪者じゃねぇか。俺は正義だぞ!


「アンタがラスなら答えるはずだ、なんで俺を攫おうとした。」

「ふえ?なんのこと?」

「とぼけるな!」


ポケットから予告書を取り出す。ガキはすぐ拾いて広げた。

それは、ラス=クフルが俺を攫おうとした予告書だ。


「これはーー!?」

「まさか知らないとは言わないよね?アンタがラスならわかるはずだ!」

「......」


そしての無言。しばらくした後、ガキが口を開いた。


「グランさん......俺にも隠してこんなことを......」

「グランさん?あのグランバールか?」

「この予告書はグランさんが書いたものだ、僕ならわかるよ。」

「ふん、信じがたいね。あの闇の騎士様だぞ?」

「だからこそだよ。グランさんは僕の魔将軍だから、僕の代わりにいろいろできるのよ、偽物の予告書でも書ける。」


ふん、だから?

魔将軍だから王の代わりにいろいろできる?それは嘘だと、俺は知ってる。

親父に教えられたから。魔将軍とは、魔王を守るだけのために存在している。だから魔王の名を決して自らの手で汚すことはない。

でも......こいつ、嘘をつくような眼をしてない。

俺が間違ってるとでも?ありえない!


「何より、このスタンプ。」

「スタンプ?」

「これ、グランさんのものだよ。僕はスタンプ持ってない。」

「嘘。」

「嘘じゃない!」


な、なんだ、こいつ。急に強気になりやがて......

これが本当だとしたら、あの魔将軍は一体何をしようとしてる。俺を攫って何がしたい。


「じゃあ教えろ!魔将軍はなぜ俺を攫おうとしてる、何のためだ!」

「そ、それは......」


......

って、俺は何をしてる!子供にそんなこと聞いても意味ないんだろ!

でも、一体何のためだ。グランバールは何のために俺を攫おうとした。

ん?


「雨、止んだな。」

「やった、これでかえ......」

「行くぞ、ガキ。」

「返してくれるの!?」

「するわけねぇだろ、頭大丈夫か?」

「うっ。」

「アンタは俺の所有物だ、俺の部屋に招待してやる。」

「やっぱりそうなるか、はぁ......」


洞窟から出て、王城に向かい始めた俺とラス。

この先にあるのは、真っ赤になった俺の城であった。



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